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水平線上ノ煌星  作者: 猫屋敷 凪音
ファミリー編
24/48

第22夜 [3階と2階の間] 超重力従士

「この戦い終わったら、ここ辞めよー」

「兄ちゃん、それは流石に短慮だよー」

2階から3階へ上がる間、双子達はヒソヒソと毒虎一家を抜ける話をしていた。

話を盗み聞くかぎり、毒虎一家は給料は良いけど人員が少なく、チーム内の協調性も皆無らしい。

これは作戦会議の時に、毒虎一家は2年前に代替わりをしてほとんどの従業員が出て行ったという話と関係があるのかもしれない。


《第2フロア》

部屋に入る前から漂う熱気。

天井から吊るされた無数の鎖と、床にバラ撒かれた熱気を上げる釘。

床と呼べる物は、明らかに罠くさい1本の橋だけだ。

そこは以前来た時と、だいぶ変わっていた。

カシャンッ、カシャンッ、カシャンッ

橋の向こう、次の階へ繋がる入口から鎧を着た騎士が現れた。

次の敵はコイツか!

熱された床の前で立ち止まった騎士が逆立ちをする。

「グラビ……ドーーーンッ」

「えっ」

逆立ち騎士が正位置に。

いや、逆立ち騎士は逆立ちしたままだ。

それまで地面に落ちていた釘は天井に落ちて、1本橋は降り注ぐ釘から頭を守る屋根になった。

わざわざ重力を逆さまにした騎士は、私達の真上でよっこらせっと座り

「スマイリー向日葵パラダイスの黒金殿とお見受けする。どうか私と1対1でお話をしていただきたい」

と言った。

鎧姿から中身はイケメンだと決めつけていたが、反重力騎士の声は若い女性のものだった。

「丁寧なお誘い、謹んでお受けしたい所なんだが、俺達は急いでいるんだ。俺は一刻も早くシロを救いたい。貴殿とのお話し合いは、丁重にお断りさせていただく」

黒金さんが騎士に向けて頭を下げたので、私も頭を下げておく。

女騎士さんは誘いを断られても想定内といった様子で、腰に着いた剣を抜くことなく、頷いてくれた。

「黒金殿の敵という理由で断らぬ所に、主君の器を見ました。これを」

女騎士さんが落とした小瓶は、重力と重力の間でふわりと留まった。

「私が持っている材料です。これを受け取る代わりに、私と1対1でお話をしてほしいのです。黒金殿にとっても、これは悪く無い話のはず。私に貴殿の時間を半刻いただきたい」

騎士は黙ってこうべを垂れた。

断れば天井に浮いてる釘を全部落とされるんだろうか。

初対面っぽい人が黒金さんに何の用があるんだろう。

騎士らしく、正々堂々1対1の勝負を望んだのか。

それとも、一目惚れ?

ボムちゃんとアチョーさんの反応を窺う。

2人共、ボスの判断を待っていた。

こんな誠実な願いを、黒金さんは無碍にしない。

30分、話をすればノーダメージで材料が手に入る。

しかし30分、最大戦力が抜け、黒金さんは敵と2人きりになる。

黒金さんは女騎士を見上げて、双子を床に下ろした。

そして瓶を手に取る。

「お受けします」

カシャンッ

熱した釘はそのまま、女騎士さんだけが床に降りて来た。

太陽みたいな勲章に両手を当てて、礼をする。

こんなに早く黒金さんが離脱するとは。

「悪い。先、任せられるか?」

「ご用命とあらば」

「大丈夫っすよ!」

「い、ぃ、ぃ、いえすっさー!」

良い返事が思い浮かばず、変な敬礼をした。

女騎士さんは『2人きり』を望んだので、双子達を抱えて熱い部屋を渡りきる。

自分達が渡ってる最中に釘が降ってくるかもとビクビクしていたが、そんな卑怯な事はされなかった。

階段を登る直前、チラリと振り返ると、女騎士さんがペコリと頭を下げる。

悪い人じゃなさそう……。

私もペコリとお辞儀を返して、次の階へ登った。


お次は、3階と4階の間 『鉄棒の部屋』








_______


みんなが4階に上がり十分な距離が取れただろう頃に

「どうぞこちらへ」

と言って、鎧の女性は部屋を渡らせてくれた。

この話がどういう方向に転んでも、俺がこのフロアを通過出来る様にという配慮だろう。

彼女の鎧に着いている勲章は上弦の月と重なる太陽のマーク。

勲章は、それのみ。あれは光の国のものだ。

影の国で光の国の鎧や勲章を手に入れるのは難しい。

つまり彼女は、元 光の国の騎士。

彼女のしたい話を何パターンか予想してみるけど、俺と1対1で話したい事が分からない。

今更、暗殺とかは無いよな?

彼女が緊張して膝をついたままにしているので、階段を指差して腰を掛けた。

「座りましょう」

「失礼いたします」

彼女はソッと俺から距離をとって、同じ段に座った。

彼女が座らなかったので、隣に敷いたハンカチはしまう。

「あ、申し訳ございません!兜の所為で下が見えなくて……」

「俺が勝手にした事なので、どうかお気になさらず」

腰の剣を壁にもたれさせて、彼女は兜を脱いだ。

蒸れて頬に張り付いた髪を人差し指ですくって、濃い紫色の目がこちらを向く。

その顔に、左側を中心に出来た大きな火傷の跡。

随分前の傷に見えるが、痛くないか心配になった。

これでは左側が見えないのも仕方ない。

彼女が名乗ってくれないので、ここは紫色の瞳にあやかり、スミレの君と呼ぼう。

スミレの君は30分という時間が分かるように、懐から懐中時計を出した。

カシャーーー

「ひぇあっ!?」

階段の微妙な所に置いた所為で、下の段まで滑り落ちる時計をキャッチした。

元から傷だらけなので分からないが、壊れてはいない。

「すみま、ちが、申し訳ありません!」

「大丈夫ですよ。落ち着いてください」

なんだか守りたくなるタイプの子だなと思いながら、時計を手渡した。

「はぁ……。せっかくのチャンスなの。しっかりするのよ、ヴィオラ!」

スミレの君は何か呟きながら、自分の頬を数回叩いて、頭を下げた。

「お時間が少ないので、単刀直入に申し上げます。私とヴィルヘルム様を黒金様の率いるスマイリー向日葵パラダイスに入れてくだひぇあっ」

「……落ち着いて。ゆっくり話しましょう」

「はい」

【現在の状況】


7番街

『毒虎一家の事務所』

屋上

『??』

7階

『??』

6階

『??』

5階

『??』

4階

『??』ノゾミ・アチョー・ボム・大器・勝器

3階

『女騎士の部屋』黒金・ヴィオラ

2階

『双子のいた部屋』

1階


外 ハチ・賛月サンガツ(狂犬)


8番街

『スマパラの住む廃工場』

ヒナ・ミラ(左手を骨折中)



『居場所の分からない面々』

白夜(毒状態)・お嬢・魚肉・ヨド・首無し・レナ・ロト

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