移動
「こちらは~……」
「あっ、はい、俺です」
「あっ、ではこちらを。で、こちらが」
「あ、ありがとうございます」
「はい。これでご注文はお揃いでしょうか?」
「はい」
「では、ごゆっくり~」
料理を持ってきてくれた店員が店の奥に戻っていく。
「食べよっか」
「そうだな」
どちらからともなく、
「「いただきます!」」
そう言ってから、料理にスプーンを入れる。
「おっ、旨い!」
「ね!」
旨いなんてレベルじゃない。
他のオムライスとは一線を画す。
いや、雪のオムライスは美味しいんですけどね?
…………や、話を戻そう。
こう、何て言うか、旨い。
自分の語彙力が無いのが腹立たしい。
この美味しさを表現したい。
「ん~、美味しい!」
そんなことを考えている間にも、香野は料理を食べている。
「冷めちゃうよ?」
「あー」
ま、美味しければ何でもいっか!
「うん、旨い!」
あー、美味しい。
「あー、食った食った」
「うん」
「次、どうするんだ?」
「うーん……」
歯切れが悪い。
「どうした?」
「えぇと、まだまだ映画まで時間あるんだよね」
「そうなのか?」
てっきりもうすぐだと思ってた。
「うん、後1時間ぐらいかな?」
「上映が?」
「ううん、開場が」
「まじかー」
「どうしよっか?」
「ここにずっといるわけにも、な」
「うーん……」
「あっ」
「うん?」
「映画館って、駅ビルてきなところの?」
「あっ、うん」
「なら大丈夫だ」
「う、ん?」
「行くぞ」
「あっ、ちょっと!」
「伝票!」
忘れてた。
「お前さー、こうゆう時ぐらい男たててもバチ当たらねぇぞ?」
「でも」
「でももだっても無し。まぁ、次なんかあったら俺が持つ。それでいいか?」
「……うん」
レストランでの会計を持とうとしたら、
『私が持つ!』
と言ってきてきかないんだよなあ。
なんとか6:4で解決したが。
「で、どこ行くの?」
駅ビルに向かって歩いてはいるがさすがに気になったのね。
「いや、秘密」
「男子が秘密って言ってもキモいだけだよ?」
「おい……」
そういうことを直接男子に言ってもいいんですか?
「ま、いいけどね」
「いいのかよ……」
「まあ、変なところではないから安心しろ」
「ふーん?」
「やめろ顔近い」
「えー?」
やめれ。
「んー、涼しい!」
「な」
さすがに6月。
気温も夏に向けてぐんぐん上がっていってる。
そんな気候の間は冷房の効いた室内は天国だ。
「で、どうするの?」
「あー、とりあえず上行く」
「はーい」
あそこが何階かなんて知らないがな。
どうせうるさいから音で分かるとは思うが。
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