6話 始まり
男はその日を一生忘れないだろう...
「くっ、なんたる不覚っ!タスケテェeeeee」
男はそうしゃがれた声で叫ぶ。かれこれ男は2日この場所に閉じ込められているのだ。こうなった経緯を説明しよう。
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前話のすぐ後、男は買い物に出かけようとしていた。
「ささみがたりん!タンパク質不足はボディビルダーの天敵だ!」
そう言ってかわいいがま口袋に小銭を入れ男は近くのスーパーへと駆け出した。
「ん?何だあれは。マンホール..ではないよな。」
男は道路沿いに歩いていると、ちょうどマンホールくらいの大きさの穴が道路の真ん中に空いていることに気がついた。
中からはコゥコゥと風の音が聞こえ、見る限りでは漆黒の闇が広がっている。
「確か、自由落下?の方程式から穴の深さがわかるって聞いたことがあるな。」
男はそう呟いて穴にがま口袋に入っていた小銭を穴に投げ込んでみようとするが...
「ohhhhhhh..Nooooo!!!!」
男は不幸にもがま口袋ごと穴へ落としてしまった。
非常に理解に苦しむがすぐさま男は穴に飛び込んだ...
男は深く深く落ちていく。
「うわぁぁぁ」
男はしばらく落下の感触を感じた後全身から火が出るような激痛に襲われた。
「いってぇぇ..やれやれだぜ。」
自分から落ちておいてやれやれだぜではないのである。
「割と高いところから落ちたのに五体満足で助かったぜ。ステータス様様かもな。にしても何にも見えない。
スマホスマホ。」
男は手探りにスマホを探しライトをつける。
「何だここは..円柱型の部屋..なのか?」
周りは壁に覆われ出口はなさそうにない。
「幸い空気は通っているようだな。酸欠の心配はなさそうだ。」
男は呑気なことを言っているが絶体絶命である。
「たすけてくれぇぇーだれかー。誰かいませんかー。」
そう男は落ちてきた穴に向かって叫ぶが何も反応はない。そう。この穴周囲の一般人には見えていない特殊な穴だったのである。
Evolveに関連していることを男はまだしらない。
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時は戻り現在、男は満身創痍で藁にもすがる思いでEvolveのアプリを開く。
ーログー
隠しクエストを発見しました
S5 ワールドゲームを開催しよう
「なんだこれ...見慣れないことが書かれているが意味がわからん..開催つったって穴に落ちてるだけでどうにもならんぞ..」
男は最後のあてもはずれ、絶望した思いで無為な時間を過ごす。
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さらに1日後、突然スマホのタイマーが鳴り出した。
「ピピピピッピピピピッ」
「ワールドゲームがはじまるよ!勇者に選ばれた98025位くんは自分の血を次元の扉にそそいでね!」
そう男のスマホに映し出された。
「どっちみちこのままじゃ飢え死にだ..血をたらせば助かるんだな!?」
そう男は半ばやけくそになって人差し指を噛み地面に血を垂らした。
すると突然ごうっと大きな音が鳴り響いて男の地面がパラパラと崩れていく。
「うわっ!!なんだ、なんだってんだよぅ..」
男の真下から何か大きな竜のようなものがせりあがってくる。
「ッッッ」
男は息を飲んだ。瞬間とてつもない大きな光と衝撃に見舞われ男は気を失った..。