帰り
遅くなり、すいません。
「で、何しに来た?」
「普通につけてた」
「『普通に』ってなんだ、『普通に』って……」
さすがに『普通に』と言われるとは思わねえわ。
「……じゃあ、なんでつけてきた?」
気を取り直して。
これが一番大事だろう。
まあ、大体分かるけどさぁ……。
「え、あんたたちがちゃんと『デート』してるか観るために決まったんじゃん」
ですよねぇ。
「『デート』じゃねぇわ。てか、「みる」の漢字が違う気がするが?」
「なにそれ。つか、これが『デート』じゃないならなんなの?」
「いや、俺の思う『みる』は見るなんだが、お前の『みる』は観るな気がして」
「それ、どうでもよくない?」
「俺も思った」
「で、」
鈴はそこで一旦言葉を切り、もう一度問いかけてきた。
「『デート』じゃないなら、それはなんなの?」
「俺が聞きてぇよ……。なぁ、香野。これはなんなんだ?」
「うーん……」
俺の問いかけに香野は、簡潔に、こう答えた。
「デート、じゃない?」
恥ずかしながらも。
いや、デートなのかよ……。
「ほらあっ! 私の言った通りじゃん!」
「あー、分かった分かった。だから、静まれ。な?」
「その上から目線めっちゃ腹立つんですけどー」
「つーか、これデートだったのか?」
「私的には……」
「そ、そうか……」
「うん……」
て、ことは。
「……それなら、デート、だな」
「うん……!」
こうゆうことだろ。
「ねー、私たち、そろそろ帰らない?」
「うん。もう、しっかり観れたしね」
「んじゃ」
「また」
「では」
そうして、鈴、隼、須藤は仲良く、帰路に着いたとさ。
「じゃ、続き、観て回るか」
「うん、そだねー」
観て回る、つっても、デートと認識したら、緊張するんだよなあ。
「いやー、これからどう進むか、見物だね~」
「そうだね」
「ま、須藤ちゃんにもまだチャンスは腐るほどあるだろうし。ね、須藤ちゃん?」
「……たし……って」
「ん?」
「私、だって……!」
そこには、対抗心に燃えている、1人の女の子がいた。
「いやー、疲れたな~」
「ほんとほんと。足、パンパン」
「どんくらい歩いたんだろ」
「3キロぐらい?」
「意外と短けぇ」
「そうだね」
「ほんと、短かった……」
「ほんと、短かった、ね……」
それは、距離ではなく、万人に等しく与えられたもの。
万人が、同じだけ進むもの。
誰かと、ずれたりすることのないもの。
きっと、同じことを考えている。
そう考えると、不思議と笑いが込み上げてくる。
「くくっ……」
「えっ、なに?」
「いや……くくっ……。俺たちって、今、同じこと考えてたんだろうなぁって思ってさ。可笑しくなって」
「あー。そうゆうこと。……クスッ」
「な?」
「うん、ほんと、可笑しいね?」
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