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水平線上ノ煌星  作者: 猫屋敷 凪音
ファミリー編
23/48

第21夜 [2階と1階の間]縦縞と横縞の双子 決着

「いやぁぁぁぁぁああ!!!」

四角い部屋にボムちゃんの悲痛な声がこだました。

等間隔に箱を並べた部屋で、妙にスペースの空いた空間。

双子を放り出して咄嗟に体を大きくし、黒金さんと瓶を守ったアチョーさんは血塗れだった。

「ボス……。ご無事で、しょうか……?」

木片をパラパラ落としながら、アチョーさんが体を起こす。

私はこの世界に来て初めて見た仲間の血に、酷く動揺していた。

アチョーさんに被って、黒金さんの表情は見えない。

「………………アチョー、大義であった」

「はい」

アチョーさんの体のサイズが元に戻っていく。

(50-100)(30+100)

(50-100)(30+100)

(50-100)(30+100)

(50-100)(30+100)

(50-100)(30+100)

(50-100)(30+100)

数字の付いた光の束が、2人を目掛けて飛んでいく。





_______


毒虎一家に攻め入る前、私は作戦会議でこんな提案をした。

「アチョーさんって本気出せば無限に大きくなれるんですよね?」

「ふふ、理論上はそうです」

「だったら、毒虎一家の建物に入ってから怪獣映画みたいにガオーッと大きくなるのはどうでしょう?少しずつ大きくなれば、白夜さんを見つけ次第掴んで逃走出来ると思うんです!」

黒金さんが駄目なら、アチョーさんが大怪獣をして毒虎一家を崩壊させちゃえば良いのだ。

「それが出来れば良いんですけどね」

子供の夢物語を聞くように、アチョーさんがクスクス笑う。

その会話をそれまで聞いていたヒナちゃんが、うーんとアゴに指を当て

「ノミちゃんは情報量保存の法則って知ってる?」

と聞いてきた。

「質量保存の法則なら知ってます」

理科の教科書で、ネズミがケーキを食べるイラストが描かれていた。

ネズミ 100g ケーキ 50gだとして、ネズミがケーキを食べたら、体重は150g。

見た目は変わっても、存在する量は変わらないよね!みたいな話だった気がする。

「アチョーを抱っこしようとした時、体は小さくても体重は大人分あったでしょ?」

「はい」

「それと同じで、アチョーが巨大化してもATK値や耐久値は変わらないの。見てくれは大きくても、スカスカのパンみたいな感じかな」

「ヒナさん……」

ヒナちゃんの例えに、アチョーさんが眉毛を八の字にする。

本人は恥ずかしいみたいだけど、分かりやすい例えだった。

巨大化すると、体が脆くなる。

これはゲーム世界ルール(いつもの)にしては、割と理にかなっている気がした。

言葉あってるか分かんないけど。


私がこの世界を知った中で、辿り着いた結論。

この世界は、

【日本人の作ったゲームである(可能性が高い)】。

まず、この世界には2種類の神様がいる。

1つは、デザイナーとして世界の主な設定を考えた神様。

もう1つが、この世界を運営するシステムの様な神様。

このシステムの方の神様は、私のいた“現実“から離れすぎた設定を与えないが、“現実“ではありえない超常現象も起こす。

私のいた現実の世界では、体の大きな生物は小さな生物より筋肉量が多く強い。基本勝てない。

そして、同じ質の物質が集まった時、大きい物は脆くなる。

これは1丁の豆腐と1口サイズの豆腐で考えると分かりやすいかもしれない。

それを同じ量、ボールに入れてパンチしよう。

どっちの豆腐が、よりグチャグチャになった?

うん。どっちもグチャグチャになったね。

ごめん。

とにかく、どちらも同じ豆腐で出来ているが、大きい方が崩れやすいのだ。

これが体の大きさの設定が無い人間に当てはめると、ヒナちゃんの言った通りになるのが1番リアルだと思う。

「アチョーの耐久力は普通だけど、大きくなると怪我しやすいから気を付けてあげてね」







_______


走馬灯の様なヒナちゃんの言葉が、脳内で響き終わった。

「……っ」

今度は動けた!

ようやく階段から戦場に入場した私は、双子と黒金さん達の間に手を突き出して立っていた。

双子が発射した光線は何個か防げなかったが、似たような場所に飛んでいたのでそこにダイブする事で破裂を防いだ。


(50-100)(30+100)


双子の攻撃には、必ず数字が付いていた。

部屋に等間隔に置かれた箱のサイズは縦横高さ50cm。

中には恐らく30cmの箱。

それらの同じ強度、同じ速度の箱が縮み膨らみ、ぶつかった地点で破裂して吹き飛ぶ。

(50-100)という式なら、50(cm)が箱の大きさ。

-100(cm)がサイズを変えられる上限。

あの双子の能力は、サイズが分かるものの大きさを±100cm変えられる能力なのではないだろうか。

そして、あの光線に当たっても、サイズが違えば無害なのでは?と思ったのだ。

光線がすり抜けたり、サイズ関係なく縮んだりする可能性もあったけれど、攻略出来ないゲームは無い。

この世界がゲームならば、無敵の能力なんて無いのだよ!(たぶん)

この部屋の攻略法は看破した!!(ドヤッ)

自分の思いがけない活躍で心臓がバクバクしている。

いくつか箱は破裂したけれど、破片は顔に当たらなかったし、アチョーさん程のダメージは受けなかったのでOK。

私の傍には、大きさの縮んだ箱や大きくなった木片が散らばっている。


楽しい!!


「大丈夫か!」

「私の後ろへ退がってください!」

黒金さんとアチョーさんが、私を守るために立ち上がった。

黒金さんにぐいっと服を掴まれ、すぐに頼もしい背中が私の前に並ぶ。

「ノゾミは安全な所でこれを持っててくれ!」

103cmもあるのに、重さは手の平分のガラスの小瓶を持たされる。

分かっていても、見た目と重さの違いに脳味噌が混乱した。

「戦闘は私達に任せてください!」

黒金さんはともかく、血まみれのアチョーさんは引き留める。

ガスッガスッゴンッガゴンッ

「いぐっ!死っ……!がっ!」

「あぎっ!痛っ……!ごっ!」

目の前の2人が警戒体勢を解いた。

2人の間からそっと部屋の中央を見ると、双子の頭を掴んだボムちゃんが、シンバルみたいにお互いの頭を打ち付けていた。

「最初っから、こうしてれば良かったっす……」

アチョーさんが怪我をしたショックで泣いたまま、ボムちゃんは双子の頭を突き合わせ続ける。

ガスッガスッゴンッガゴンッ

偏見かもしれないけど、やっぱ女の方が容赦無いな……。と思った。

「「降参!降参するよ!」」

双子が【降参】をしたので、ボムちゃんの手が止まる。

「うぇっ。何回か勝器カツキと唇が合わさったんだけど……」

「兄ちゃんが避けないからだよー」

頭突き合戦が終わった途端、喧嘩を始めた双子を見てボムちゃんが唇をへの字にした。

ガスッガスッゴンッガゴンッ

いくら敵とはいえ、なんて事を……。

ガスッガスッゴンッガゴンッブチューーーー!

けしからん、もっとやれ!

強制キスに懲りた双子は、すっかり大人しくなった。

鼻血の出る口元を抑えながら、正座して平謝りをしている。

「「もう喧嘩しません。本当に喧嘩しません。勘弁してください」」

「それじゃあ、瓶の大きさを元に戻すっす」

横縞の方が瓶に向けて指を伸ばした。

(103-100)

つまり、3cm。元の大きさだ。

「1つ目の材料ゲットですね!」

嬉しそうに笑うアチョーさんが、ボムちゃんの身長までしゃがんでハイタッチをした。

「ノゾミ!」

「はい!」

私も黒金さんに手を差し出され、ロータッチをする。

「いや、瓶……」

「あ、はい」

黒金さんに元のサイズに戻った瓶を手渡した。

恥っずぅ〜!

仲の良いボムちゃんとアチョーさんを見ながら、自分との違いに落ち込む。

今回の戦闘、初心者にしては活躍した方だと思う。

黒金さんもアチョーさんも私の盾になるくらいには私のことを心配してくれて、スマパラのみんなは本気で私を家族ファミリーだと思ってくれている。

でもやっぱり、こういう所で長年の差が出ちゃうもんだな。

「入って数日の奴が何考えてんだか……」

ボムちゃんがアチョーさんの応急処置をしてる間に、黒金さんと一緒に双子に目隠しをして、縄でぐるぐる巻きに縛る。

次の戦闘でも足手まといにならない程度に、お手伝いをしよう。

「上に行こう」

黒金さんの言葉で、四角の部屋を後にする。

「「ちょい待て、ちょい待て」」

グルグル芋虫にされて黒金さんに運ばれる双子が口を開いた。

「何故、我々を連れて行こうとする?」

「我々は【降参】をしたはずだぞ!」

「それはそうだけど、こっちが人質取っちゃいけないルールは無いだろ?」

「「えふっ」」

双子は同時にしゃっくりみたいな音を口から出した。


お次は、2階と3階の間 『歩きにくい部屋』

【双子事情】


双子は、大器ダイキが兄で勝器カツキが弟です。


2人が毒虎一家に来る前は、物を小さくする力を見込まれ、少々ヤバい組織で運び屋をしていました。

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