22:朝
夜明け前の僅かな時間、ヴィクトール、彼の腕を枕に、深く眠るノヴァの、静謐な美しさがあった。
(これが、番の力…)
ヴィクトールは、ノヴァのプラチナブロンドの髪にキスを落とした。
彼の心は、ノヴァの愛という絶対的な支柱を得て、悲痛な感情から冷徹な正義の剣へと鍛え直されていた。
ノヴァが目を覚ました。
彼の紫の瞳は、ヴィクトールの黄金の瞳を見つめると、すぐに甘い愛の色に染まる。
その時、控えめなノックと共に、公爵家の家令が声をかけた。
「旦那様。朝のご報告に参りました」
ヴィクトールは、ノヴァのしなやかな体を抱き寄せ、静かに囁いた。
「ノヴァ。貴方の力を確認する、最初の報告だ」
ヴィクトールが許可すると、家令が中に入り、恭しく一礼した。彼は、主人のベッドへの来訪者に驚いたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「旦那様。昨夜、ヴァリエール伯爵家の公的な帳簿と証文が無効になり、財務監査局に不正が露見いたしました。伯爵は、監査局の手により拘束され。伯爵の失脚により、前王妃を柱とする貴族派閥の資金と情報網は、呼吸を止めたに等しい状態です」
「完璧だ」
ヴィクトールは、静かに、しかし絶対的な力を込めて言った。彼の金の瞳が鋭く輝く。
家令が下がり、部屋には再び一組の番だけが残された。
「これで、復讐の舞台は整ったわね。さあ、いよいよ時が来たわ。私の愛しい人の計画をお聞かせ願えるかしら」
ヴィクトールは、ノヴァの手を握り、その白い手に唇を寄せた。
「計画はシンプルだが、ヴァリエール伯爵は駒に過ぎない。私の復讐の真の標的は、母を死に追いやった者たち、即ち、黒い塵の力を欲し、それに加担したエルグランド王家の人間と、前王妃を柱とする貴族派閥だ」
彼の瞳に、冷徹な決意が宿る。
「第一に、黒い塵の資金源であったヴァリエール伯爵の失脚により、組織は動揺している。私が今日行うのは、断罪。」
ノヴァは、ヴィクトールの過去の悲劇を思い、深く頷いた。
「貴方の計画は理解しているわ。黒い塵を根絶やしにしなければ、この国の闇は消えないもの。具体的にはどう動くの?」
「ノヴァ。私は、公爵の権限と番の魔力をもって、王宮を掌握する。そして、復讐を果す。」
復讐の果たすため、ヴィクトールは、その日すぐに行動を開始した。
彼の体からは、魔力が全身に漲っていた。
彼は、もはや人間の域を超えた、竜の番としての威厳を放っていた。
ノヴァは、番として常に彼の傍らに立つ。
ノヴァの魔力は、ヴィクトールの魔力と完全に同調し、二人の周囲には、決して破られることのない、防護領域が形成されていた。
ヴァリエール伯爵の拘束という名の狼煙が上がり、ヴィクトールとノヴァは、王宮へと静かに進軍した。
竜の番の力と、復讐の炎。二人の愛は、今、王国を浄化する炎となったのだった。




