千吉良 弥 :4
よし、まだ一月だ。
いや、ほんと、遅くなってすみません。
しかも今回、いつもより短めです。
それから、主人公の名前を少し変えました。
ベアトリクス=クロノスタシス=フォレストフィールド
↓
ベアトリクス=クロノエル=フォレストフィールド
クロノスタシスがなんなのか知って、ちょっとダサいなと。
時計の針が止まって見える現象のことだったんですねぇ。
カチャ
トポトポトポ
スー
素人目にも、惚れ惚れするような手慣れた動作で入れられた紅茶が、こちらに差し出される。
入れたのは、もちろんベアトリクス。
場所は、上空でも最初に目覚めた部屋でもなく、パーティーでも開けそうな、小さめのホールのような縦にも横にも広い大きな部屋。
そこにいくつか置かれているテーブルの一つ、二人用の円卓で、向かい合って座っている。
あの後、非現実的な出来事の連続と、信じがたい──というよりは信じたくない言葉に固まっていた俺にベアトリクスは
「とりあえず、茶でも飲むか」
と一人言なのか俺に言ったのか判断がつかないことを言い、さっきと同様に一瞬にして場所を移した。
そして気づいたら、円卓で向かい合うように座っていた。というか座らせられていた。それからベアトリクスが、どこから出したのかそれとも最初から置いてあったのか分からないが、何か高そうなティーセットで茶をいれ始め、今に至る。
「あ、ありがとう。」
とりあえず礼を言って、紅茶を受けとる。
だがどうしたものか。紅茶なんて自販機の午後ティーぐらいしか飲んだことない。ましてこんな高そうなティーカップなんて、触るのすら初めてだ。もっと言えば、こういうお茶会のマナーなんて俺はまったくと言って良いほど知らない。知ってるのはせいぜい、カップの柄の穴に指を突っ込むのが失礼だってことを、何かの漫画で読んだくらい。
「そう緊張せずとも、肩の力を抜け。別にマナーがどうの言う言うつもりもない。それにこれら茶器は、全て私の手作りだ。壊れたところで、また作ればよい。」
「え」
手作り!?これが?!
貴族のお嬢様がお茶会とかで使ってそうなイメージしかわかないこのカップが?
思わず、視線をベアトリクスとカップの間で何度も往復させてしまう。
勝手な偏見かもしれないが、こういうのはがたいのいい、ザ・職人て感じのおっさんが作ってるもんだと思ってた。
こんな見るからに華奢な、それもどう見ても中学生ぐらいにしか見えない女の子に作れるもんだとは思ってもみなかった。
「そんなに不思議なことでもない。長く生きていれば、手慰みに色々経験することもある。その茶器とて、似たようなものをいくつも作ったことがある。」
「…」
いったいベアトリクス…いや、ベアトリクスさんは何歳なんだろう。耳が長いってことは、たぶんエルフ的な人種だと思う。
エルフの寿命が何年とかは、ファンタジー作品でもけっこうばらつきがある。二百年くらいの作品もあれば、千年を越える場合もある。
この世界のエルフが何歳まで生きるのか知らないが、それこそひいばあちゃんより年上の可能性もある。
少なくとも、俺より年上なのはほぼ確定と思っておこう。
俺より年下にしか見えないが。
…ロリばばあ?
「今何か失礼なこと考えていなかったか?」
…こちらを軽く睨みながらそう言ったベアトリクスに、ちょっとヒヤッとした。これが殺気というやつなんだろうか。
そんなことより、話をそらした方がいいな。
「ところで、これから俺達は何をすれば良いんですか?」
「話のそらしかたが露骨すぎるぞ。まあいい。タイミングもちょうどいいしな。」
「え?」
俺が疑問の声を上げると同時に、この大きな部屋のいくつかある扉の一つが開き、二人の人物が入ってきた。。
「千吉良君?と、だれ?」
「…」
「先生!委員長!」
それは俺らのクラス2年3組の担任、桜町先生と、委員長である榊さんだった。
「さて、貴女がたが異界の勇者のまとめ役であっているかな?私はベアトリクス=クロノエル=フォレストフィールド。この邸の主で、まあ、この世界ではそこそこ名の知れたエルフだ。」
「え、え?異界の勇者?エルフ?えーと、ベアトリクスちゃん?でいいのかな?私はこの子達の担任の、桜町 玲羅です。」
「…榊 麗」
「それでは名乗りあったところで、話をしようか。とても大事な話だ。君達のこれからを決定付けると言っても過言ではない程に、な。」
次は、一週間以内に書けると思います。