会議
遅くなり、すみません。
「おはようござます、会長。それと、はい、これ」
挨拶とともに渡したのはプリントの束。
「お、おはよう。……これは?」
俺に挨拶を返しながら会長は聞いてくる。
「先週の仕事です。確認お願いします」
そう言うと会長は一瞬、顔を右斜め前、こちらから見ると、左前を向いて考え、すぐに、「あっ」と声を出した。
「え、早くない? 昼休みに受け取ろうとしてたんだけど」
そうは言うが、昼休みに渡して昨日みたいになったら面倒、とは言わない。
それ言ったら確実にめんどくさくなる。
なので、
「あぁ、まぁそうなんですけど、昼に渡すとなると俺が忘れて、出すのに時間かかっちゃうかもしれないので」
と、『俺が』の部分を強調して言う。
そうすれば、あくまでこちらに非がある、みたいな感じになるだろう。知らんけど。
「お、そうか。まぁ、確認しとく。今日もよろしくな」
どうやら、問題はないようだ。
あれ、今確認しないの?
ま、いっか。
「はい、よろしくお願いします」
そう言って、俺は席に戻る。
ギシッ。
椅子から漏れでたその音は、俺と会長以外、誰もいない会議室に響いた。
集合時刻40分前。
さすがに早く来すぎですね、まる。
その後、何事もなく、ただ待ってい……られる訳もなく、
「永山君、暇」
という会長の声が会議室に響いた。
「そうですね」
「なんか面白い話無い?」
出た、振られて一番困る話題ナンバーワン。
この話題が出たら最後、よっぽどのコミュ力がないと爆死する。
「そう言う会長は無いんですか?」
無難な回答をする。
「あったらこの場を埋めるために話してるよ」
「それもそうですね」
「あー、暇」
そこで俺は名案を閃いた。
「じゃあ、作ればいいじゃないですか」
「は?」
「暇を潰す方法です」
「ん? なにかあるの?」
その会長の質問に俺は自信を持って、
「はい」
と、答える。
「んじゃ、聞かせて」
「では、まずノートと教科書を……」
「それできたら暇じゃないでしょ、君」
「……」
まだ、ほとんどなにも言ってないんだけどなぁ……。
まぁ、言いたいことは分かるだろう。
しかし、痛いところを突かれた。
ぐうの音も出ない。
「じゃあ、もうなにもないです」
「じゃあって、なによ。じゃあって。接続語の使い方分かる?」
「日常生活では使えませんけど、テストなら使えます」
「それ、使えてるって言うの?」
「さぁ?」
「ま、いっか。私には関係ないし」
うわぁ、正論だけどなんかひでぇ。
ふと、気になって時計を見る。
現在時刻は9時40分。
集合時刻20分前だ。
「そろそろ人が来はじめますかね」
「あー、言われてみれば」
会長も一度時計を見、机の上を片付け始めた。
「手伝いますか?」
やることもないのでそう聞いてみる。
「いや、大丈夫大丈夫。1人で、あっ」
会長はそう言う端から、プリントの束を床に散らばしてしまう。
「はぁ、手伝いますよ」
言いながらプリントを集める。
「ごめん、悪いな」
しゅん、となる会長。
これはこれでありだが。
……俺はなにを言ってるんだ。
心のなかでのやり取りに気を取られ、言いたいことが早口になる。
「や、やらない善よりやる偽善ですから」
あと噛んだ。
「いい言葉だね」
が、会長は気にしない。
「ありがとうございます。ま、どっかの受け売りですが」
「そうなのか?」
「はい。まぁ、どこで目にしたのか、耳に入ったのかは覚えてませんけどね」
「そうなのか……」
そこで会長は言葉を一旦切り、
「でも、その言葉が君にとってはしっくり来たんじゃない? だから、覚えてる」
と、言った。
「そうかも、しれないですね……」
その言葉もまた、しっくり来た。
恐らく、忘れることはないだろう。
「それではー、会議を始めます」
時間は10時きっかり。
さすが、と言うべきか。
実行委員に立候補しただけはある。
全員が定刻の5分前には集合。
……どこから目線だこのコメント。
とりあえず、会議に集中しよ。
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