第七猫 猫と見習い兎
ふぅ、なんとか一週間無事に毎日投稿できました。
ストックはないですが、このペースで投稿できるように頑張ります。
噴水広場は中央に噴水を据え、その周りを芝生が取り囲み、更にその外周はタイル敷の広場になっている。芝生とタイルの境界線上タイル側に、噴水側を向いてベンチが置かれ、いつもはその更に外周に、屋台が2~3件あるだけだが、今日は隙間も無いぐらいびっしり広場の淵に沿って屋台が並べられている。
天候に恵まれたこともあり、屋台で食べ物を買い込んだ家族が芝生の上に布を広げているのが見える。どの世界でもピクニックってのはあるんだなぁ。
隣を見ると、アインもエルも二本目の串に突入したようだ。見た目は結構量があるように見えるが、食べたらとろけていく肉のお陰か、二人とも休むまもなくどんどん食べていく。
「あー、美味しかったー。」
「ホント、今まで食べた中で一番美味しかった、アイン、本当にありがとう。」
「へへー、どういたしましてー。」
二人が幸福感に満ち溢れた顔でぽへーっとしていると、
ゴーン、ゴーン
教会から鐘の音が聞こえてきた。
この世界には短針や長針を持つような正確な時計が無い。少なくとも俺は見た事が無い。なので、住民達は教会が鳴らす朝、昼、夕方の一日3度の鐘を頼りに、おおよその一日のスケジュールを組んで暮らし居ているっぽい。
ちなみに、教会の庭には日時計があり、それを頼りに当番制で鐘を鳴らしている。俺もアインの当番になると、釣鐘塔へと足を運んでいる。
「昼の鐘だね、じゃ、行こうか!」
「うん、いこー。」
二人の後に続いて俺も歩き出す。
目的とする冒険者ギルドは、西側の門と噴水広場の中間辺りにある。何度か前を通りかかって場所は知っているが、今まで一度も足を踏み入れたことがない。
冒険者ギルドと言えば、美人受付嬢に、先輩からのいちゃもんというのがテンプレ!さて、どうなる?
「ここだったよね?」
「うんー、ここだったはずだよー。」
人の流れに逆らうように歩いてきた二人は、足を止め、建物を見上げた。どうやら、エルも来るのは初めてのようだ。
周りの建物と変わらない石造りの建物に、他の建物より大き目の木の扉がついている。その扉の上には大きな字で『冒険者ギルド』と書かれている。うん、間違いないく冒険者ギルドだ。
二人は大きく深呼吸をして、大きく頷き、扉を押し開けた。
薄暗い部屋の奥に、カウンターが見える。カウンターの右側にはコンビニのイートインスペースのようにいくつかのテーブルと椅子が無造作に置かれており、反対側の壁にはいくつもの紙が貼られている。
内装に関しては、俺の描いていたイメージ通りだ。ただ、イメージと大きく違うのは、ギルド内は随分と閑散としていた。
俺とアインとエルの他には、薄手の皮鎧を着た男と、修道着みたいなローブを着た女がいるだけだ。
「こんにちわー。何か御用ですか?」
いや、もう1人いた。いつの間にか、カウンターの奥に女性がたっていた。
「あ、あのえっとー、私達、教会から来たんですけどー?」
「あぁ、聞いていますよ、どうぞこちらへ。」
手招きする女性に応え、二人に続いてカウンターに近づく。カウンターにはバーのように椅子が備え付けられおり、二人は女性の正面に座り、俺はジャンプしてカウンターに飛び乗った。
「初めまして。私はこのギルドの受付を担当をしているマゼンダです。」
「はじめまして、エルです。」
「はじめまして、アインですー。」
「みゃー。」
「あ、この子は、カイって言って、私の友達ですー。」
三人と一匹がが自己紹介を済ませている間に、俺はマゼンダを観察する。
赤みのかかった茶色の髪を肩まで伸ばし、細くやや眦があがった目の色は紅、鼻筋がすーっと通った狐顔美人さん。可憐なリボンタイが衿元を飾るブラウスに、大きめチェックが入ったベスト、そんなにぴたっとした服ではないはずなのに、盛り上がる胸元には、きっと夢とか希望が詰まってる!美人巨乳受付嬢いっちょ入りました!
「エルちゃんに、アインちゃん、それからカイちゃん?ですか?」
「あ、呼び捨てでいいですー。それから、カイは雄ですー。」
「そう?じゃぁ、エルと、アインと、カイ、今日冒険者ギルドに着た理由は聞いてますか?」
「えっと、マーサさんからは行けばわかるとしか。」
「……はぁ、あの人は昔から本当に。そう、それじゃ、簡単に説明しますね。二人にはこれから冒険者登録をして貰います。」
「え?それって、冒険者になるってこと?」
「そうですね、半分は正解です。知っているかもしれませんが、基本的に14歳を迎えるまでは特定の職業に就くことはできません。当然、冒険者もその例に漏れません。ただ、冒険者は他の職業と違って見習い制度があるんです。」
「見習い制度ですかー?」
「そうです。ところで、二人は冒険者が何をする職業なのか知ってますか?」
「えっと、行商人の護衛をしたり、魔物を退治したり?」
「そうですね。それは、間違ってはいません。ただ、正確ではありません。冒険者の仕事はというと、依頼を受けてそれを達成することです。依頼の中には護衛や魔物退治等も含まれては居ますが、他にも、溝さらいやお店の給仕係、薬草の採取等といった依頼もあります。」
「ほぇー。なんでもすんですねー?」
「そうです、言ってしまえば何でも屋です。ただ、依頼を受ける以上は失敗は許されません。なので、私達ギルド職員は、所属する冒険者の資質や技量を把握し、冒険者にあった依頼を紹介する役割を担っているんです。」
冒険者が事前にギルドに登録しておき、ギルドがとってきた仕事を登録者に割り振る。って、契約社員かよ。いや短期の仕事が多いから、ショットバイトの方が近いか。冒険者ってその日暮なイメージが強いし、まんまフリーターか。あ、なんか夢とかロマンとかが崩れてく音が聞こえるぞ?
「そんな仕事もあるんだね。」
「ええ。……と、少し話がそれました。そのように何でもやる仕事なので、足りない他の職業からも人手を貸して欲しいと依頼を受けることがあります。大体が雑務ではあるんですが、逆を言えば誰でも出来る仕事であるため、そういう依頼は基本的に見習い冒険者を宛てることになっています。依頼者側も見習いが受けることを了承していますので、報酬は安いですが、正式にその業界に入る前に、その職業現場を体験できるというお金に変えられないメリットがあります。」
「つまり、これから2年、色んな職業を体験するために、見習い冒険者として登録するって事ですかー?」
「えぇ、その通りです。どの業界も入ってみないと判らない事は多いですからね、知らず業界に入って後悔する人を少なくするため、こうして12歳を迎えた子達に見習い冒険者の制度を紹介しているんです。私個人としてはメリットの多い話だと思うのですが、中には頑なに登録しない方もいますね。あ、貴女達孤児院の子達は必ずに登録してもらってますが。」
「あれ?でも、私達、奉仕活動があるから、殆ど依頼受けられないと思うんだけど。」
「あら?確か12歳を超えたら奉仕活動は3日に1回程度となるはずですが、聞いていませんか?」
アインとエルは互いに見詰め合って、同時に首を振った。
「そうですか。教会とギルドの取決めではそうなっていますが、念のため、帰ったらマーサさんに聞いて見てください。それでは、こちらの登録書にお名前の記入をお願いします。」
「「はい。」」
孤児院で読書きをを教わっているので二人は問題なく名前は書ける。
マゼンダは、名前の書かれた登録書を受け取ると、替わりに青い宝石がヘッドに付いたチョーカーを2つカウンターの上に並べた。
「こちらが見習い冒険者の証明になります。依頼を受ける際、報告の際に必要になりますので、依頼中は常に持ち歩くようにしてください。無くさないように首から下げるといいですよ。」
「お、可愛いね。」
「ねー、おそろいだねー。」
二人はニコニコと笑顔を交わしながら、チョーカーを首に下げた。
「あと、その青い宝石は魔石になっていて、今後二人が依頼を受けると、その情報がどんどん蓄積されていきます。2年後、他の職業に就く場合はあまり関係ありませんが、冒険者を続ける場合、過去の依頼の評価がランクアップの評価に繋がりますので、頑張ってくださいね。」
「あのー、ランクアップってなんですかー?」
「先程少し触れましたが、各種依頼は冒険者の力量に応じてギルド側が選定する形となります。その際選定の基準となるのがランクとなります。上からS、A、B、C、D、E飛んでGとなっており、見習い冒険者は一律Gランク、正式に冒険者の職に付くと、Eランクからのスタートとなります。EランクからDランクなど、次のランクに上がる事をランクアップと言います。」
「どうすればランクアップできるの?」
「それは2年後、正式に冒険者になる事が決まったら説明します。ただ、一つ言えるのは、わずかとはいえ報酬を貰って行う依頼です。決して手を抜くことなく一生懸命行ってください。」
「「はい」」
一瞬だが、マゼンダの目力が数倍に膨れ上がり、思わず姿勢を正した。
過去に職業体験だからと気楽な気持ちで依頼を受け、トラブルを起した子がいたのかもしれない。
「後は何か質問はありますか?」
「あ、依頼を受けるときはどうしたらいいの?」
「そうですね、今日のようにギルドに来て、受付で依頼を受けたいと伝えてください。」
「いつきてもいいんですかー?」
「ギルドの営業時間は朝の鐘から夕方の鐘までなので、その間でしたらいつでもいいです。ただ、見習いのうちは、依頼を受けても翌日以降の仕事になるとは思いますが。」
「へ?何で?」
「こちらも依頼主との間で調整することがありますから。あ、それから、依頼を受けるときはお昼ぐらいの時間帯がいいですよ。朝は依頼を受ける人、夕方はその報告をする人で込み合いますから。」
なるほど、全然人がいないと思ったら、そういう理由だったか。確かに、どんな依頼であれ、朝一番に受けて夕方報告した方が時間が有意義に使えるもんな。
いつ依頼をうけても翌日の仕事になるなら、無理に込んでる時間にすることはないし、先輩からのいちゃもんつけられることは当分無いかな。まぁ、どちらにしろ、アインにいちゃもんをつけるような輩がいるとは思えないけどね。
「それでは、他に質問もないようなので、本日はこれで。」
「「ありがとうございましたー」」
「こちらこそ。次は依頼を受けられるよう、用意してお待ちしてます。」
「「よろしくお願いします!!」」
思いがけず冒険者への道が開けた。世界を旅して回るなら、ある程度ランクをあげて置くべきだろうな。
見習い中はランクが上がらないけど、次のステップには繋がってるってマゼンダも言っていた。まずは二年間、コツコツと頑張っていこうぜ。な、アイン。
兎「てってれー、アインは見習い冒険者にクラスチェンジしたよー!」
猫「やったな!しかし12歳で働きに出なきゃいけないとは、世知辛い世の中だ」
兎「でも、毎日奉仕活動してたし、改めて働き出るって感覚はないよー」
猫「そうか、むしろ無償労働から、有償労働へとランクアップか!テンション上がるな!」
兎「そうだね、お小遣いもらえるんだもんね!頑張るよー」




