予算
遅くなりすみません。
「それについて、私から説明させていただきます」
1組の実行委員の1人が席を立つ。
「……では、お願いします。市川さん……」
それに谷川は、一瞬驚いたような素振りを見せたが、すぐに元の表情に戻り、続きを促した。
こっちとしても驚いた。
まさかこんな感じで目立つようなことはしないだろう、と勝手に思っていたから。
まぁ、そもそも、まともに話したこともないのにそう考えること自体おかしいか。
「ありがとうございます。では説明させていただきます。まず、今回提出した予算案の大きな変更の理由としましては、クラスで話し合った結果、クラス案が大きく変わったからです。この事に関しては問題ありませんよね?」
説明を始めた市川さんに問われた谷川ら主要メンバーは書類を確認し始める。
「えぇ、はい。問題ありません」
目当ての書類が見つかったのか、回し読みし始めている。
「その結果、予算も大きく組み直す必要性が生じたため、念には念をいれてのことでこちらの予算になった次第です」
その説明に多くの人は納得させられた。
確かに、その理由なら予算を多く組んでおくことに損はないだろうしな。
とはいっても。
「確かにそれなら合理的ですが、今わざわざ組み込むこともないのでは? 予算が準備をしていたら足りなくなった、こういう事例はよくあるらしく、足りなくなった場合は担任に申し出さえすれば、よっぽどのことがない限り追加できるらしいですよ」
谷川がそれを承認することはないだろう。
ここで認めてしまえば、次から他クラスとの被りがなければ、やりたいものを、自由にできて、さらには予算まで追加される。
そんな前例は作りたくはないだろうし。
そこまで考えてるかは謎だが。
……えぇ、はい、俺が考えすぎなだけですね。
そんな不毛なことを考えてる間にも話し合いは進む。
「確かに、最初に渡された資料にはそう書いてありました。ですが、それは増額分の金額が小さかったらの話。こちらは大きくなる前提で話しているのです」
「そこの増額分が増える前提なのがおかしいと思うのですが。できる限りの無駄を減らしてかかる金額を抑えられないのですか?」
「そういった『無駄』がどれだけあるのか、どれだけ減らせるのか、こちらも分からないのです。こちらはクラス案を変えたのですから、しょうがないでしょう?」
「だったら買えなければよかった話では? このようなことになるのは容易に考えられたとは思いますが」
「ですが、規約的には一昨日までならクラス案を変えてもいい、そうなっているはずですが。規約を守った上で行動を行っているのに、どうしてそういった考えになるのでしょうか?」
「確かに規約上はそうなっていますが、その規約の注釈として、
『変更案の金額は変更前の金額を踏襲するように』と書いてありますが? まさか、読んでない、なんてことはありませんよね?」
え、なにこれ。
なにこの討論。
なんで規約なんて覚えてんだよ。
そこまで詳しく見て、さらには覚えてるとか。
俺なんて普通に間違ってたら担任が訂正してくれるでしょ、とか注意が入るでしょ、とかそんぐらいにしか考えてなかったぞ。
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