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騒ぎ

ガチャッ。


 ドアを開ける。


「行ってきまーす」

「行ってらっしゃーい」


 ガチャッ。


 ドアを閉め、家に背を向ける。


「じゃっ、行くか」

「うん」


 そうして2人で歩き始める。



「おっはー」

「あー、おはよう」


「うす」

「おう」


「うぇーい!」

「うぇーい!」


 学校の近くになると朝の挨拶をよく聞く。

 たまに変なのが混ざってるが。

 うぇーいは挨拶なのか……?


「元気だねぇ」

「あぁ、うん」


 まぁ、確かに元気ではあるだろうな。


「だけどうぇーいは挨拶か?」

「う~ん……」


 と、悩み始め、


「まぁ、挨拶といえば挨拶なんじゃない、かな?」


 と、結論を出す。

 そうなのか?


「まぁ、人それぞれか」

「うん、みんな違ってみんないい、だね」

「だな」


 みんな違ってみんないい、か。

 その通りかもな。

 よしっ! 今度うぇーいで挨拶してやろ!

 その反応が答えだね!

 自己完結してしまったな。



「ねぇ、あれヤバくない?」

「うん。普通に引くわ」


「被害妄想甚だしいわ」

「恋愛ぐらい普通にさせてやれよな」


 俺の教室の前に人だかりが出来ていた。


「なんだ、これ」

「さぁ?」


 と、言いつつ香野は近くにいたモブ男子生徒に話しかけていた。


「ねね、なにがあったの?」

「えっ、え~と……」


 そのモブ男子はゆっくりそれでいて分かりやすく簡潔に話してくれた。

『ある女子生徒と男子生徒が一緒に帰っていた。その女子生徒に恋愛感情をもっていた別の男子生徒がそれを目撃して、なんで俺以外の男子と、と逆上。それで朝、問い詰めて今に至る。』

 だそうだ。

 非常に分かりやすい。


「で、それはどこ情報だ?」

「普通に言ってました。問い詰めるときに」

「ふーん。で、誰だ? 被害者」

「えーと、ほんとに聞きます?」

「あぁ。普通に気になるだろ」

「いや、でも聞かないほうが……」

「えー?教えてくれないの~?」


 サンキュー香野。

 男は女に弱い。


「まぁ、いいですけど。ことを荒げないで下さいよ?」

「おぉ」


「秋元さんです。秋元鈴」


 ブチッ


 なにかが切れる音がした。

 おそらくこれが堪忍袋の緒が切れる、ということだろう。


 人をかき分け、鈴の机に向かう。

 机の回りには女子生徒が複数いた。

 男子生徒はいなかった。


「邪魔だ」


 そういうと女子生徒達は一斉にこっちを向き、怪訝な顔をする。


「邪魔だ」


 2回目は合点がいったのだろう。


「ど、どうぞ」


 と、退いてくれた。

 そして俺は鈴の横に立ち、


「え、えぇと?」


 困惑しているが知らん。

 俺は俺の好きにやらせていただく。


「すまん」


 頭を下げる。直角に。


「えぇと?」


 明らかに困惑している。

 そりゃそうだ。

 だけど。


「すまん。俺が一緒に帰っていれば……」

「う~ん?」

「すまん」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……はぁ」

「うん?」

「別にいいよ、私が気を付けなかったのもあるし。自分でいうのもあれだけど私のファンクラブもあるらしいし、ね」

「……そうか」


 そうして俺は顔を上げる。

 今にも泣き出しそうじゃねぇか。


 ぐっ。


 拳に力を込める。

 許せない。


 そう思っていたときだった。


「鈴ちゃん!」

「うっ……!」


 は?


 野次馬の大半がそう思っただろう。

 俺も思った。


 簡潔に説明すると香野が鈴に抱きついていた。


「鈴ちゃんはなんも悪くないよ。悪いのは男子なんだから」

「……でも」

「でもじゃない。可愛いからって何されても言いわけじゃないんだから」

「……うん」

「だからね? 背負い込まないで。泣きたいときに泣いてもいいんだよ。見栄はらないで」

「……うん……ぐす」

「悪くないんだから」

「……ぐす」

「よしよし」

「う、うわぁぁぁん……!」


 はぁ、ほんとにいいやつだよ、お前は。



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