終着
シオンがノクスにエセルを託し、静かに身を引いた後、ノクスはエセルと共に、鱗月村について話し合った。
ノクスは、もはやノアではなく、竜王であり、1000年の孤独のため彼らを放置していた罪を償わなければならない。
ノクスは、ノアの姿のままエセルを隣に立たせ、村人たち全員を広場に集めた。
彼の瞳は、かつてないほど強く、深紅に輝いていた。
「鱗月村の民よ。我は、竜王ノクス。1000年の眠りから覚め、お前達を導く者だ。」
ノアは、竜王ノクスとして圧倒的な威圧感を放った。アメティストは深く頭を下げ、村人たちは畏怖に震えた。
「よって、この村は、我の支配下に置くこととする。」
村人たちは驚きに息を飲んだが、ノクスは手を止めなかった。
「お前達は私の眷属だ。我は、お前達を無慈悲に放り出すことはしない。我が、お前達を我の聖域の結界が永遠に守護する、安全な土地へと導く」
ノクスは、彼らの目の前に、彼の聖域の周辺に存在する、外部に脅かされない土地の幻影を見せた。
「そこは、お前達の命が、飢えも病も、そしていかなる貴族の暴力にも晒されない、真の平和の地だ。これが、番を得た竜王の誓約であり、1000年放置してきた私の贖罪だ」
村人たちがノクスの提案に戸惑う中、シオンは群衆の中から一歩前に出た。彼は、ノクスの顔ではなく、ノクスの腕に寄り添い、安らぎに満ちたエセルの顔を見つめた。
「皆、ノクス様の提案を受け入れよう」
シオンは、力強く、しかし穏やかな声で言った。
「俺たちが、自分の力では絶対に手に入れられなかった絶対的な安全を、ノクス様が与えてくれる。俺は、その新しい地で、二度と村が脅かされないよう、竜王に仕える戦士として、皆を守る」
シオンは、ノクスへの競争をノクスへの忠誠へと昇華させた。
ノクスは、シオンの忠誠と、村人たちの感謝の念を受け入れた。
そして、ノクスはエセルを抱き上げ、誰も見ていない場所で、静かに彼の聖域へと戻った。
エセルは、ノクスの腕の中で、聖域の永遠の静寂と、彼の燃えるような愛に包まれた。
「ノクス…これで、本当にずっと一緒ね」
「永遠にな、エセル。あなたは、もう何一つ恐れる必要はない。この世界で、あなたを傷つけられるものは、二度と現れない」
ノクスの宣言と共に、鱗月村の民は、竜王の聖域の傍にある安全な新しい場所へと移された。
竜王ノクスは、千年間の孤独を、番であるエセルという唯一の安寧によって終わらせ、その愛と支配的な力をもって、彼の守護する民に永遠の平和を与える。
間も無く、各地に散ったドラゴニアも気がつくだろう。己の崇める王が目覚めたと。




