表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

プロローグ

 大陸の中央に存在する、鬱蒼と繁る広大な森。

 上から地表の様子は、木々に覆い隠され伺い知ることはできず、下からも空の青どころか、太陽の光すら遮られ目にすることは叶わない。

 しかし一ヵ所だけ。そこだけ切り取られたかのごとく、木々が存在しない広場がある。

 その広場と森の境の一点には木造の家、というよりは屋敷とでも呼ぶ方が相応しいであろう、立派な建築物が建っている。

 その屋敷の近くには農園が広がり、一部の果物などは収穫時期を迎えたのか、みずみずしいその果実をぶら下げている。


「ふあぁぁ」


 遠くの山脈から、太陽が顔を覗かせようと空が白み始めたころ。屋敷の玄関から、眠そうに目をこすりながら、少女が出てくる。

 少女の若草色の御髪から見え隠れするその耳は、長く、先が尖っている。その特徴的な耳から、少女がエルフと呼ばれる種族に連なる者であることがわかる。もしかすると多種族との混血かもしれないが、それは置いておこう。

 少女はエルフという種に恥じぬ、それどころか並いるエルフを軽く凌駕する美貌を備えており、群青の瞳は宝石のごとき煌めいて、まるでよくできた人形のようだ。胸は控えめだが、スラリとしたモデルのような均整のとれた体は、白磁の肌と相まって精巧な彫像のようにも感じさせる。


「んー。ふんふん。うん、今日も水やりと草抜きで大丈夫そう。」


 少女は農園の植物を一通り眺めた後、そう呟く。

 そして少女がおもむろに手を地に付くと、周りの土にポコポコといくつかの盛り上がりができ、やがてそれぞれが数秒程で土人形になる。


「よーし、じゃあみんな、今日も草抜き頼むぞ~。私は水やりするからな。」


 少女のその掛け声とともに土人形達は農園に散らばり、それぞれ草を抜き始める。

 その間に少女は、掌に青白く光り輝く幾何学模様を出すと、そこから水流を生じさせる。少女の掌から生じた水は、農園に植えられているそれぞれの植物の元に適量ずつ送られ、その土を潤した。


「よし。今日も完璧。」


 満足気な顔で頷く少女。どうやら日課をいつものごとく達成できご満悦らしい。


「さて、今日はもう一眠りするかな。昨日けっこう夜遅くまで起きてたし。今日は早めに切り上げて寝るようにしないと。」


 そう呟きながら少女が玄関に手をかけた瞬間…



 ドゴーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!



 広場のちょうど真ん中。そこから轟音が響きわたり、辺りを衝撃波が襲う。


「な、なんだ!?」


 少女は驚いたものの、轟音と衝撃波に怯むことなく、砂塵立ちこめる広場の中央へと駆け出していた。

 少女が手を振ると砂塵は風に吹き飛ばされ、その惨状を露にする。

 そこには大きなクレーターができていた。直径50メートルはあるそのクレーターの底を見れば、そこにはなんと人が倒れていた。それも一人や二人ではない。ざっと三十人程。しかも、倒れているのはほとんどが十六、七の少年少女達。全員黒髪で、来ている服は男女別にそれぞれ同じデザインのもの。一人だけいる大人の女性の物も含めて、この世界にはまだ存在していない材質でできている。この世界で生まれ育った者なら、誰も見たことが無いであろう物だ。


「っ!これは、まさか。」


 いや、例外が一人。

 クレーターの底に下りた少女は、この世界に存在しないはずのそれらに見覚えがあるようで、酷く動揺していた。


「おいおい、ちょっと待てよ。いやいやまさかそんなわけ。」


 倒れている人物達の服を凝視していた少女は、やがて何かに気づき、フラフラと一番近くにいた人物の元に歩み寄る。それは一人だけ成人している、大人の女性だった。そしてその女性のそばにしゃがみこむと、その女性の顔を確認する。


「桜町、先生」


 やがて絞り出すように、その女性の名前を呟いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ