27:王達の集い
ノクス王の聖域
アラキラ王国禁忌の森の深奥、人間の立ち入ることのできない洞窟の奥深くに存在する。
会議の場は、ノクスが日常的に執務を行う執務室だった。
部屋は黒曜石の壁と黄で構成され、静謐な中に威厳と美しさが漲っていた。
円卓に集うは、竜王ノクス、新王ヴィクトール、ノヴァ、そしてアイゼン。
ノヴァは、ヴィクトールと言う番を得たことで、ノクスやアイゼンと同じく人化していた。その立ち居振る舞いは優雅で、洗練された知的さが全身から滲み出ている。
ヴィクトールと並ぶ金色の衣が、彼らの王族としての絆を象徴していた。
ノクスは玉座に座り、卓上の記録板に視線を落とした。
アイゼンが深く頭を下げ、報告を始める。
「ノクス様。ルキウスとガルドの潜入は、すでに最終準備段階に入っております。
それまでの間に、最優先で議論すべきは、アラキラ王家への制裁です。」
アイゼンは、テーブルの上に置かれ、魔法で封印された禍々しい箱を指し示した。
「この『黒い塵』は、ドラゴニア王国にとって、存在そのものを揺るがす危機です。
塵は竜族の魔力構造を破壊する成分を含み、竜形態でこれを浴びた場合、心臓が停止するほどの致命的な魔力干渉を引き起こします」
ノヴァは、微かに身体を前に傾けた。
「竜の心臓は、命と力の根源。この塵は、私たち皆にとって、命を脅かす厄介な代物だわ、ノクス様」
ノクス王は、感情を一切交えずに、静かに問いかけた。
「アイゼン。この塵は、覚醒を遂げた我々にも有効か?」
「はい、ノクス様。覚醒竜の魔力密度が高いほど、塵との干渉作用は強まります。理論上、貴方こそが、最も危険と言えます。」
ヴィクトールは、卓上箱を睨みつけながら、冷静に口を開いた。
「アラキラは、この塵を切り札としています。彼らがこれを大量生産し、列国に流通させれば、我々は軍事行動に出る前に、ドラゴニア王国全体が種の危機に直面する」
ノヴァは、ヴィクトールの隣で、率直に懸念を表明した。
「ルキウスとガルドからの情報を待つべきなのは分かってるの。でも、この禁忌の森のすぐ隣で、アラキラが軍事演習と称して塵を試用するかもしれないし、待つこと自体が破滅を意味する可能性もあるわけ、無視できる?」
ノクスは、ノヴァに微笑みかける。
「そなた等の言う通りだな。アラキラは、この強力な対竜兵器を手にして、静観することはあり得ない。ガルド、ルキウスが情報を掴むまで、エルグランドは絶対的な防御姿勢を維持して欲しい」
ノクスは、ヴィクトールを見据え、王としての裁定を求めた。
「さて、ヴィクトール。おまえがエルグランドという重要な足場を確保した意味は大きい。
アラキラが動く際、我々はどう動くべきか。」
ヴィクトールは、ノクス王からの問いかけに、迷いなく答えた。
「ノクス様。黒い塵の脅威を考えれば、ルキウスたちの情報を待つのが最善ですが、待つことは死を意味します」
彼は、ノヴァに視線を送る。
ノヴァは、優しく、優雅に頷きを返した。
「エルグランドをファーン殿に任せ、私とノヴァがアラキラへ向かいます。
子爵の地位を得たヴァルカン殿に協力を仰ぎ、外交ルートを通して接触しましょう」
ノヴァは、親愛を込めた眼差しをノクスに向けた。
「塵の存在する場所へ、我々が向かうのは危険ですが、私が自ら乗り込むことで、アラキラ王家に心理的な揺さぶりをかけられます。
内部と外部から同時に探る事で確実性も増し、何より、王家を私達に釘付けにすれば潜入班の助けにもなりましょう。
これが最も迅速かつ確実な道ですよ、ノクス様」
ノクス王は、二人の意見と戦略に、満足の意を示した。
「いいだろう。ルキウスとガルドからの第一報が入り次第、おまえ達のアラキラ遠征を開始せよ。黒い塵は、ドラゴニア王国の未来にとって、大いなる脅威。根絶せよ。」
こうして、黒い塵という未曾有の危機に直面し、ヴィクトールとノヴァのアラキラ遠征が、ドラゴニア王国の最優先事項として確定したのだった。




