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クロマティ・ヘゲモニー 万色竜の覇権  作者: 鞘沙耶
王の目覚め
33/86

2つの希望



エセルが意識を取り戻すと、ひどく湿った土と、埃っぽい獣の匂いが鼻をついた。

そこは、古い洞窟か廃墟の地下室のようだった。わずかな日光が、天井のひび割れから差し込んでいた。

彼女の隣には、まだ幼いリルカが、怯えた様子で座り込んでいた。

リルカは、エセルが目覚めたのを見て、すぐにしがみついた。


「エセル…こわいよぉ…」


「大丈夫よ、リルカ。きっと誰かが助けに来てくれるわ」


エセルは、震えるリルカを抱きしめながら、自分自身を落ち着かせようとした。

彼女たちの手足は、粗末なロープで縛られていた。エセルの金髪と青い瞳は薄暗い地下でも際立ち、その貴族的な容姿は、場違いなほどの美しさを放っていた。

まもなく、彼らを攫った山賊の一人、顔に大きな傷跡のある男が入ってきた。

男は、エセルの容姿を上から下まで値踏みするように眺め、下卑た笑みを浮かべた。

「おい、運が良かったぜ。今回の獲物は上等だ」


男は次にリルカを見た。


「こっちの竜人のガキは、東の国のお貴族様からのご依頼品だ。」


リルカは、男の言葉を聞いてさらに震えた。

男は次にエセルを見た。彼の視線には、欲望の色が混じっていた。


「そして、そっちの金髪の姉ちゃん。ガキと違って依頼品じゃねえが、この顔なら高く売れるか、もしくは…」


男は言葉を濁し、下品に笑った。


「…どちらにしても、捨て札にはならねえ」


エセルは、自分が商品もしくは、慰み者として扱われることを理解し、恐怖で体が硬直した。

エセルは、山賊に怯えながらも、希望を捨てなかった。


(シオンは、きっと諦めないわ)


エセルのシオンに対する感情は、個人的な好意と、信頼になっていた。


そして、不意に、ノアの姿が脳裏をよぎった。


(あのノアさん、あの人なら助けてくれるかも知らない)

ノアの人並外れた強さと冷静な判断力は、エセルの心に、一種の希望を与えていた。彼女は、シオンの熱い心と、ノアの理知、その両方に救いを求めている自分に気がついていなかった。

エセルは、リルカを抱き寄せた。


「大丈夫よ、リルカ。私たち、必ずここから出られるわ」


山賊が彼女たちを商品として利用しようとしている間、村では、二人の男が異なる感情を抱えながら、彼女たちを追っていた。



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