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クロマティ・ヘゲモニー 万色竜の覇権  作者: 鞘沙耶
王の目覚め
35/86

大硬貨一枚以下の価値

この話の中に性的、暴力的な表現が含まれます。

直接的ではないですが、不快な方は飛ばしてください




夜更け、山賊の隠れ家は静まり返っていたが、その静寂は不穏な気配を孕んでいた。

壁の向こうから、荒々しい足音が近づいてくる。

扉が開き、顔に傷跡のある山賊が入ってきた。彼の視線は、真っ直ぐにエセルに向けられていた。


「おい、金髪。出てきてもらうぞ」


リルカは、エセルが連れて行かれることを察し、恐怖に泣き叫んだ。


「やめて、エセルをつれて行かないで!」



エセルは、震えるリルカの手に力を込めた。

自分も恐怖に駆られていたが、ここで弱音を吐けば、リルカまで危険に晒される。


「大丈夫よ、リルカ。私は大丈夫。心配しないで!あなたはここで、静かに待っていて、ね?できるわね?」

エセルは、精一杯の強がりを込めてリルカの手を握った。




エセルは、山賊に引きずられるようにして、粗末な部屋へと連れて行かれた。

男は下卑た笑みを浮かべ、エセルに向かってある行為を命令した。


「脱げ。」


エセルは、自分がこの場を切り抜ける唯一の方法は、この要求を受け入れることだと悟った。


彼女の心は、激しく抵抗した。

しかし、リルカの泣き声が、彼女の決意を固めさせた。


「待って。リルカには、絶対に手を出さないと約束して。そうすれば…あなたの言う通りにするから」


エセルは、全身の血が凍るような思いで、その条件を提示した。

山賊は、エセルの言葉を聞き、さらに下品に笑った。その瞬間、エセルは、自分がもう、この村に来る前の娼婦以下の存在に貶められたことを痛感した。



山賊が彼女に触れた瞬間、エセルの脳裏に、ノクスと過ごした時間が鮮明に蘇った。

ノクスは、熱く情熱的でありながらも、決して強引ではなかった。

彼は、彼女の意志を尊重し、優しくエセルを抱いた。彼は、今まで相手をしたどの男よりも紳士的だった。


その、温かく、熱を帯びた記憶が、今、目の前の冷たい暴力と対比され、エセルを激しく打ちのめした。

彼女は、目を固く閉じ、ノクスの温もりだけを必死に思い出そうとした。

エセルは、リルカを守るため、そして、シオンや村の人々が彼女たちを探しに来るまでの時間を稼ぐため、自分の身体と精神を犠牲にするという、孤独で絶望的な決断を受け入れた。



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