潔の儀式
聖域奥深く、ノクスが眠りについていた巨大な洞窟。
そこは、静謐な魔力の光に満ちていた。ノクスは、エセルを水鏡の監視から解放された、この真の安息の地へと連れてきた。
「エセル。お前は、もう何一つ恐れる必要はない。」
エセルは、ノクスの胸に顔を埋めたまま、小さく声を震わせた。
「ふふ、ノアじゃない、ノクスなのね、私のことお前って呼んでる」
「仕方ないであろう、ノアの姿だとどうして話して良いか、わからぬことがある。だが、我らにはこうして、安寧が訪れたのだ。」
「ノクス、ごめんなさい。私の体が…穢れてしまった。あんな人たちに…」
ノクスは、エセルの背を優しく撫でた。それは、かつて彼女に寄り添い、傷を癒した『ノア』の時と寸分違わぬ、絶対的な安らぎを与える優しさだった。
「大丈夫だ、我の番よ。お前は、何一つ悪くない。あの闇は、全て、我々を引き離そうとした外部の悪意だ。そして、その穢れは、私のが全て消し去る」
ノクスはエセルを抱いたまま泉に入り、彼の神聖な魔力で満たされた泉が、エセルの肌を包み込んだ。彼女は、全身の痛みと、心の底にこびりついていた恐怖が、静かに溶けていくのを感じた。
ノクスは、彼女の濡れた髪に口づけ、彼の部屋へと導いた。
ノクスは、エセルの目を見つめ、静かに、そして真剣に告げた。
「エセル。お前は、私の番となった。しかし、この繋がりを永遠のものとし、私の聖域の力をお前のものとするためには、最後の儀式が必要だ」
「…儀式?」
エセルの瞳にはノクスへの絶対的な信頼が宿っていた。
「そうだ。我は竜であり、お前は人間。お前の魂と肉体を、我の魔力で完全に満たさなければ、時の流れがお前を蝕むだろう。完全に我の番となり、永遠を生きる女王となるためには、七日間、お前の全身を我の魔力で刻印する必要がある」
ノクスはエセルに、永遠の命と絶対的な安寧という、最高の報酬を約束した。
「七日間、この部屋で、我と一つになり、お前の全てを私に委ね、私の魔力で満たされるのだ。そうすれば、お前は真に我の物となる。」
エセルは、ノクスの言葉の奥にある強い支配欲を感じながらも、それが永遠の愛の約束であることを知っていた。
彼女は、ノクスへの絶対的な帰属意識のもと、応じた。
「はい、ノクス。私を…あなたの魔力で、いっぱいにしてください」
二人は寝台で、七日七晩を過ごした。
ノクスは、エセルの肌、肉体、そして魂の奥底まで、休むことなく彼の濃密な魔力を注ぎ込み続けた。七日目の夜明け、エセルの体から発せられる光は、もはや人間のものではなくなっていた。彼女の瞳には、ノクスと同じ、世界を見下ろすような、深い知性と支配の輝きが宿っていた。




