31:完遂
青白い魔導灯が照らす特別管理区画の空気は重く、湿気と異臭が混ざり合っていた。
奴隷たちは、極めて硬い鉱石の掘削作業を強いられていた。
この作業は過酷を極め、ルキウスは、わずか数時間の労働で限界に達していた。
「ハァ...ハァ... 嘘だ、この掘削具は効率が悪すぎます!竜族にこんな土方仕事をさせるなんて、冒涜だ!ガルド殿、もう私は、だめだ!」
ルキウスの情けない弱音に対し、ガルドは彼の二倍の鉱石を掘りながら、
親愛を込めた低い声で叱咤した。
「おいおい、ルキウス。あんたは掘るのが仕事じゃねぇだろ。
俺があんたの体力の分まで掘ってやるから、しゃんとしな」
ガルドは、おじさんらしい優しさでルキウスを諭した。
「お前さんの頭が腐っちまったら、アメティストに顔向けできねぇんだ。
学者らしく、頭を使え。その目で、頭で、俺たちがぶっ壊すべき目標を見つけてくれや」
ガルドの叱咤によって知識欲を刺激されたルキウスは、掘削作業のフリをしながら、周囲の構造物に意識を集中させた。
この特別区画の壁には、魔力感知を遮断する結界が施されている。
ルキウスの銀色の瞳は、壁に埋め込まれた魔力供給盤と換気ダクトの接続部を緻密に追った。
「あった!ガルド殿。この換気システム。
単なる空気の入れ替えではない...」
ルキウスは、額の汗を拭いながら、早口で解析結果を伝えた。
「この異臭は、対竜毒を精製する際に出る微細な分解ガスだと思う。
そして、この換気ダクトは、さらに地下の区画から排出していて、
これをたどると⋯。
『黒い塵』の最終生成ラインは、この真下にあるに違いない」
さらに、ルキウスは掘削工具で供給盤のカバーを丁寧に清掃するフリをしながら、内部を確認した。
「このダクトは、最下層に直接繋がっている。
ここが施設の心臓部だ!」
情報が施設の心臓部に集中していることを知ったガルドは、
その巨大な体躯を活かして、ルキウスの周囲にいる工作員たちに目立たないよう合図を送った。
工作員たちは、掘削の音を最大に立てることで、管理官の注意を音に集中させた。
「よし、ルキウス。あんたの仕事は終わったな!ここから先は俺たちの仕事だ」
ガルドは、掘削に使う巨大なハンマーを肩に担ぎ、その重さを確かめた。
彼の親しみやすい笑顔は消え、戦場に向かう男の顔が浮かんだ。
「お前さんが見つけた換気装置...そいつをぶち壊す。
その間に、あんたはノクス様への報告ルートを確立しろ。
できるな?」
ガルドは、掘削用のハンマーを破壊兵器へと変えるために、魔力を集中させ始めた。
彼は、ルキウスの解析という頭脳と、自身の破壊工作という鉄槌をもって、
この極秘施設へ最初の打撃を与える準備を整えたのだった。




