『竜です。拾われました』
『…………眩しい』
恐る恐る目を開ける。眩しいので瞳を半目の状態のまま周りを見る。
『ここは………痛っ…………』
声がおかしい。そしてひどい頭痛だ。自分の置かれた状況がわからないままヨロヨロと歩き始める。
『確か……久しぶりに外の空気を吸おうとして……、そうだ! 勇者とかいう馬鹿げたやつに攻撃をされたのだが………。何故ワシは人の姿でこのような場所に…』
ブツブツとそう呟いていると、目の前に一頭の猪が現れた。警戒してる様子もなく、ただこの場を通り過ぎようとしただけだろう。
『じゅるり。……腹が減っては何も出来まい。とりあえずこのモノを食って腹をみたそう』
猪は火の魔法で焼き殺すことにした。いい具合に焼けばそのまま食えるため効率がいい。
猪は命の危険を本能で察したのか怯えるように逃亡の体制に入る。
『逃がさん! 【炎の玉】…………ぐっ!?』
魔法を発射させようとそう唱えた時、全身が内側から焼き焦げるような痛みが襲ってきた。
『うっ……ああああああああぁぁぁ!』
これまで感じたことない痛みに身体が動かなくなる。意識が飛びそうな程の激痛に耐えながらも魔法を放つ。
【炎の玉】は軌道がぶれることなく猪に命中した。しかしその威力は人間が出せるような威力ではなく、辺り一体を消し炭にしてしまった。
『ええ………』
その光景に目が点になる。猪を軽く焼く程度の威力で放ったはずなのだが……。そんなことを思うが身体は痛みで動かない。目の前が暗くなり、ついにその場で倒れてしまった。
「……何か焦げ臭いわね。……魔力の反応がある………」
白髪の女は魔力の発生源の方向へと足を進める。
「ここかしら………。……!!」
女の視線の先には、まるで災害が起こった後のような半径10mほどの焼き焦げた痕があった。そしてその中央には今にも朽ち果てそうな少年の姿があった。
「大変! すぐに医者を……」
女は少年を抱きかかえる。女は汗まみれになる。地面の余熱がそれほど残っているのだ。
女はぐいっと汗を拭い、駆け足で去っていく。
「だからぁ……、わしは教師になんぞなるつもりは無いと言うとろうが……。ケイン、お主こそそんなことしてる暇があるのなら教師にでもなればいいのではないか?」
日差しがよく差し込む一室で髭面の一人の大男が電話をしていた。その屈強な肉体は常人のものでなく、明らかに何かしらの職に就いているものだと分かる。
「ま、その話はまた今度だ。どれ、久しぶりに飲みにでも行かんか? ……なに? 嫁に怒られる? ハッハッハ! ならば一緒に来るがいい! 朝まで飲み明かそうぞ!」
太く渋い声で男は笑った。どう見ても今の会話にそんなに笑う要素はない。ゲラだ。
「あなた! 」
ドアが外れるほどの勢いで開けたのは少年を抱えたさっきの女だった。
「おお! 帰ったかアンリ! どうだ久しぶりの外は! 日差しが気持ちよかったであろう?」
「そんなことより、この子! 森の中で倒れてたの! 」
白髪の女、アンリは抱き抱えた少年の姿を大男に見せつける。
「………ふむ。アンリ、わしの寝室でそやつを寝かせておけ。少し待っとれ」
そう言うと大男は部屋を出ていった。
アンリは言われた通り大男の寝室へ入り、4人ほど一気に寝られそうなベッドに少年を寝かせた。
「ハッハッハ! なぁに、心配するな! 見たところただの魔力不足だろう。しっかし魔力が尽きるまで魔法を行使し続けるとは……こやつも馬鹿じゃのう」
大男が大きな声でそういいながら寝室に入ってきた。
そして手に持っていた魔力ポーションを少年の上に落とした。
「あ……やっべ手が滑った」
パリンという音と共に少年にポーションがかかった。
「ええ! ちょっと何やってるのよあなた!」
「ハッハッハ! すまんすまん! まあこれでも効果はある。いいではないか!」
アンリは呆れた顔で大男を睨む。
『うう……ここは?』
「あ! 良かった……目が覚めたのね!」
アンリが少年に触れようとしたその時、大男がアンリの腕をつかみ少年から遠ざけた。
「ちょっと、何するの……」
「……お前さん、なぜ竜語を使っている」
大男は先とはまるで違う、鋭い目付きで少年を見た。その目からは微かな殺気を放っている。
『…………人間…』
今は三人称で書いておりますが恐らく一人称でこの先は書くと思います!