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さわやかな朝

 さわやかな朝だ。


「いい天気だな」

「そうだね」


 こういう朝にかわいい女の子と登校。

 俺、勝ち組では?


「そういえば、今日なんか配られるって言ってたような……」

「うーん……あっ、あれじゃない?」

「うん?」

「テスト範囲」

「あっ」


 やべ、忘れてた。


「……テスト、いつだっけ」

「確か、5月の最後の木、金だったとおもうけど」

「……よし」

「よしって?」

「嫌なんでもない」

「そう? ならいいけど」


 なんとかごまかせた。

 こいつにばれたら地獄だからな。

 中学時代、散々絞られたなー……。

 そう、あれは放課後の図書室――。


「ちょっと、何ぼうっとしてるの。急がないと。」

「あ、すまん」


 思考に割り込まれたせいで、何を考えていたか忘れた。

 ま、いっか。


 そうして急いで、駅に向かう。


「電車、何分?」

「あと5分ぐらい」

「ほんと、ギリギリだな」

「口動かしてる暇があったら足動かして」

「はいはい」


 怒られたので足を動かす。

タッタ、タッタ


 駅が見えてくる。

 後2、3分といったところか。


「香野、まだ走れるか?」

「うん」


 階段を駆け上がり、通路、改札を走り抜ける。

 今度は階段を駆け下りる。

 電車は来ていない。


「間に合ったな、大丈夫か?」

「……うん」


 そうは言うが、お前めっちゃ肩で息してるぞ?

 それを指摘するのは違う気がするので、バッグをガサゴソ、ガサゴソ。


(あった)


 目的のものを見つけたので香野に渡す。


「ほい」

「なに、これ?」

「タオル。使え」

「あ、ありがとう」


 よかった。

 男子のタオルなんて使いたくない、なんて言われたら俺泣くぞ。


 香野が汗を拭っている間に電車がホームに滑り込んでくる。

 それに乗り込み、反対側のドアに背中をもたれかかる。


 電車が動き出して、香野が


「腕、もう大丈夫そう?」


 と、聞いてきたので


「大丈夫。来週病院行って、最終確認」


 と、返す。


「そうなんだ。よかった」

「ホントホント。ギプスようやく外せるよ。とはいっても激しい運動はまだだけどな」

「そうなんだ……」

「ま、軽い運動はできるからさ。気にすんな」

「……うん」

「……」

「……」

「……」


 ……、話すことが無くなった。

 ま、いっか。


 そんな俺たちを乗せたまま電車は走っていく。


ガタンゴトン

ガタンゴトン


 子気味のいいリズムに耳を傾けていると、最近になってよく耳にすることになった言葉が聞こえてくる。

 出る準備し始めよう、と香野に言おうと正面を見る。

 と、なんと寝ているではないか。


「おい、香野起きろ。次だぞ」

「うっ、ん」

「ほら」

「うーん」


 しょうがない、無理やり連れていくか。

 香野のバッグを持ち、手をつかむ。


「ほら、いくぞ」

「う、ん」


「ほんと、こうゆうときに限って……」

「うん?」

「な、なんでもない」

「そうか?」


 まあいい。


 こうゆうのも、たまにはいい。





読んでくださりありがとうございます!

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