大硬貨一枚以下の価値
この話の中に性的、暴力的な表現が含まれます。
直接的ではないですが、不快な方は飛ばしてください
夜更け、山賊の隠れ家は静まり返っていたが、その静寂は不穏な気配を孕んでいた。
壁の向こうから、荒々しい足音が近づいてくる。
扉が開き、顔に傷跡のある山賊が入ってきた。彼の視線は、真っ直ぐにエセルに向けられていた。
「おい、金髪。出てきてもらうぞ」
リルカは、エセルが連れて行かれることを察し、恐怖に泣き叫んだ。
「やめて、エセルをつれて行かないで!」
エセルは、震えるリルカの手に力を込めた。
自分も恐怖に駆られていたが、ここで弱音を吐けば、リルカまで危険に晒される。
「大丈夫よ、リルカ。私は大丈夫。心配しないで!あなたはここで、静かに待っていて、ね?できるわね?」
エセルは、精一杯の強がりを込めてリルカの手を握った。
エセルは、山賊に引きずられるようにして、粗末な部屋へと連れて行かれた。
男は下卑た笑みを浮かべ、エセルに向かってある行為を命令した。
「脱げ。」
エセルは、自分がこの場を切り抜ける唯一の方法は、この要求を受け入れることだと悟った。
彼女の心は、激しく抵抗した。
しかし、リルカの泣き声が、彼女の決意を固めさせた。
「待って。リルカには、絶対に手を出さないと約束して。そうすれば…あなたの言う通りにするから」
エセルは、全身の血が凍るような思いで、その条件を提示した。
山賊は、エセルの言葉を聞き、さらに下品に笑った。その瞬間、エセルは、自分がもう、この村に来る前の娼婦以下の存在に貶められたことを痛感した。
山賊が彼女に触れた瞬間、エセルの脳裏に、ノクスと過ごした時間が鮮明に蘇った。
ノクスは、熱く情熱的でありながらも、決して強引ではなかった。
彼は、彼女の意志を尊重し、優しくエセルを抱いた。彼は、今まで相手をしたどの男よりも紳士的だった。
その、温かく、熱を帯びた記憶が、今、目の前の冷たい暴力と対比され、エセルを激しく打ちのめした。
彼女は、目を固く閉じ、ノクスの温もりだけを必死に思い出そうとした。
エセルは、リルカを守るため、そして、シオンや村の人々が彼女たちを探しに来るまでの時間を稼ぐため、自分の身体と精神を犠牲にするという、孤独で絶望的な決断を受け入れた。




