表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロマティ・ヘゲモニー 万色竜の覇権  作者: 鞘沙耶
王の目覚め
38/86

無言の脱出


廃鉱の入り口から少し離れた場所に、シオンは身を隠した。夜明けが迫り、東の空がわずかに白み始めている。

ノアは、冷たい視線でシオンを一瞥した。


「準備はいいですね。作戦は単純です。あなたが彼らの注意を引きつける。私は、その間に侵入する」


シオンは、ノアへの不信感を押し殺し、覚悟を決めた。自分の熱意を、エセルを救うための力に変える。

シオンは、隠れ家の真ん前に躍り出ると、大声で叫んだ。


「山賊ども!エセルとリルカをすぐに解放しろ!鱗月村の者だ、大人しくすれば命までは取らない!」


廃鉱の中は一瞬静まり、すぐに騒然となった。


「何奴だ!ドラゴニアか!」


山賊たちは、興奮と警戒を露わにし、数人が武器を持って入り口に飛び出してきた。彼らは、シオンが一人であることを見て、さらに激昂した。


「たった一匹で乗り込んできたか!笑わせてくれる!」


シオンは、山賊たちの注意が完全に自分に向けられたことを確認し、わざと後退するように見せかけ、廃鉱から遠ざかるように山の中へ誘い込んだ。彼の行動は、ノアが突入するための完璧な間隙を作り出した。

シオンが山賊の大部分を引きつけた瞬間、ノアは廃鉱の裏手、崩れかけた通気口へと音もなく移動した。

ノアは、魔法を使うことなく、その尋常ならざる体躯の強靭さだけで、崩れた岩盤を排除し、地下へと侵入した。彼の目的は、リルカとエセルを確保すること、そして山賊の殲滅ではない。

地下の通路は暗く、湿っていたが、ノアには障害にならなかった。彼は、奥の部屋から漏れる微かな光と、幼い少女のすすり泣く声を目指した。

リルカは、薄暗い部屋で怯えて泣いていた。そしてその隣には、乱れた髪と、疲弊しきった顔のエセルが、リルカを抱き締め無表情に座り込んでいた。

ノアは、エセルの姿を見て、一瞬、その呼吸が乱れた。エセルの体は無事に見えたが、その精気を失った瞳が、彼女に何があったかを物語っていた。彼は、怒りに燃える心を、救出という使命で覆い隠した。

ノアは、音もなく二人へと近づき、まずリルカの口を塞ぎ、囁いた。

「大丈夫。助けに来た」

エセルは、ノアの気配を感じて顔を上げた。彼女の目は、彼が誰であるか否かではなく、「助けに来てくれた」という事実だけを捉えた。

ノアは、手早く二人のロープを解いた。


「立てますか、エセル殿」


エセルは小さく頷いた。ノアは外套を脱ぐと、傷ついた四肢を隠す様に羽織らせた。

エセルは、連行中に受けた心の傷を押し殺し、すぐにリルカを抱き上げようとしたが、ノアが先にリルカを抱き上げた。


「私の後に。この先で、シオン殿が待っています」


その時、外でシオンを追っていた山賊の一人が、異変に気付いて引き返してきた。男はノアの姿を見て、驚愕した。


「貴様、いつの間に…!」


ノアは、その山賊に対して一言も発さなかった。ただ、人間の限界を超えた速さで男に近づき、一撃で気絶させた。彼の動きは、圧倒的な強さと、自信に裏打ちされていた。


ノアは、リルカを抱き、エセルを伴い、無言で地下を脱出した。

彼らが廃鉱の裏手から森へと逃げ込んだ直後、囮役を果たしきったシオンが、最後の山賊を撒いて合流地点へと走ってきていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ