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クロマティ・ヘゲモニー 万色竜の覇権  作者: 鞘沙耶
ドラゴニア王国
75/86

21:溶け合う

BL的表現が入っております。好まれない方は飛ばしてください。

白竜ノヴァは、ノクス王の「新たな時代の運命」という言葉を聞き、理性の檻から解き放たれた。

胸の奥で響くヴィクトールの名は、もはや、魂の渇望そのものだった。「どうしよう」という最後の戸惑いは、すでに「嬉しい」という抑えきれない歓喜へと変わっていた。


(ヴィクトール。私、あなたの愛を受け入れてもいいのね)


ノヴァは、その場で空間魔法を編み上げた。

目的地は一つ。

ヴィクトールがいるレオンハルト公爵邸の私室。

もはや、儀礼も必要なかった。ただ、彼の熱を、彼の存在を、今すぐこの身に刻み込みたかった。

クプロやファーンの制止の声も耳に入らない。ノヴァの白い魔力が歓喜の渦となって膨れ上がり、次の瞬間、彼の姿は聖域の中から、ヴィクトールの私室へと音もなく転移した。


 転移したノヴァは、そのままの姿でヴィクトールの前に立った。

公爵は、深夜にもかかわらず、まだ執務机で書類を広げていた。

ノヴァが音もなく現れたことに、ヴィクトールは驚きのあまり、手に持っていた羽根ペンを落とした。彼の瞳が、ノヴァを捉える。


「ルクス……伯爵?」


ヴィクトールは、その名で呼びかけたが、その声は疑問と戸惑いに満ちていた。

彼は、ノヴァが二度と戻らないだろうと、絶望的な確信を抱いていたのだ。

ノヴァは、彼の姿を見て、胸が張り裂けそうになった。


「いいえ、ルクス伯爵ではないの」


ノヴァの声は、かつての事務的な冷たさとは全く違う、甘く、熱に満ちた震えを帯びていた。

ノヴァは、ヴィクトールの机に両手を置き、その視線をまっすぐに見返した。


「ヴィクトール」


ノヴァが初めて彼のファーストネームを呼んだ瞬間、その一言に込められた愛惜と解放の熱が、部屋全体に満ち溢れた。


「私は、ノヴァよ⋯」


ヴィクトールは、息を飲んだ。彼の瞳が、驚きから激しい情熱へと変わる。


「ノヴァ……!何があった?」


彼の声は、歓喜と混乱で掠れていた。

ノヴァは、ヴィクトールの傍らに歩み寄り、その頬にそっと触れた。

ノヴァの冷たい指先と、ヴィクトールの熱い肌が激しく共鳴し、互いを貪るように絡み合った。


「ノクス様が、教えてくださったのよ、ヴィクトール」


ノヴァは、彼の名を口にするたびに、胸が高鳴るのを感じた。


「私は、理性で自分を殺していた。でもね、ヴィクトール。ノクス様がおっしゃったわ」


ノヴァの紫の瞳が、ヴィクトールの金色の瞳を見つめ、運命の真実を告げた。


「血が薄まり、つがいの理は変わったかもしれない、新しい番の理なのかもしれないって。貴方の血には、私の魂が求める熱がある。私と貴方こそが、新たな時代の、運命の番なのよ」


ヴィクトールの表情は、驚愕、疑念、そして信じられないほどの喜びで、複雑に歪んだ。

彼は、長い孤独の中で抱いていた愛への渇望が、竜王によって認められたことを理解したのだ。


「ああ、ノヴァ…!」


ヴィクトールは、ノヴァの手を掴み、その手を自分の額に押し付けた。


「私は、この衝動が間違いなのだと信じようとした。貴方の拒絶は、それを証明するものだと。だが…貴方が、私を受け入れてくれた!」


ノヴァは、ヴィクトールの情熱的な告白を聞きながら、最後の、最も重要な真実を告げた。

彼の声は、熱と不安で、わずかに震えていた。


「ヴィクトール…。私は、竜よ。そして、男。貴方の愛は、それでも、揺るがない?」


ノヴァの瞳には、不安が宿っていた。ヴィクトールは、一瞬の躊躇もなく、ノヴァの頬を両手で包み込んだ。


「愚問だ、ノヴァ」


ヴィクトールの声は、低く、熱に満ちていた。


「貴方の魂、貴方の魔力、貴方の存在こそが、私の全てだ。

性別や種族など、愛の前では塵に等しい。

貴方を愛している。貴方の番として、このヴィクトールの全てを受け入れて欲しい!」


ヴィクトールは、ノヴァを強く抱きしめた。

その抱擁は、二人の孤独な時間と抗えない運命の重さを全て含んでいた。

二人の体から放たれる魔力は溶け合い、輝く黄金色へと変化していた。

それは、竜の番が成立する時にしか発生しない、誓約の色だった。


「ノヴァ、私の愛しいノヴァ…」


ヴィクトールの声は、熱と震えで乱れていた。


「私は、母の復讐という使命のために生きてきた。生死をかけた孤独な戦いだった。だが、貴方が、その孤独を変えてくれた」


「いいえ、ヴィクトール」


ノヴァは、彼の胸に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。


「私もよ。番を得られない竜は孤独なの。でも、貴方が、私を生きる竜にしてくれた。貴方が、私の番…」


ノヴァは、ヴィクトールのに口づけをする。

ヴィクトールは、ノヴァの体を抱き上げ、寝台へと運んだ。

部屋に、二つの魂が一つになる熱が満ちた。

二人の肉体が触れ合うたびに、白い肌と熱い肌の間で、魔力の共鳴が起こる。

それは、互いの魂が相手の存在を認め、魔力そのものに相手の色彩を刻み込む、竜と番の間に交わされる最も聖なる行為だった。

ノヴァの体と、ヴィクトールの体が、愛という名の力によって、欠けた部分を埋め合うように重ね合わされる。

ヴィクトールは、ノヴァの全てを渇望し、ノヴァは、ヴィクトールの全てを受け入れた。

ノヴァ数百年の孤独は終わり、二つの運命は、ここに完全に一つに結びついた。



その夜、レオンハルト公爵邸の私室では、二人の睦言が静かに、そして激しく響き続けていた。


「ヴィクトール…永遠に、私の番でいてくれるかしら…?」


「ああ、永遠に、ノヴァ。私の愛しい白竜。貴方だけだ」



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