出会い
翌朝アメティストは、借りた家の裏に薬草を干すスペースを作り、早速自宅で治癒師として活動を始めた。
「私がここで働けば、村の事情にも詳しくなれるし、何より不審に思われないわ」
とアメティストは言った。
彼女は地味な村娘の服装に身を包んだが、その立ち姿や、彫刻のように完璧な美しさは隠しきれていなかった。ガルドは、治療院の用心棒兼薬草の採取係としてアメティストに付き添うことになった。
「今日からあなたは私の妹、ガルドは私の夫、いいわね。エセル」
アメティストは確認した。
「わかったわ、姉さん」
エセルは頷いた。
ガルドも快諾した。
「俺は兄さんか!よろしくな、エセル」
その日の午後、エセルは「兄さん」ことガルドと共に、村の外の森へと入った。
ガルドは、薬草の知識をエセルに教えながら、周囲を警戒していた。
「これを見ろ、エセル。傷の治りを早める草だ。この村じゃ、重宝されているぜ」
「なんでそんなに知ってるの?」
「まぁな、伊達に紫竜の番してねぇって事だな。やたら長く生きてきたし、生きてるだけじゃあ、あいつの力になれねぇからな。」
ガルドは陽気だが、アメティストに対する気持ちには真面目である様だった。
薬草を籠いっぱいに集め、村に戻る途中、二人は渓流の近くで二人の子供に出会った。
シオンは、よそ者のエセルとガルドを見ると、すぐに顔に警戒の色を浮かべた。
「……旅の人ですか?村の中で勝手に薬草を採らないでください」
青年は、よそよそしい口調で言った。
ガルドは、彼の警戒心を解くように、陽気に笑った。
「悪いな、坊主。俺たちは旅人じゃねえ。昨日、村長に挨拶して、この鱗月村に越してきたんだ。俺はガルド。こっちは俺の義理の妹のエセルだ」
エセルも会釈した。
二人は軽く挨拶をする。
一人は、エセルと年の近い人間の青年で、名はシオンといった。もう一人は、幼いドラゴニアの女の子、リルカだった。彼女は、顔や腕の皮膚がトカゲのように滑らかで、目の周りには濃い鱗の模様があり、ドラゴニアの血が濃いことを示していた。
「よろしくね」
「俺たちは、俺の妻、アメティストの手伝いで草を採ってる。あいつが治癒師でな、腕は確かだぜ」
ガルドは付け加えた。
シオンは彼らが移住者であることと、治癒師の身内であることに驚き、警戒を少し解いた。
しかし、リルカは違った。彼女は好奇心旺盛な目をして、エセルが持っている薬草の籠を指差した。
「おねえちゃん、それ、お薬?」
リルカは、エセルの足元に駆け寄った。
「おねえちゃんのお薬、竜人のお病気も治せる?」
と無邪気に尋ねてきた。
エセルは、籠の中の薬草を優しく見つめ、
「姉さんが作れば、きっと治せるわ」
と答えた。
ガルドは、静かにエセルの背中を押した。
「さあ、エセル。早く戻るぞ、薬草が乾いちまう」




