アメティスト
「こちらが、エセル様の個室でございます」
アメティストは優雅に会釈した。
エセルは室内を見渡し、その豪華さに内心驚きながらも、落ち着いた調子で言った。
「へぇ、王宮みたい。見たことはないけど」
「ノクス様は、貴女様をこの聖域の女主人としてお迎えしました。貴女様が不快に感じられるような環境は、一切許されません」
しかし、この豪華な部屋には寝台がなかった。
アメティストは、その視線に気づき、静かに説明した。
「お休みになる際は、隣のノクス様の部屋でお過ごしいただきます。これは、貴女様を守り、清められた状態を維持するための、王の絶対的な命令です」
エセルは、わずかに鼻を鳴らした。
「ふん。結局は監視ということね。」
それでも、彼女はその支配を静かに受け入れた。
エセルはアメティストと共に部屋に入り、絹の衣に着替えた。
「アメティスト。あなたは、ノクスと同じ竜なのね」
エセルは尋ねた。
「はい、エセル様。私は紫竜。番を得たことで人の姿を借りておりますが、まぎれもなく竜でございます」
アメティストは、優雅に髪を梳かしながら、語りかけた。
「貴女様が望まれた『人としての生活』を知りたいという願いは、とても尊いものです。私たちは、竜の力と、人間の心の双方を持つことが、この種族の存続に必要だと知っていますから」
エセルは、アメティストの言葉を真剣に聞いた。
「ノクス様が覚醒された今、間もなく、他の竜たちもこの洞窟内に居を移します。そして、ヴァルカンとアイゼン、そして私の番も、それぞれ近いうちにこの聖域に越してきます。私たちは、この洞窟で、家族として暮らすことになるのです」
アメティストは、自分の「番」について話すとき、その紫色の瞳に、愛情と誇りが宿った。
「私の番は、元は人間の傭兵でした。彼は人型をとった私よりもずっと大きく、熊みたいに体躯が立派で、お調子者ですが、私を誰よりも大切にしてくれます」
アメティストは微笑み、エセルを見つめた。
「彼は力で私を守り、私は癒しで彼を支えます。それが、私たち番の形。貴女様もノクス様と、貴女様だけの番の形を見つけることになるでしょう」
エセルは、アメティストの言葉の奥にある真実を理解した。
「分かったわ、アメティスト。」




