背後
……失念していた。
前、雪の化粧品を買いに行った時に身をもって体験したはずだ。
女子用のものはなにかと高いと。
それさえ覚えておけば今回だって気付けたはずだ。
(くそー)
今、財布に入っているのは20000円。
そして、ぬいぐるみの値段は1個6000円。
合計で12000円、プラス税。
(財布の中身が吹っ飛んだ……)
少し大きいサイズのぬいぐるみってこんなすんのか?
まあ、最悪金をおろしてくればいいだけなのだが。
(ま、これで香野が喜んでくれるのなら、安い買い物だろう)
そう考えて、レジに持っていく。
「13200円になります」
「はい」
俺がお金を用意している間に、店員はぬいぐるみを袋に入れている。
「10000と200円、ですから3000円のお返しになります。ありがとうございました」
袋に入れられたぬいぐるみを持って香野のところに戻る。
「ほい」
「ありがと! 大切にする」
「ん。今日2個目だな」
「そう、だね」
「んー、とりあえず元の順路で行く?」
「そうだねー」
「じゃ、行きますか」
「いい感じじゃない? あれ」
「まあ」
「いやー、健も手が早いね」
「偶然だと思いますけど」
「まー、そうだろうねー」
「一瞬で発言変えないでくださいよ」
「えー、かたいぞー。緊張してんのかこのー」
「べ、べつに……緊張なんて」
「そう?」
「そうですよ! てか、鈴さんは健くんのことどう思ってるんですか
?」
「え、私?」
「はい」
「えー、それ、聞いちゃう?」
「え、いや、え?」
「まあ、いいんだけどさ」
「は、はぁ」
「私は健のことを、か。それなら……」
「ほら、飲み物。買ってきたよ」
「お、サンキュー」
「……ありがとです」
「合ってる?」
「うん」
「はい」
「で、どんな感じ?」
「ぬいぐるみを健が美花に買ってあげた」
「へー。いい感じ、かな。で、さっきなに話してたの?」
「あー、それ?」
「まあ、気になるよ」
「あれだよ。私がた……」
「あ、健くん動きました」
「お、じゃあ追いかけよっか」
「おーう」
気のせいじゃない気がする。
誰かに、つけられてる?
「香野、ちょっと早足」
「え、なんで?」
「いいから」
「あ、うん」
歩くスピードを上げる。
やっぱり。
誰かがつけている。
「次の角左」
「あっ、うん」
あと5メートルで曲がり角。
曲がる。
そして少し歩いて
「ちょっと待ってて」
「え?」
それだけ言って角からさっき歩いて来た道を見る。
「あっ」
「げっ」
ショッピングモールのフードコート。
そこで鈴たちにことの詳細を聞こうとしたんだが。
「えーと、なんで鈴ちゃんたちがここに?」
「え、3人で遊びに来たんだけど?」
「堂々と嘘つくな」
「嘘じゃないよ?」
「須藤、嘘か?」
「はい、嘘です」
このように、堂々と嘘をつくのです。
「須藤ちゃん!?」
「諦めろ、これが現実」
「『これが現実』だ? 名言めいたこと言ってるけど全然なに言ってるか分かんないからね?」
「あぁん?」
「は?」
あー、めんど。
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