表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

ベアトリクス

 私の名前はベアトリクス。ハイエルフだ。

 今はこの森で、スローライフを満喫してる。趣味は真理の究明だな。

 まあお察しの人もいると思うが、私は俗に転生者と呼ばれるものだ。前世のことは、完璧と言っていいぐらい覚えている。

 私の前世である『俺』の名前は八木(やぎ)拓実(たくや)。地球という惑星の、日本という国に住む、ごく普通の男子高校生だったよ。

 代り映えのしない、日常をおくっていた『俺』はある日、上から落ちてきた鉄骨の下敷きになって死んだ。しかも即死じゃなかったから、痛いのなんのって。あのときの、だんだん体が冷えていく感覚は、今でも忘れない。

 で、気が付いたら、不思議な白い空間にいたわけよ。

 そこにはパソコンが1台あるだけで、他にはなんもないの。

 そしてそのパソコンのディスプレイには、こんなことが表示されてあったんだ。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【転生特典を選んでください〔28:52〕】


 特殊能力

 [][][]


 固有魔法

 []


 ____________________


 しかも、横のタイマーみたいなのが、一秒ずつ減ってんの。けっこう焦ったね。

 だから、急いでマウスを掴んでクリックしたよ。

 それから色々見てるうちに、わりとすぐに落ち着くことができた。

 なんというかこう、ワクワクしてきたんだ。

 なんせ俺も健全な男子高校生だ。異世界転生というものに憧れを抱いたことも、一度や二度じゃない。

 しかもだ。このパソコンのディスプレイを色々操作していたら、色々わかってきた。

 それによると、どうやらこのパソコン樣は、俺にチートを四つもくれるらしい。

 まず、特殊能力を三つ。そして固有魔法を一つだ。

 しかも、選べる選択肢がすごい。

 特殊能力なら、『能力強奪』『変幻自在』『魔力無限』『超筋力強化』『不老不死』『絶対切断』…etc.

 固有魔法『創造』『破壊』『改造』『運命』『深淵』『神聖』…etc.

 こんなのが、合わせて3桁近くあった。もちろんすごく迷った。

 どれもこれも、ものすごいチートなんだもん。まあ一部そうでも無さそうなのや、名前からじゃどんなチートなのか、よくわからないものもあったけど。

 それでも、ほとんどが分かりやすく強力だった。

 あれも良いこれも良い。

 そんな風に悩んで悩んで、ふとタイマーを見たら…〔00:17〕

 ヤバイ!って、かつて無い程焦った。遠足の日に寝坊した時も、ここまで焦らなかったかもしれない。

 そんな焦りから俺は、適当にスクロールして、適当にクリックして決定してしまった。

 その結果がこれだ。



  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【転生特典を選んでください〔00:08〕】


 特殊能力

 [分析演算][超神秘体強化回復][完全記憶]


 固有魔法

 [時]


 ____________________



 やっちまった。見た瞬間そう思った。『分析演算』と『完全記憶』はまだ良い。。あんまり良くはないけど、『超神秘体強化回復』よりはましだ。なんせ効果が分かりやすい。だが『超神秘体強化回復』はダメだ。そもそも神秘体って何?それを超強化回復?それにどんな意味があるの?まったくもって、効果の想像がつかない。

 それから固有魔法の『時』。これもちょっともったいないと思った。なぜなら他にも『時空』や『次元』みたいな、時も操れそうな固有魔法はあったし、なんなら『支配』なんてのもあった。

 悪くはないけど、他のに比べるとちょっと…て感じ。

 だから俺は、せめて超神秘体強化回復だけでも修正しようとしたけど、間に合わなかった。

 パソコンの画面では



  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【Time UP!】


 特殊能力

 [分析演算][超神秘体強化回復][完全記憶]


 固有魔法

 [時]


 ____________________


 と、表示されていて、俺は、突如足元に生じた穴に落ちていった。もうちょっと何か、演出とかあっても良かったと思うんだけど。


 で、気がつくと、エルフの赤ちゃんになってたってわけ。しかも女の子。最初は愕然としたね。けどまあすぐに、特に不都合は無さそうということに気づいて、割りきることができた。割りきれたら、案外すぐに慣れた。

 そうなったら、これからの(エルフ)生についてよく考えるようになった。

 考えて考えて、まず思ったのは鍛えることだった。

 肉体のこともそうだけど、この世界特有の謎パワー、魔力とかの単純な基礎能力。

 そして生きる上で役に立つ技術。料理洗濯なんかの家事はもちろん、剣術なんかの身を守るための技術も。それから、魔術や魔法なんかの、摩可不思議な技術もそう。

 そんな感じに、私はとにかく頑張った。生まれ変わって性格でも変わったのか、努力するということが、それほど苦じゃなかったのも良かった。

 しかも私はチート能力のおかげで、記憶力や分析能力が馬鹿みたいに高かった。おかげで天才や神童なんて呼ばれ方をしたよ。

 それでも私は、調子にのることはほとんど無かった。なぜかって?

 覚えてるからだよ、前世のことを。

 調子にのって失敗した、自分自身の経験。創作の世界で、破滅していったキャラクター。ちょっとでも調子にのるたびに、そういった事柄が頭を過るんだ。そりゃあ自戒するようにもなる。『完全記憶』には、ほんと感謝だ。


 そうやって、地道に力をつけていった私は、成人するころには、あらゆる面で他者より秀でた力を持っていた。

 それから冒険者というファンタジーでありがちな職についた私は、高難易度な依頼をいくつも成功させ、史上最短で最高ランク冒険者の称号を手にいれた。

 その過程で、様々な経験をした。新たな師や友人との出会いに、幼馴染との死別。小国ながら、国を一つ救ったこともあったし、私の力を手にいれようとしてきた、大国の国王を殺したこともあった。覚醒して、ハイエルフへとこの身を変異させたりもした。

 ただ、頂点に至ることで、めんどうなことも増えた。私に取り入ろうとしてくるもの、利用しようとしてくるもの。そういったもの達が、頂点に至る前より格段に増えた。

 そうして、人付き合いが煩わしくなった私は、両親が寿命を迎え、親しい知人達が軒並み彼の世へ旅立つと、この森の奥地に引きこもることにした。


 今ではほとんど森の外に出ることもなく、一人魔術の開発や、錬金術による新たな物質の創造などを行っている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] つまり一周回って引きこもりに……( ˘ω˘ )
[一言] 即ブックマークさせていただきました。 応援しています!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ