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第九猫 見習い兎の初仕事、猫は口出す足を出す。

私毎ですが、本日長女が誕生しました。

この三連休を使ってストック増やそうという予定は、所詮予定でしかなかったと言う結論になりましたが、一区切りつくまでは何とか毎日更新のペースを守っていきたいと思います。

「ねー、ほんとにこんな早く行く必要あるー?」

「みゃぁ!」


初依頼を受けた翌日、珍しく俺が先導する形で、ベリルさんの露店へと向かっていた。俺の背中には納得いかないーというオーラがびんびん突き刺さる。気付いているよその視線。まぁ無視するけど。

アインが不機嫌な理由は単純だ。本日の朝食を追えて、朝のお勤めをしようとするアインの足を引張り、(文字通りズボンを口で引張った)外に出るよう促したのだ。


恐らく、アインとしては昨日シアンさんに言われた通り、午前の授業に出席し、昼前にベリルさんに会いに行く予定だったのだろう。確かに、この世界では時間に対する思いがすごく緩い。だから、昼前に行っても何の問題もないし、見習い相手にそこまで期待してないだろう。


しかし、だ。アインの目標は冒険者となり、両親を探すための旅に出ること。そして、俺はそのアインと旅を共にし、人間に戻る方法、ついては猫と意思疎通をする方法を探すことである。そのために今できることは、アインの冒険者ランクを上げることである。

マゼンダさんは言っていた。見習いのうちはずっとGランクだが、見習いのうちに達成した依頼の評価は、冒険者になった後ランクアップ査定に反映されると。

つまり、見習いのうちから高い評価を得ることが、冒険者のランクアップに繋がるのだ。


では、高評価を得るためにどうしたらいいのか、社畜大国日本で3年ほどサラリーマンをやって来た俺は思う訳だよ。ただ単に依頼を達成するのでいいのか?いや、それでもらえるのは精々『普通に良く頑張ってくれました。』程度。『よくやってくれた!君に任せてよかった!』と言う評価をたたき出すには、相手が期待する一歩先の事を行うべきだ!と


そのためには、まず相手の立場に立って考える事が近道となる。『敵を知り己を知れば百戦危うからず』というやつである。

さて、今回のターゲットは露店商のベリルさん。これと、授齢祭というイベントを組み合わせると、いくつかの推論が導き出せる。露店商、つまりこの街に決まった店舗を持たない行商人。行商人は授齢祭から一週間程度滞在するのが普通なようだが、それは商品が売れ残っているからだろう。早く商品が売れて資金面に余裕が出来れば、早々にこの街で仕入れを済ませ、次の街に行くはずである。

そして、今回ギルドに依頼を出したと言うことは、それなりに大きな露店を開いており、多くの商品が売れ残っていると言うことではないだろうか。

だとすると、べリルさんがアインにさせたいのは、恐らく店番。授齢祭から時間が経つ毎に財布の紐がきつくなっていく住民にはあまり期待せず、他の行商人の所に話を持って行く、そのために必要なのは店番のはずだ。それも、客の応対ではなく、商品の警護の意味合いが強い文字通りの店の番。

曲りなりにも商人が、商いの経験が無い冒険者、しかも見習いにそれ以上の期待をするわけが無い。だからこそ、そこに付け入る隙がある!その隙に付け入る準備がこの猫にはございます!

まぁ、エンジェル投資家のように見習い冒険者への支援が目的だとしたら、この計画は前提条件から覆えっちゃうんだけどね。その時はアインに普通に依頼をこなしてもらうとしよう。


朝の鐘が鳴る前に東通りの食堂の前に来てみると、馬車の荷台を改築し、そこに棚を設置しているような立派な露店があった。そこで1人の男が慌しく商品を並べている。黒々と日焼けした腕には筋肉がしっかりとついており、全体的に身体が厚い。短く切りそろえた茶髪と腕同様によく焼けた四角い顔、そして柳のように細い目。商人と言うよりも海兵か傭兵といわれた方がしっくりくる。


予想外の外見であったが、魔物がいるような世界だ。行商ルートによっては、鍛え抜かれた肉体が必須なのかもしれない。いや、そこは冒険者を護衛に雇えよと思わなくもないが、護衛費も安くは無いだろうしな。

しかし、この人がベリルさんだとしたら、多くの商品が売れ残っているという推論に穴はないだろう。ベリルさんの露店しかないならともかく、好き好んでこの強面から商品を買う人は少数派だろう。


「お、嬢ちゃんが、アインか?」


そんな事を考えていたら、ベリルがこちらに気付いて話しかけてきた。


「はい、アインですー。貴方がベリルさんですー?」

「おぉ、やっぱりか。白兎族の少女で黒猫を連れていると聞いていたからすぐ判ったぞ。わははは。俺がベリルだ。今日はよろしくな。」

「初依頼なので迷惑かけるかもですが、よろしくおねがいしますー。」

「あぁ、その辺もきいちょる。だが、時間の連絡をわすれちょったのに、この時間に来るとは中々見込みがあるな。わははは。」


おいおい、連絡忘れてたのかよ。でも、いきなり好印象ゲットだ。やったぜ。ちらりとアインの顔を伺うと、ぐぬぬとでもいいたそうな目で俺を睨んでいた。


「お昼頃来るもんだとおもっちょったから、お昼交代の店番頼むつもりでおったんだが、予定変更だな。わははは。とりあえず朝の鐘までに商品を並べる。手伝ってくれ。」

「はいー、そっちの箱の商品をこの棚に並べればいいですー?」

「おう、それであっちょる。陳列順は適当でいいぞ。」


アインの後に続き、木箱の中を覗き込んで唖然とした、木箱の中はぱっと見ただけで、木彫りの熊っぽい何か、金属のアクセサリー、宝石のついた指輪、布製の人形が無造作に放り込まれている。

玉石混交とはこのことか。これを無造作に陳列するとか、カオスにしかならないだろ?……もしかして試されているのか?


既にベリルさんが陳列を終えた棚を見ると、そこにはカオスが広がっていた。試しているわけじゃないだと?マジか、ベリルさん、いやもう敬称いらんな、ベリル本当に商人か?このままだと大量在庫がはける未来が見えないぞ。

いやいや、呆れている時間が勿体無い、ベリルの要求は朝の鐘までに商品を並べる事。最低限それはクリアしなければならい。ベリルの陳列棚の全体を俯瞰すると、商品は子供向け、民芸品、アクセサリー、魔石の嵌った謎道具に分類できそうだ。

とすれば、棚の下から子供向け、民芸品、謎道具、アクセサリーでいいだろう。


言われた通り片っ端から棚に並べだしたアインをみゃぁの一言で注意を引き付け、目の前で、並べ終わった商品を自分の決めた分類どおりに移動させた。


「えー、もうせっかく並べたのにー、何で邪魔するのー?」


文句を言うアインを尻目に、俺はどんどん商品を移動させていく。次第に、不機嫌だったアインの顔から、険が取れていく。


「あー、カイがやりたいのはそういうことかー。」


理解が得られたところで、俺はベリルを見ながら「みゃ!」っと一声鳴いた。


「あー。ベリルさんー、陳列の方法、こうの方がよくないですー?」

「何だアイン、順番は適当でいいぞー。わははは。」

「いえー、ベリルさんーちょっとこっちの棚見てくださいー。」

「ん?何だ?……おぉ、似たような商品は同じ棚に並べるのか。これは判りやすくていいな。わははは。これで行こう。」


ベリルが納得して、陳列の終わった棚の並び方を変え始め、アインの並べるのを俺も手伝い、なんとか朝の鐘が鳴るまでに棚がいっぱいになった。結局並び終えた木箱が二箱、手付かずの木箱が二箱になった。不良在庫にならないのを祈るばかりだ。


「おお、こんな整った陳列、俺の店じゃないみたいだな。わははは。ここからは店番を頼みたいとおもっちょるが、アインは店番をした事があるか?」

「ないですー。」

「そうかそうか。だが、そんな難しい話ではないぞ、お客さんが来たら『いらっしゃいませ』、何か買ってくれたら『ありがとうございます。』と言えば良い、盗もうとする奴がいたら、捕まえればいい。な?簡単だろ?」

「えーと、捕まえるのはちょっと無理そですー。」

「そっか?こうちょいと捻るだけなんだがなぁ。わははは。まぁ無理することはない、もし盗人を見つけたら、大声で叫ば誰か来てくれるだろ。目の前の食堂も流行ってるみたいだしな。それじゃ頼んだぞ。」


そういってどこかへ出かけようとするベリルの前に立ち塞がり、俺はみゃぁ!!と異議申し立てをした。

そして、商品の棚に顔を向けてみゃぁともう一鳴き。


「お?どうした猫っこ」

「あのー、商品の値段と、貰ったお金をどうするんですー。」


俺の意図を汲み取って、アインが質問してくれた。流石相棒。


「おぉ、すっかり忘れちょった!わははは。えっと、この辺から、1000リアン、800リアン、500リアン、300リアン、値引きは100リアンまでアインの判断でしていいぞ。もっと下げろって言ってきたら、お昼の鐘頃には戻るから、もう一度来て貰ってくれ。受取った金は、この辺に……あったあった、この鞄の中にいれちょいてくれ。おつりもこっから出せばいい。他に何かあるか?ないな。それじゃ、よろしくな。」


一方的にまくし立てて、颯爽と去っていくゲイン。アインが恐る恐る開いた鞄の中を覗くと、鉄貨、銅貨、大銅貨に混じって銀貨まで見える。確か、鉄貨が10リアンで桁が一桁上がるごとに、銅貨、大銅貨、銀貨となっていったはず、少なくとも孤児院で生活していて、見た覚えがないレベルの大金だ。

そっと鞄を閉じるアインの顔色が少し青い。

いくらギルド経由の依頼だからって、会って1時間と経たない冒険者にポンとお金と商品預けて去っていくとか、本当に商人のすることか?盗まれたらどうするつもりなんだ?いや、うちのアインは絶対そんなことしないけどな!

しかし、思ったより資金があるんだな。ポンコツにしか見えないゲインだが、この露店も立派なものだし、他の職業から商人に転身したのかもしれない。

そして、謎道具が1000リアン、アクセサリーが800リアン、民芸品が500リアンで、子供向けが300リアンか。思わぬ大金と、突然任された仕事に固まっているアインだと、顧客応対は難しそうだな。

ここは俺の出番だな!

ベリルがポンコツ過ぎて、話が長くなってきたので、ここで一旦切ります。

ポンコツベリル、何で商人やってんですかね。本当に……。

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