7:動乱の幕開け
ノクスは玉座に座り、金竜アイゼン、赤竜ヴァルカン、紫竜アメティストの三体を前に、建国宣言について議論していた。
「経済、資源、諜報。お前たちが世界に撒いた種は、すぐにも芽吹くだろう。今こそ、我々の存在を公にするとき。」
ノクスは静かに言った。
「各国へ、ドラゴニア王国の建国と、我の要求を通知する。どの様な内容を通達すべきか。」
ヴァルカンが進言した。
「ノクス様、商会経由で宣戦布告書を叩きつければ、奴らの度肝を抜けます。恐怖は支配の最高の土台となります。人間どもに恐怖を与えましょう!」
紫竜アメティストが続けた。
「王、ヴァルカンの提案は性急です。敵に先制攻撃の口実を与えてはなりません。あくまで、王としての責務の履行を目的とすべきです。」
ノクスは、静かに三人の意見を聞いた後、知恵者である金竜アイゼンに視線を向けた。
「アイゼン。お前の知恵を聞かせてくれ」
アイゼンは、厳かに一歩踏み出し、深く頭を下げた。
「ノクス様。王としての威厳を示すため、これは交渉の余地なき絶対的な通達です。各国へ同時に送達すれば、奴らは連合する間もなく、内部から動揺します。私の魔術を使い親書を送りましょう」
アイゼンは、親書に含めるべき内容を明確に提案した。
「親書には、以下の四つの要求を記します。これこそが、我らドラゴニアの求めるもの」
「中央国アラキラ王国の禁忌の森を、ドラゴニア王国の唯一の領土とする」
「各国に奴隷として囚われているドラゴニアの血族を、即時、無条件で解放し、新王国へ帰還させること」
「国籍身分に問わず、不当な扱いを受けている加護の血族の即時帰還を許可するものとする。ただし、本人の希望があれば残留を許す。この場合、新王国の担当官との面談を経て検討するものとする」
「人間もしくは、その他亜人種族の伴侶を持つ加護の血族については、その伴侶も同じく新王国への移住を許可するものとする」
アイゼンはノクスの瞳をまっすぐに見つめる
「うむ。では最後に付け加えよ。『我々は、この要求に友好的に応じる国には、最大の友誼をもって報いる』と。」
ノクスは、満足げに微笑んだ。 これから起こりうる色々な事柄がノクスを楽しませるに違いなかった。
数日後、親書は、アイゼンの転移魔法により、世界中の王城の玉座の間へと一斉に送り届けられた。
各国の王と貴族たちは、親書の内容を読み憤慨した。
「なんだ!この要求は、竜王?そんなもの伝説上のものであろう!」
彼らが激怒するのも無理はなかった。ドラゴニアの血を引く者は、希少種として高額な取引の対象であり、富と権威の象徴だった。
ある国では、王家に名を連ねる妃として、世継ぎを生む道具となっていた。またある国では、貴族家を継ぐ者として、その強大な魔力のために鎖に繋がれて秘密裏に飼われていた。奴隷でない者も、その扱いは所有物と大差なかった。
この親書は、彼らの富と隠された権力を、一瞬にして奪い去るものだったからだ。
「馬鹿げた戯言だ!禁忌の森だと?奴隷解放だと?ドラゴニアが建国など笑止千万!」
各国王は、即座に軍隊の招集と、連合軍の結成を画策し始めるのであった。ドラゴニア王国の建国宣言は、世界に静かだが、強烈な動乱の火種を投げ込んだ。




