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お代は猫でお願いします  作者: 蔵前
十一 夫不在のペネロペは機を織る
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秘密の花園

 恭一郎と婚約しているのに彼に逢わせて貰えなかった時期に暇つぶしに作り、最近は欠点を見つけては補強している、私の子供のような大事なもの。


 陽は当たるのに拭き晒して冬場は特に寒いので、植える植物の選別が大変であったが、その努力により真冬でありながら下草が鬱蒼と茂っている。

 パンジーやシクラメンなどの観賞用の花々も植えたので、所々に溶け残った雪が色とりどりの花々をメレンゲに包まれたお菓子のように見せていた。


「さあ!私の秘密の場所。どうかしら?」


「何もないわよ。」


 小枝子の言葉に、私は有頂天となって聞き返した。


「何もないですか?」


「変な子。えぇ、何もない。何があるのかしら。冬なのに綺麗な花が咲いてるって事くらい。冗談よ。冬なのに可愛い花の絨毯ね。端にささっている小さな十字架が悪戯っぽくて可愛いわ。ここは更紗ちゃんの秘密の花園なのね。」


 悪戯そうに表情を作りニヤニヤと小枝子が微笑んだその時、もう一人の足音が聞こえた。

 幸次郎かと振り向いたら、見たことのない男性がとことこと私達の方へと歩いてきていた。

 どんくさそうな、小太りの大柄な男性だ。


 小枝子が私の目線に気がついて男に目をやると、男の姿を認めた彼女は脅えるどころか気安そうな表情を作った。


 なんと!二人は知り合いだったらしい。


「梶さん。どうしたの?奇遇ね。あなたもご招待されたの?」


 誰も招待などしていないし、誰かの訪問の報も無い事を知っている家人の一人である私は、小枝子の腕に腕を絡めた。

 警備員をかわして敷地内に侵入できた危険な相手ならば、正確に身を処さねば危険だからだ。


 私は小枝子を引っ張りながらパンジーの絨毯を踏まないようにして、ぐるっと端を歩いて梶という男から目を離さずに距離をとった。

 私は白い十字架がある所まで、つまり絨毯を梶との間に挟んだ位置に立ったのである。


 次に移動する場合はと、逃走経路を考える。

 この場所からでは男を交わして屋敷に逃げるよりも、私道の警備員の所に行く方が安全であるだろう。

 梶という男は私達を追い詰めるべくゆっくりと歩いて近寄ってきているが、あと十数メートルのところで私達に叫んだ。


「お嬢さんたち!早く逃げれ!急いで屋敷に戻れ!」


 けれど私達は屋敷へは逃げられなかった。


 梶と私達の間に四人の男達が現れたのだ。


 彼らは全員が銃を持っており、同じような安っぽいコートを羽織っていた。

 逃げれば確実に捕まえられる事が確実だ。

 やくざでもなく、浮浪者たちが暴力的になって団を作ってしまったという、そんな風体の四人組だ。


 一番危険な奴らだ。


 彼らはやくざでないからこそ、弱い者に対しての暴力が残虐で徹底的だと私は知っている。

 誠司達白狼団はやくざやそんな集団から町の人間を守って暴れていたからこそ、町の人間は警察から白狼団を守ってくれていたのである。


「更紗ちゃん、走れる?頑張って逃げるわよ。」


 私は小枝子の腕をギュッと拘束し、彼女を動けないようにしながら再びゆっくりと後ずさる。

 彼女が小柄な人で良かったと思いながら。


「更紗ちゃん?」


 私は梶という男に賭けたのだ。

 彼は四人の男達を表に出すために、私達に声を掛けたのに違いない。

 敢えて「屋敷」と叫んだのだ。

 彼らの目的は私達で在るのだから、逃走経路を絶とうと私達が逃げようとする方向に男達は必ず飛び出るとの計算だ。


 そして私達には警備員の詰め所へ逃げろと。


 しかも男達が梶に乗せられまんまと飛び出た所を見るに、奴らは統制も訓練もされてない人間だ。

 そこで、私は敢えて声を出した。


「ばーか。」

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