発見
ノアの予測通り、追跡ルートは大きな街道に合流していた。
街道沿いには、使用されなくなった古い宿場町や、打ち捨てられた鉱山施設が点在している。
シオンは、ノアの冷静な判断力に、いらだちを感じながらも頼らざるを得なかった。
「この辺りなら、隠れる場所はいくつかある。だが、全て虱潰しにしてる間はない」
シオンは警戒した。
ノアは、街道から少し離れた森の窪地を指さした。
「山賊は、ドラゴニアの魔法使いが追跡してくる可能性を最も恐れている。彼らが選ぶのは、魔法の気配が遮断されやすい、地下構造を持つ場所ですだろう」
シオンはハッとした。
「廃鉱だ!この先の山中に、昔使われていた小さな銀鉱の廃墟がある!」
二人は廃鉱へと急いだ。入り口は崩れかけていたが、周囲には不自然に新しい足跡が残されており、人の出入りが頻繁であることを示していた。
二人は、廃鉱の入り口近くに身を潜め、内部の様子を探った。中からは、山賊たちの下品な笑い声や、金属がぶつかり合う音が漏れていた。
「間違いない、ここが奴らの隠れ家だ」
シオンは声を潜めた。
ノアは、入り口の地面に落ちていた小さな木片を拾い上げた。それは、鱗月村の治癒院で薬をすり潰すために使われる、特定の種類の木材だった。
「彼女のものです。」
ノアは静かに言った。
シオンは、エセルを思うと胸が熱くなった。
「エセル…」
シオンは拳を握りしめた。彼の心は、もはやノアへの対抗心よりも、エセルを救い出したいという純粋な使命感に支配されていた。
隠れ家の特定に成功したものの、正面から突入すれば、人質の命が危ない。ノアは、冷徹な目で廃墟全体の構造を見定めた。
「シオン殿。村から援軍を待つ時間はありません。今、我々だけで救出を実行する必要があります。できますか?」
ノアは、救出作戦の計画を淡々と提示した。
「私一人で突入すれば、奴らはすぐに人質を盾にする。シオン殿は、人間だ、彼らもドラゴニアではないあなたを見て油断するでしょう。そうしたのち、できるだけ多くの山賊を引き連れ森へ入ってください。その隙に、私が裏手から侵入し、エセル殿とリルカ殿を確保します。」
シオンはノアの冷たい命令口調に反発したが、それが最善の策であることは理解できた。
「俺が囮になるだと?冗談じゃない!」
ノアはシオンを真っ直ぐに見つめた。
「あなたは私よりも森を知っている。故郷なのでしょう?ならば私よりもあなたの方が生き残りやすい。」
シオンは、ノアの言葉の裏に、自分への信頼の様なものを感じた。彼は深く頷いた。
「わかった。必ず、二人を無傷で連れ出すぞ」
「ええ、必ず。先程休憩した大木のもとに再び集まりましょう。では、また。」
シオンとノアは、それぞれの思惑と、エセルへの感情を抱えながら、救出作戦の準備に取り掛かった。夜明けが、彼らの決戦の時を告げようとしていた。




