鱗月村
自分が思っていた話より逸脱してきました。
先は長いです。
三人は、さらに数日森の中を歩き続け、ついに鱗月村に到着した。
村は、東の国境に近く、岩山に囲まれた土地に広がっていた。住民の多くは、ドラゴニアの血を引いていた。彼らの外見は人間に近かったが、目元や肌に微かな鱗の模様を持つ者が多かった。尻尾はなく、ツノを持つ者は稀だった。人間とドラゴニアが混在して暮らしている場所だったが、村全体には、外界に対する張り詰めた警戒心のような空気が漂っていた。
村に入る直前、アメティストはフードの下で魔道具を使い、自身の角が人間には見えにくくなるように認識を歪ませた。
「私の角が、人間には見えにくくなるように認識を歪ませたわ。」
アメティストは、砕けた口調でエセルに囁いた。
三人は村の中心にある、最も大きな家に立ち寄った。村長宅だった。
村長は、目元に微かに鱗の模様が残る、鋭い目つきの中年男性だった。彼は、アメティストたちの訪問に、隠しきれない警戒心を抱いていた。
「すみません、村長。私たちは旅の者です。私はアメティスト、こっちは夫のガルド、そして妹のエセルです。長く旅をしてきましたので、落ち着いて生活したいと思い、こちらの鱗月村に参りました」
ガルドは陽気に頭を下げた。
「へへ、よろしく頼むぜ、村長さん。妻は治癒師だ、役に立つと思うぜ」
村長は、三人を正面から見据えた。彼の視線は、ガルドの立派な体躯と、ローブで隠されたアメティストの姿に、特に長く向けられた。
「…そうかい。こんな人里離れた辺境の村に、わざわざ定住したいとは。珍しいこともあるもんだ」
彼の声は穏やかだが、探るような響きがあった。
「ここは、見ての通り、ドラゴニアの多い村だ。外の世界では我々は迫害される。だからこそ、この村は外の人間に強く警戒している。あなた方の素性は、まさか、逃亡貴族とかなのか?」
アメティストは、すぐに答えた。
「いいえ。私たちはただ、静かに暮らしたいだけです。争いを持ち込むつもりは一切ありません。もし、村に迷惑をかけるようなことがあれば、すぐにこの村を出ていきます」
アメティストは続けた。
「静かに暮らせる家を紹介していただけないでしょうか。貯えならありますし。」
村長は、しばしの沈黙の後、ため息をついて言った。
「わかった。金銭を受け取る以上、拒否はしない。しかし、条件がある。この村で争いを起こすこと、余計な噂を広めることは厳禁だ。そして、もしあなたがたが何か問題を抱えているなら、その問題は村の外で解決してもらう」
村長は承諾し、村の端にある、小さな石造りの家を紹介してくれた。
「この村の住民は、みな静かな生活を望んでいる。家賃はこれで十分だ。生活の基盤を整えな」
家は質素だが、清潔だった。エセルは、窓から村の様子を眺めた。竜人の子供たちが、人間の子供たちと一緒に野原を走り回っている。
エセルは、アメティストとガルドに背を向けたまま、静かに口を開いた。
「明日から、何をすればいいの?」
アメティストは、すぐに答えた。
「まずは、この村のルールと人々の暮らしを知ることよ、エセル。」
三人は、旅の疲れを癒すため、その日は早めに休むこととした。
出来たら、しばらくは不定期に一日3〜5話程度更新していきます。実はお話のストックが100話を超えているので、訂正や加筆しながら更新します。




