思い出す。
俺、永山健は頭を抱えていた。
「この学校に入学できたことに誇りを持ち、より一層勉学に励んで下さい。では、解散」
担任から締めの言葉が発せられると共に教室が騒がしくなった。グループLAIN作ろう! とか、遊び行こうぜ! とか。いや、グループLAINとか言ったけど最近そういうの知った者です。はい。
ようするに、簡単に連絡先交換出来るアプリだ。連絡も簡単に出来る。
話は戻るが、そこまではいいのだ。普通に考えたら、よっぽどのことがない限りそういった所から、お声がかかるに決まっているだろう。一応、俺にはそのよっぽどのことはないと思っている。
しっかし……。どうしよう、誰からも話しかけられない。LAIN交換しようとか、遊びに行こうとかないんすか。そうですか。おかしいなあ。今日、入学式だよね?
そう、今日は入学式なのだ。なのだが……!
「ねぇ、LAIN交換しない?」
きたー! 話しかけられた喜びとともに顔を上げると、どえらい美人がいた。しかも、何処かで見たことがある気がする。取り敢えず、話を繋げてみる。
「いいですよ! QRコードでいいですか?」
「はい! じゃあいきますよ~。あれ? 登録済み? おかしいなぁ~」
「いや、おかしくねぇだろ。むしろ普通だろ、昨日交換したろ」
「あり~? そうだっけ」
と、若年性認知症を疑うレベルの記憶力しかないこいつは秋元鈴、俺の幼馴染みだ。あと、俺はこいつの顔を忘れた訳ではない。断じてない。まぁ、このまま話をそらし続けられても困る。本題に入ってもらおう。
「で、なんの用?」
「あ、そうそう。隼が校門で待ってるから、健呼んで来いってさ」
「隼が?」
隼、というと俺の親友、長谷川隼のことだ。これが、イケメンで、運動神経抜群で女の子にモテるわ、コクられるわ……。
「そそ。早く行きなよ。わたし、この後クラスの子と遊んでくるからさ」
「ん、分かった。行ってくるわ」
そこで会話を切り上げ、荷物を持って取り敢えず、校門へ向かうことにした。
だが、歩き出してから俺は1つ疑問に思った。
(鈴のやつ、クラスの子と遊びにいくとか言ってたような……。あれ、俺誘われてなくね? おかしいなぁ……)
そんなことを考えながら歩いていたら、下駄箱に着いた。ここで靴を履き替えて校門にいくのだが。
「私と付き合って下さい!」
何故か、告白が執り行われていた。
今日、入学式だよね?(本日2度目)
「ごめん、僕、好きな人がいるんだ」
そして、即行で断られていた。
女の子は、即行で帰っていった。
(鬼畜かな?)
率直にそう思った。断るにしても、何か無かった?
本音を言えば見なかったことにして帰りたかったのだが、生憎、この男(鬼畜)が待ち合わせの男なのだ。
「何でコクられてるの? 今日、入学式だよね? これ見せつけたいがために俺呼んだの? もしかしなくても鬼畜?」
「ハハッ。流石の僕でもそんなことしないよ。君のトラウマを掘り返すような真似はしないさ」
そう言われて思い出してしまった。
中学2年の夏、それは起こった。小学生の頃、俺には仲の良かったやつが鈴や隼以外ほとんどいなかった。
だが、中学にあがって仲の良くなったやつがいた。
そいつは、俺以外とは隼や鈴ぐらいしか話せなかった。しかも、そいつはとても可愛いかったので、多くの男子にコクられていた。
しかし、全員玉砕された。もちろん、俺とそいつが仲がよかったこともあり、俺のことを妬むやつらもいた。だが、俺が学年の中でも憧れの的でもある、隼や鈴と仲がよかったこともあり実際に行動に移されることはなかった。それでも、周りのやつとの俺の距離は遠くなっていった。
そのことで、責任を感じたのだろう。彼女は放課後、教室に俺を呼び出した。そして、謝ってきて、こう言ったのだ。
『今回のことごめん。でも、これももうすぐ終わるから』
その当時、中学2年だった俺には、意味が分からなかった。だが、それはすぐ分かった。夏休み初日だった。
彼女は引っ越したのだ。
鈴が電話を寄越してきたのだ。それを俺は、知らなかった。当たり前だ。クラスでは、ほとんど話しかけられず、ずっと勉強をして過ごしてきたのだ。おまけに、鈴や隼も俺が知っていると思っていたそうだ。それで、クラスのやつらがお別れの手紙を書いてるだなんて知る由もなかった。
そこからは、早かった。
まず、彼女の引っ越し先を調べた。ここは、メールで鈴が聞いてくれたので問題はなかった。彼女は、同じ県の中の遠い所に引っ越していることが分かった。まだ、朝だったのですぐ向かった。鈴と隼も付いてきた。向こうに着いたのは昼前だった。そこで軽く飯を食べて俺だけで彼女の家に向かった。鈴や隼には待ってもらった。彼女の家は案外すぐ見つかった。
チャイムを鳴らすと、
『今、行きます』
と、聞こえた。彼女の声だった。
ガチャッ。
扉が開いた。彼女が出てきた。驚いていた。当たり前だ。
その後は覚えていない。
だが、これだけは覚えている。
『ごめんなさい』
彼女はこう言った。直感で分かった。
フラれたことだけは。
それ以来、告白何てものは嫌いだ。
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