不安
まだまだストックあるよ。
5年分ね。
ブックマークされてるの見ると気分上がりますね!
アメティストの妃教育を終え、夕餉もノクス抜きで済ませたエセルは、夜になり、ノクスの部屋の寝台に一人座っていた。
寝台はあまりにも大きく、隣の空間がひどく虚ろに感じられた。
(おかしいわ)
エセルは、昼間のアメティストの言葉を反芻していた。
• 「ノクス様は、生まれてから千年もの間、番に出会うことができませんでした」
• 「番は私たち竜にとって、力の安定装置であり、魂の器だからです」
• 「貴女様は、ノクス様を繋ぎ止め、王の力を制御する、唯一無二の**楔*なのです」
千年の孤独を抱え、やっと番を得たというのに、ノクスは泉で契りを結んだあの日以来、一度もエセルのを求めていない。
竜の王の支配欲は絶対的で、番を傍から離すことはありえないと教えられた。それなのに、個室は与えられ、夜は独り。
(私に飽きた? それとも、あの時のあれは、単なる力の解放で、番として認識されてないってこと?)
彼の行動が、自分を不要と感じているならという絶望的な決断に繋がっているなら、エセルの存在理由も、この聖域の平和も崩壊する。
いてもたってもいられなくなったエセルは、用意された寝間着のままで、静かに部屋の扉を開けた。
ノクスを探すため、エセルは、昼間は明るかった聖域の洞窟を、そっと彷徨い始めた。
天井の魔法の鉱石は、夜になると光量を落とし、洞窟全体は静かな青白い光に包まれていた。空間を満たすのは、遥か上から滴る水音と、自分の足音だけだった。
ノクスはどこにいるのだろうか。
「ノクス……」
微かに名を呼んでみたが、静寂な岩壁に吸い込まれるだけで、応えはない。
エセルは、昼間ノクスが神殿と呼んでいた、最も奥まった場所に向かった。
エセルが扉の前までたどり着いたとき、扉の隙間から、内部から漏れる僅かな、しかし圧倒的な熱量を感じた。それは泉で感じたノクスの力そのものだ。
(ここにいる……)
扉を開けるべきか、それともこのまま引き返すか。エセルはためらった。しかし、千年の孤独と番の不在という二つの重すぎる言葉が、彼女の足を動かした。
エセルは、意を決して重い石の扉に手をかけた――そのとき、静かに扉が開いた。
扉の向こうに立っていたのは、ノクスではなかった。彼らは、ノクスに村の探索を命じられていた、二体の番持ちの竜だった。
炎のような短い赤毛の青年、ヴァルカンと、長く優雅な金髪の青年、アイゼン。
彼らは、エセルが妃の寝間着姿で神殿の前に立っているのを見て、驚きを隠せない様子で立ち尽くしていた。
「エセル様……!?」
ヴァルカンが驚いて声を上げた。




