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水平線上ノ煌星  作者: 猫屋敷 凪音
ファミリー編
2/48

第0夜


この世界は情報データで出来ている。


人間は7柱の神に設定された情報により己を得る。


身長、体重、性別、年齢、声、色、命運……。


神の愛を受けし者は、己の道を照らされる。

神に見捨てられし者は、暗黒の中を彷徨う他ない。


神を信じぬ者は、カゲに呑まれるばかりである。





_______


夜が来る。

冷たい風がまつ毛を揺らした。

湿った空気の中に、焦げた匂いがする。

規則的に聞こえていた咳とページをめくる音が、パタンと閉じた。

「クロ、そろそろ」

白髪の少年に肩を叩かれ、黒髪の少年は目を開けた。

「分かってる」

土埃の隙間から飛行船の無い空が見える。

夜は優しく美しい。

それを教えてくれた少年も、同じ空を見上げている。

「ふふふ、星が綺麗だね」

儚げに笑うシロに、無意識に手を伸ばした。

「…うん」

机で作ったバリケードから身を起こし、首を回した。

「ヒナの事、頼んだ」

「うん。気を付けて」

細い白髪を耳に掛けて、シロが微笑む。

「おう」

今からここは戦場だ。

喉の弱いシロは、建物の中に居てほしい。

親父座りをする俺の横を、半ズボンから覗くやわらかそうな太ももが通り過ぎて行く。

シロが建物に入るまで手を振って、立ち上がった。

俺の休憩が終わったのを見計らって、アチョーとボムが駆けてくる。

「ボス、準備OKっす!」

「ご命令の通り、校庭の陥没した箇所を平らに戻しました。全ての民家は灯りを消し、お客様は1人残らず避難済み。各メンバー、武器を装備した状態で待機完了。光源の配備もつつがなく終了し、後はカゲを迎え撃つばかりです」

ボムの分かりやすい報告を、アチョーが補完してくれる。

「おぉ〜!!」

誇らしげな表情を見て、2人が頑張ってくれた事が伝わった。

「凄いな!もう準備が終わったのか!俺の出番、全然無いじゃん!天才か?!」

嬉しい気持ちをそのままに、2人を褒めちぎると「えへへ」「うふふ」と喜んでくれる。

ボム達に手を引かれて指定した場所に行くと、クレーターだらけだった校庭が本当に平らに戻っていた。

昨日の襲撃は過去最高に暴れたから、すぐには元に戻らないと思っていたのに……。

光源の灯りに照らされて、仲間達が「どうだ!」という顔で俺を出迎える。

「ボスが寝てる間に、お客様も穴を埋めるの手伝ってくれたんすよ!」

「壊れた机も修理しました!」

「光源が足りなかったので、鏡を集めて工夫しました!」

みんながワイワイと、自分の成し遂げた仕事を報告してくれる。

どの仕事にも、みんなの個性が反映されていて心が温かくなった。

濃い影が集まるように設置された光源。

バラけて飛ばないように結ばれたバリケード。

避難所を守る為に、武器を構えるファミリー。

「俺は良いファミリーに恵まれたなぁ……」

「「「「でしょ!」」」」

クロの感嘆に、色とりどりの声が同意した。

準備体操をしながら、光源の下に立てられた旗を睨む。

影に異常はない。

それでも、カゲ特有の焦げた匂いは強くなっている。

「そろそろっすかね?」

机の影から旗を見るボムが、不安そうな顔でアチョーに視線を送る。

すると、アチョーが安心させる様に手を握ってあげた。

自然と年少組がアチョーの側に寄る。

「ボス!!」

影が大きく脈打った。

ボムが音弾を撃ち、続くように他の街も音弾を撃ち上げた。

影の国中でブザーが鳴る。

ビーーービーービービーービーービービビーーー

「開戦だ!」

バリケードの中心に立った旗の下から、ズルリと黒い手が現れる。それは指が6本ある人間の手だった。

その手を掴み、クロはカゲの全身を地上へ引っ張り上げた。

『ぎきっ』

眩しさに目が眩む、三角頭のカゲ。

「小型 1匹」

相手が驚いてる隙に腕をもいで、後ろにパスした。

「同じ奴が1.2.3.4」

矢継ぎ早に現れるカゲを千切って弱らせた状態でみんなにパスする。

所定の位置で構えていたファミリーが、それぞれの武器でカゲを滅多打ちにする。

「大型打ち上げ 1匹」

処理しきれなさそうな奴は光の国まで蹴り上げる。

クロに打ち上げられたカゲは、滅茶苦茶に回転しながら、空に浮かぶ地上に落ちた。

振り上げた足を振り下ろして、新しく現れたカゲを踏む。

「処理OKです!」

「コッチも!」

「補充お願いします!」

現れたカゲを機械的に処理し、今日も朝を迎えた。

校庭に日の光が射す。

「ラスト!」

巨大な足型のカゲを引っ掴んで、太陽へ放り投げた。それを見届けて、ぶっ倒れる。

「お疲れ様、クロ」

疲れて眠る少年を、白い少年が聖母の様に労る。

3日間にわたるカゲの襲撃が、無事終了した瞬間であった。

【ヒナのお勉強コーナー】

カゲとは。

毎月末に、世界の果てから現れる敵。(金・闇・光の3日間にカゲの襲撃が行われる)

姿は様々であるが、共通して人間の情報を喰う。

カゲに全ての情報を喰われた者は、【カゲ落ちする】と言われているが、定かでは無い。


カゲは濃い影をゲートにし、人の多い場所を狙って現れる。

狩る側は光源を使い濃い影を作り出し、現れたカゲを袋叩きにする。

ダメージを受けたカゲは実態を保てず、影に帰る。


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