近づく
鱗月村でのエセルの日々は、治療院の手伝いと、ガルドやシオンとの薬草採取に費やされていた。
エセルは、シオンが村の生活物資を確保する重要な役割の一つを担っているが、隣村で差別され、わざと長く待たされた結果、深夜に村へ戻ってくることを知った。
そんな彼の献身的な強さに、感心した。
彼女の行動の主な動機は、シオンの手伝いをしたいという、個人的な関心だった。
ある日の昼下がり、シオンが交易から戻り、疲労困憊で座り込んでいるのをエセルが見つけた。
彼は、重い荷物を運んだせいで、肩がひどく腫れていた。
エセルは、アメティストからもらった軟膏を肩に塗った。
「痛くない?少し楽になるでしょう?」
「…ああ。あんた、優しいな」
エセルの顔が熱くなった。
彼女は、彼が自分を娼婦としてではなく、「優しい人間」として見てくれていることに、強い喜びを感じていた。
その夜、エセルは、山賊の噂を気にしていることをアメティストに伝えた。
「姉さん。シオンが、山賊に交易のルートを狙われているんじゃないかって心配しているみたい。」
アメティストは、その言葉を聞くと顔を曇らせた。
「エセル。山賊が薬草を狙っているのは事実よ。採取のときは、ガルドから離れないで。」
アメティストは、エセルの安全だけを考えていた。
あたかも、本物の姉妹のようだった。
エセルは、アメティストの厳重な注意を聞き、改めて山賊問題の深刻さを知ったが、その影に隠れる本当の危険を理解していない。
「わかった、気をつける」
エセルは、アメティストの忠告を守るという名目で、セシルとの時間を増やしていった。
彼女にとって、この行動は山賊対策ではなく、シオンを助ける手段だった。




