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帰り

『次は~、次は~……』


 聞き慣れたアナウンスが香野たちの最寄りを告げる。


「おっ、次か」

「そうだね」

「そうですね」


 となると、


「お前ら家の方向は? 同じ?」

「うん、私のが家は近いけど」

「そですね」

「ん。分かった」


『間もなく~、間もなく~……』


 再び聞こえるアナウンス。

 立ち始める人々。

 そして、減速を始める電車。


 スピードはみるみる落ちていき、ホームの案内ぴったりに止まった。


「ほんとすごいよな」


 電車から降りながら呟く。


「何がですか?」


 反応したのは須藤。


「いやさー、こうぴったり止めて当たり前。みたいなところあるだろ? 電車って」

「あ~確かにですね」

「分かるかも」

「だけど実際はこのくらいになるまでに途方もない時間練習してさ」

「ですね」

「うん」

「ほんとすごいよなって。俺もああなりたいよ」

「ですね~」

「そうだね」


 雰囲気がしんみりとなった。

 想定外だ。

 階段を上りながら考える。

 しんみりとした雰囲気を壊さなくては……!

 むず痒い!


 そんな俺の考えを読み取ったのかは知らないが香野が


「すごくなりたいんだったら、さ……」

「うん?」


「しっかり勉強しよ? 多分それほどやんなくてもすごいって思われると思うよ?」

「それとこれとは話が違う!」


 とんでもないことを笑顔で言ってきた。

 なんてやつだ。



「んじゃ、どっち?」


 駅から出たのはいいがどういけばいいのか完璧に忘れた。


「えっ、忘れたの?」

「しょうがないだろ、そんな記憶力あったらテスト高得点取れるわ」

「そうだよね……。でも、帰れる? 大丈夫?」

「帰るのは簡単だぞ?」

「へぇー?」


 どうやら俺が帰れないと思っているようだ。

 だがな、甘いぞ香野!

 スマホを開いて画面ロックを高速で開く。

 そしてある場所をタップ!


「じゃじゃ~ん」

「「は?」」


 その場を静観していた須藤ですら苛立ちを隠せないようです。

 いや当たり前だけどね?

 地図アプリ開いてる時点でね?


「で、どっち?」

「「あっち」」


 香野と須藤の声が重なる。

 ごめんなさい許して下さい。


「でもお前らが同じ駅だとはなー」

「ほんとそれ、私も驚いたもん」

「私もです」

「だよなー」

「うんうん」

「ですね」


 あ、これだめなやつ。

 流れを変えよう。

 うん、そうしよう。


「今日はありがとな、付き合ってくれて」

「うんうん。大丈夫だよ。私たちも理解深められるし、ね?」

「そうですそうです、美花ちゃんの言う通りです」


 いつの間に美花ちゃん。

 あれ、前からだっけ?

 ま、いっか。


 そこで須藤から質問が飛んでくる。


「そういえば健くんは家に連絡とかしなくて大丈夫なんですか?」

「え?」

「いや、遅くなるとか入れなくて」

「へ?」

「帰るの遅くなりますけど?」

「あっ」

「え?」

「やばっ」


 忘れてたわ。


読んでくださりありがとうございます!

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