千吉良 弥 :3
ほんとにすいません!
遅くなりました!
なんか、いっきにファンタジーワードが増えた。
ぶっちゃけ、言ってることの半分も理解できたか怪しいが、今それはおいておこう。
とにかく、クラスメイトも来ているらしい。クラスメイトには悪いが、一人じゃないことが分かって、少し気が楽になった。
「どうした、お前以外殺されているとでも思ったか?」
「え」
さっきから思ってたけど、なにこの子。恐っ。
さらっと物騒なこと言うんだよなぁ。これも中二病のせいなのか?中二病の子って、なんか壮大な設定考えるの得意そうだし。
けれどもし、この子が中二病でもコスプレイヤーでもなく、“本物”だとしたら?この子が言っているのが、単なる妄想ではなく、事実だとしたら?
今まで、できるだけ無視しようとしていたソレ──光の板に目を向ける。
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計測結果
戦力値:527002151451296717
(計測精度87.9%)
魔力値:778965451243319
(計測精度89.8%)
体力値:348629
(計測精度92.1%)
術位:SS
(計測精度45.2%)
武位:A
(計測精度62.1%)
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さっきからずっと視界にチラチラしていて、すごく気が散るんだ。蛍光色で、目がチカチカするし。半透明なら目立たないとでも思ってんのか?
だいたいなんなんだよこれは。こいつのせいで俺は、その可能性を捨て去ることができない。
必死に、ここは
今のところ、非現実的な物事はこれしかない。だから、これがどういう物か分かれば…
「おい。どこを見ている。」
「あ、ごめん。」
そう声をかけられハッと顔を上げると、目の前にはビスクドール…おっと間違えた。美少女ちゃんがいた。いつのまにやら近づいてきてたようで、覗きこむように俺の顔を見つめていた。
どうやら、俺が光の板を見ているのを不思議に思ったようだ。
少しの間とはいえ無視した形になってしまった。ちょっと悪いことしたな。
それにしてもやはり、これは俺にしか見えていないのだろう。それを喜んで良いのかは、分からないけどな。
そういえば俺、この美少女ちゃんの名前知らないな。
「あのさ」
「ん?」
「名前聞いていい?」
「なぜ?」
「え、だって知らないし…」
「は?冗談だろ?お前は刺客のくせに、ターゲットの名前も知らないのか?それでどう殺すなり奪うなりするつもりだったんだ。」
「いや、殺すとか奪うとかそんな物騒なこと、やるわけないじゃん。」
「!嘘をついていない、だと…」
「?そうだけど」
普通そこは嘘をつくなとかじゃないの?
何?目を見れば分かるってやつ?
「…おい、いくつか質問に答えろ。」
「あ、はい。」
「まず一つ目。どうやってここに来た。」
「えーと、教室にいたら、いきなり光に包まれて、目が覚めたらベッドで寝てた。」
「では二つ目。『ベアトリクス=クロノエル=フォレストフィールド』この名に聞き覚えは?」
「いや、ないです。」
「では最後の質問だ。お前は魔術や魔法が存在すると思うか?」
「思わないかな。」
「そうか。」
こんな質問に何の意味が?
そう思っていると、美少女ちゃんがその手に持つ大きな杖で、床をコンと叩いた。その瞬間、周囲の景色が一変した。
天井も、壁も、床さえも消失。
上は晴れ渡った青空、下は地平線まで続く広大な森。横には自分とほぼ同じ高さに雲が見える。
そこははるか上空。感じる浮遊感、肌に感じる風。
足場は…ない。
「お、落ちっ「落ちることはない。」…え。」
美少女ちゃんにそう言われると、不思議と焦りが消え、落ち着いて状況を把握することができた。
確かに、落ちていない。何かに足を着けている感じはなく、いくら足を動かそうとも何にもぶつからない。しかし、高いところから飛び降りた時のような、強烈な浮遊感や風は感じない。
水に浮いているような優しい包み込むような浮遊感。肌を撫でるそよ風。変わらない風景。
どうやらよく分からない力で、空中に浮いているらしい。
「これが魔術だ。」
足下ばかり気にして美少女ちゃんから目を離していた俺は、その声に顔を上げると同時に、ギョッとした。
俺から少し離れたところに浮いていた美少女ちゃんの様子が一変していたからだ。
白銀のオーラを身に纏った少女の周囲を、色とりどりの光の玉が明滅を繰返しながら飛び交い、背後には大小様々な金色の魔方陣が時計の歯車のように絡み合いながら緩やかに回転している。
「我が名はベアトリクス=クロノエル=フォレストフィールド。真理を追い求める大賢者にして大魔導師。そして、時を司る最強の魔法使いだ。」
俺は、ただただその光景と、美少女ちゃん──ベアトリクスの言葉に圧倒されていた。
白銀のオーラは語る。その存在が人間の理解の及ばない、次元の違う何かであると。
声は告げる。その言葉は全て真実である、魂に刻みこめと。
その声で紡がれた言葉は、するりと頭に響きわたり、その意味を強制的に理解させられ、その言葉が真実であると確信してしまう。
だからこそ、最後の言葉に驚愕した。
「歓迎もよろしくするつもりも無いが、宿ぐらいは貸そう。異界の勇者よ。」
「…は!?」