退院と騒ぎ
遅くなってすいません。
俺は茫然とした。
だってそうだろう。
隣のベッドのこいつが同じ高校だと思うやつがどれだけいるか。
いや、いないだろう。
いてたまるか。
そんな感じで俺は見事に混乱していた。
だが、本当に俺と同じクラスなのか?
(うん?)
そこで俺は気づいた。
「なんでお前俺のクラス知ってるの?」
「えっ、普通に担任の先生に教えてもらったけど?」
「あー、そりゃそうか」
当たり前だ。普通に考えてそうだ。
「あと、聞きたいことがあるんだけどさ……。答えたくなかったら言ってくれ」
「うん」
「……なんで、入院しているんだ?」
「あー、それね。たいしたことないよ。」
「そうか。ならよかった」
「うん、だけどなんで?」
「俺ってさ、友達少ないんだよ。だからさ……」
そういうと彼女は何かに気づいたようにあっ、と声を上げた。
「退院したら、一緒に飯、食わないか?」
「うん!」
その笑顔はとてもきれいだった。
俺、笑顔に弱くね?
その後、俺は退院し、父親の運転する車で家族とともに帰途についた。
家に着き、ベッドでゴロゴロしながら読書をしていると、スマホの着信音がなった。
そこには、香野からの、
『明日、迎えに行こうか? けが、大変だろうし』
というメッセージが表示されていた。
(うむ、どうしたものか)
提案自体はありがたいし、実際大変というのも、ある。
(だけどなー)
ここでこの提案を受けてしまうと、今後も香野は俺を手伝わなくてはと、思うのではないか。とも、思う。
優しいあいつのことだ。きっとそう思うことだ。
ここは、気持ちだけにしてもらおう。
「いや、いい。その気持ちだけで十分だ。ありがとう。」
そう送った。
すぐ既読になり、数秒するとまたメッセージが届く。
『うん、分かった。何かあったら言ってね?』
そう来たので、
「わかった。ありがとう」
と、返す。
すぐに既読がついた。
その後は、メッセージは来なかった。
朝、特に何もないがいつもよりも早く起きて、いつもよりも早く家を出た。
と、言っても15分ぐらいなので、大して変わらない。
(眠い……)
そう思いながら、登校した。
もちろん、こんな朝早くに起きたものだから雪には大変驚かれた。
『え、早。なんかあった? 頭本当に大丈夫?』
と言われた。
雪なりに心配をしてくれているのだろうが、言葉遣いには気をつけようね?
学校に着いて、席に着くと視線を感じた。
それもそうだろう。
入学早々、二日間休んでいたのだ。
その後の授業は体育以外難なくこなせた。
通常授業は、書くことに支障はないからな。
体育では、視線が痛かった。
大方、休みやがってとか、サボりだとかだろう。
昼休み、鍵を借り屋上に集まってご飯を食べようとしていると、
「左腕、大丈夫?」
と、香野に聞かれた。
「大丈夫。授業に支障はないよ」
「よかった……」
その後は、雑談などをして過ごした。
翌日、昨日とは違って、いつも通りに学校に着き、教室に入り、席に着いていた。
ホームルームが始まるのを待っていると、教室中が騒がしくなった。
なんだと思い、クラスの視線の先を見ると、そこにいたのは、
「須藤!」
しまった、と思った。
案の定クラスのやつの目線は、こちらに向いた。
それとともに、
「永山君、おはよー!」
クラスの男子の視線がこちらに向いた。
(めんどくせぇ)
率直にそう思った。
遅くなってすいません。
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