表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/71

会議

遅くなり、すみません。

「おはようござます、会長。それと、はい、これ」 


 挨拶とともに渡したのはプリントの束。


「お、おはよう。……これは?」


 俺に挨拶を返しながら会長は聞いてくる。


「先週の仕事です。確認お願いします」


 そう言うと会長は一瞬、顔を右斜め前、こちらから見ると、左前を向いて考え、すぐに、「あっ」と声を出した。


「え、早くない? 昼休みに受け取ろうとしてたんだけど」


 そうは言うが、昼休みに渡して昨日みたいになったら面倒、とは言わない。

 それ言ったら確実にめんどくさくなる。


 なので、


「あぁ、まぁそうなんですけど、昼に渡すとなると俺が忘れて、出すのに時間かかっちゃうかもしれないので」


 と、『俺が』の部分を強調して言う。

 そうすれば、あくまでこちらに非がある、みたいな感じになるだろう。知らんけど。


「お、そうか。まぁ、確認しとく。今日もよろしくな」 


 どうやら、問題はないようだ。

 あれ、今確認しないの? 

 ま、いっか。


「はい、よろしくお願いします」


 そう言って、俺は席に戻る。


 ギシッ。


 椅子から漏れでたその音は、俺と会長以外、誰もいない会議室に響いた。


 集合時刻40分前。

 さすがに早く来すぎですね、まる。


 


 その後、何事もなく、ただ待ってい……られる訳もなく、


「永山君、暇」


 という会長の声が会議室に響いた。


「そうですね」

「なんか面白い話無い?」


 出た、振られて一番困る話題ナンバーワン。

 この話題が出たら最後、よっぽどのコミュ力がないと爆死する。


「そう言う会長は無いんですか?」


 無難な回答をする。


「あったらこの場を埋めるために話してるよ」

「それもそうですね」

「あー、暇」


 そこで俺は名案を閃いた。


「じゃあ、作ればいいじゃないですか」

「は?」

「暇を潰す方法です」

「ん? なにかあるの?」


 その会長の質問に俺は自信を持って、


「はい」


 と、答える。


「んじゃ、聞かせて」

「では、まずノートと教科書を……」

「それできたら暇じゃないでしょ、君」

「……」 


 まだ、ほとんどなにも言ってないんだけどなぁ……。

 まぁ、言いたいことは分かるだろう。 

 しかし、痛いところを突かれた。

 ぐうの音も出ない。


「じゃあ、もうなにもないです」

「じゃあって、なによ。じゃあって。接続語の使い方分かる?」

「日常生活では使えませんけど、テストなら使えます」

「それ、使えてるって言うの?」

「さぁ?」

「ま、いっか。私には関係ないし」


 うわぁ、正論だけどなんかひでぇ。

 ふと、気になって時計を見る。

 現在時刻は9時40分。

 集合時刻20分前だ。


「そろそろ人が来はじめますかね」

「あー、言われてみれば」


 会長も一度時計を見、机の上を片付け始めた。


「手伝いますか?」


 やることもないのでそう聞いてみる。


「いや、大丈夫大丈夫。1人で、あっ」


 会長はそう言う端から、プリントの束を床に散らばしてしまう。


「はぁ、手伝いますよ」


 言いながらプリントを集める。


「ごめん、悪いな」


 しゅん、となる会長。

 これはこれでありだが。


 ……俺はなにを言ってるんだ。


 心のなかでのやり取りに気を取られ、言いたいことが早口になる。


「や、やらない善よりやる偽善ですから」


 あと噛んだ。


「いい言葉だね」


 が、会長は気にしない。


「ありがとうございます。ま、どっかの受け売りですが」

「そうなのか?」

「はい。まぁ、どこで目にしたのか、耳に入ったのかは覚えてませんけどね」

「そうなのか……」


 そこで会長は言葉を一旦切り、


「でも、その言葉が君にとってはしっくり来たんじゃない? だから、覚えてる」


 と、言った。


「そうかも、しれないですね……」


 その言葉もまた、しっくり来た。

 恐らく、忘れることはないだろう。


 


「それではー、会議を始めます」


 時間は10時きっかり。

 さすが、と言うべきか。

 実行委員に立候補しただけはある。

 全員が定刻の5分前には集合。


 ……どこから目線だこのコメント。


 とりあえず、会議に集中しよ。

読んでくださり、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマーク、評価のほどよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ