警戒
その日以降、エセルはシオンと薬草採取に出かけるようになった。
「あんた、俺といてなにがいいだ?」
エセルは微笑んだ。
「あなたは薬草の知識もあるでしょう?それに、三人の方が薬草採取は効率がいいでしょ!」
エセルの真っ直ぐな言葉に、シオンは根負けした。
数日後、三人は、薬草が多く自生する北側の森へ向かった。
ガルドは元傭兵のため、常に周囲を警戒していた。彼が妙に緊張している姿を見て、エセルは森に何か危険が潜んでいるのかと不安になった。
「兄さん、そんなに警戒して、何かいるの?」
エセルは尋ねた。
ガルドは視線だけで周囲を探りながら答えた。
「いなくても、いるつもりで動くのが俺の癖だ。それに、アメティストも言ってたろ?村の連中が、最近山賊の噂をしているってな。この辺の子供を狙ってるって話だ」
シオンは、険しい顔でガルドの言葉を肯定した。
「ああ。奴らはこの村の魔法の力を恐れて大勢では来ないが、薬草は高値で売れる。奴らは姿を隠して、常にこの村の弱点を窺っているらしい」
シオンの表情が更に険しくなる。
「ドラゴニアは高く売れる・・・・・・。」
エセルは、シオンとガルドの緊張感から、危機が迫っているという不確かな脅威を感じ取った。エセルは、薬草を摘みながらも、警戒を怠らないシオンの横顔を、じっと見つめた。
その日の夕方、家に帰ると、リルカがエセルを待っていた。
「エセル、明日、お山に行かない?あそこに、きれいなお花があるの!」
リルカは目を輝かせた。
エセルは、明日も薬草採取で森へ行くが、山賊の噂がある以上、リルカを危険な場所に連れて行くわけにはいかない。
アメティストがリルカに告げる。
「ごめんなさい、リルカ。明日はね、エセルは薬草を摘む大事な用事があるの。リルカは、お母さんのそばにいるか、村の近くで遊んでちょうだい」
リルカはしゅんとしたが、すぐに顔を上げ
「わかった!じゃあ、エセルが次に森に行くとき、リルカも連れてって!リルカ、魔法使えるから、お手伝いできるよ!」
と言った。
エセルは、リルカの無邪気な魔法への自信と、ドラゴニアの子供が持つ力を、改めて認識した。




