2:真夜中を駆ける
満月も殊更美しくなる夜更けに騒ぎが起きた。小さな町の至る所から火の手が上がり、空を赤く染めた。
小さな街の中が慌ただしくなる。悲鳴や怒声に紛れて、金属の合わさる音や馬の嗎もきこえる。
「なに?騒がしい・・・・・・」
粗末な建物だから、至る所に隙間がありそこから細く煙がはいってくる。
ここも燃えていた。
エセルは思わず息を飲む。
娼婦であることは仕方がないと諦めたが、生きることまで諦めるつもりはなかった。
すぐに逃げ道を確保しようと辺りをうかがう。
格子窓の隙間からは街の至る所から火の手が上がり、金属のぶつかり合う音も聞こえる。
「なに?野盗?」
「エルグランドの兵が攻めてきたぞぉぉ!」
階下から叫ぶ声が聞こえる。隣国のエルグランドが攻めてきたらしい。兎に角逃げなくては、捕まれば殺されるか、奴隷にされてしまう。早く逃げなくては、部屋のドアを開けると煙が勢いよくエセルを襲う。
激しく咳き込み、ドアを閉める。
「なに、ここも燃えてるの?」
エセルは窓に走る。
古びた窓だ、もしかしたら格子も外れるかもしれない。とにかくエセルは格子を揺らし窓から逃げようと必死に揺らした。背中は段々と熱くジリジリと焼けてくる。火はすぐそこに来ている。
お願い!はやく、はやく!
エセルの願いが叶ったのか窓の格子が外れる。そこからまだ焼け落ちていない屋根を伝い、川の側まで行けば森へ逃げられるかもしれない。
考えている暇はなく、エセルは屋根の上を駆け出した。
色々と拙く、申し訳ありません。