5:紫の夢
聖域に隣接する、結界で守られた広大な土地。この地の最も静かで魔力濃度の高い区画で、アメティストは、数人の人間とドラゴニアの指導していた。彼らは、王国の最初の騎士、魔法使い部隊となる者たちだ。
彼らの指導者、アメティストは、訓練生たちの一挙手一投足を見つめている。
志願してきたのは鱗月村から救われた者、そして、各竜に従い、支えていた者達だ。
聖域から流れ出る魔力が集中する中、アメティストの厳しい声が響く。
「魔力制御が乱れている!君たちの使命は、王国の折れぬ剣となり、壊れぬ盾となる事。1 一日も早く、国を守るべく作り上げなければならない。」
彼らは、ノクス王によって与えられた新しい人生に感謝し、熱狂的に訓練に打ち込んでいた。
アメティストは、魔法使いの訓練を見守りながら、少し離れた岩場に目を向けた。そこでは、シオンの夫であるガルドが、騎士たちを厳しく鍛えているのが見えた。
ガルドは、その身の丈と豪快な性格で騎士たちを鼓舞している。
彼らの鍛錬は、鱗月村の青年シオンにより統率されていた。彼の助けもあって動きも、修練度も高い。
アメティストは、自身の任務とガルドの任務を比較し、独り言を漏らした。
「兵士の育成は二人に任せるか。」
間も無く始まるであろう、他国からの攻撃に少しでも耐えられるよう、脅威を示せるよう訓練を積む。
最終的には自分を始めとする色付きの竜が、竜化してしまえば戦況などどうにでもなる。
そうアメティストは考えていた。
訓練の終わり頃。アメティストは、最も優秀な魔法使いの前に静かに立った。
「君たちの能力は、ドラゴニア王国にとって、不可視の砦となる。ガルドの率いる騎士団が剣ならば、君たちは盾だ。君たちの力が、この国を守る。期待しているよ。」
アメティストは、騎士と魔法使いという二つの人間組織が、王国の防御の要として形づけられたことを確信した。
汗を拭い、こちらに向かってくるガルドを優しく見つめながら、アメティストは揺るぐことのないドラゴニア王国の夢を見た。
人もドラゴニアも竜ですら、笑顔を讃え、誰もが迫害されない国。
唯一絶対の竜王の台頭とその番の慈愛を持って、世界はより良くなる。
そう願い、隣に立つ伴侶の腕を取り演習場を後にした。




