2つの希望
エセルが意識を取り戻すと、ひどく湿った土と、埃っぽい獣の匂いが鼻をついた。
そこは、古い洞窟か廃墟の地下室のようだった。わずかな日光が、天井のひび割れから差し込んでいた。
彼女の隣には、まだ幼いリルカが、怯えた様子で座り込んでいた。
リルカは、エセルが目覚めたのを見て、すぐにしがみついた。
「エセル…こわいよぉ…」
「大丈夫よ、リルカ。きっと誰かが助けに来てくれるわ」
エセルは、震えるリルカを抱きしめながら、自分自身を落ち着かせようとした。
彼女たちの手足は、粗末なロープで縛られていた。エセルの金髪と青い瞳は薄暗い地下でも際立ち、その貴族的な容姿は、場違いなほどの美しさを放っていた。
まもなく、彼らを攫った山賊の一人、顔に大きな傷跡のある男が入ってきた。
男は、エセルの容姿を上から下まで値踏みするように眺め、下卑た笑みを浮かべた。
「おい、運が良かったぜ。今回の獲物は上等だ」
男は次にリルカを見た。
「こっちの竜人のガキは、東の国のお貴族様からのご依頼品だ。」
リルカは、男の言葉を聞いてさらに震えた。
男は次にエセルを見た。彼の視線には、欲望の色が混じっていた。
「そして、そっちの金髪の姉ちゃん。ガキと違って依頼品じゃねえが、この顔なら高く売れるか、もしくは…」
男は言葉を濁し、下品に笑った。
「…どちらにしても、捨て札にはならねえ」
エセルは、自分が商品もしくは、慰み者として扱われることを理解し、恐怖で体が硬直した。
エセルは、山賊に怯えながらも、希望を捨てなかった。
(シオンは、きっと諦めないわ)
エセルのシオンに対する感情は、個人的な好意と、信頼になっていた。
そして、不意に、ノアの姿が脳裏をよぎった。
(あのノアさん、あの人なら助けてくれるかも知らない)
ノアの人並外れた強さと冷静な判断力は、エセルの心に、一種の希望を与えていた。彼女は、シオンの熱い心と、ノアの理知、その両方に救いを求めている自分に気がついていなかった。
エセルは、リルカを抱き寄せた。
「大丈夫よ、リルカ。私たち、必ずここから出られるわ」
山賊が彼女たちを商品として利用しようとしている間、村では、二人の男が異なる感情を抱えながら、彼女たちを追っていた。




