第一猫 異世界の猫
初投稿です。殆ど衝動で書いてます。
しかも、小説をかくの自体が初めてに近いです。
ストックどころかプロットもろくにない見切り発車ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
俺は猫ではない。名前は既にある。
40cm程度の身体に乗っかった小さな頭には三角の耳が2つ。
ひょろりと長い尻尾は手足のように俺の意思で自由に動く。
色は全体的に漆黒。
瞳だけが黄色い虹彩の中に縦長の黒楕円が浮いている。
いかに貯水池に映った自分の姿が猫にしか見えなくとも、俺は猫ではない。
たとえ空を飛ぶ小鳥を見て(美味しそう)と思ったとしても、俺は猫ではない。
幾ら声高に「猫じゃないよ!」と言ってみたところで、口から出るのは「にゃーにゃーお!」だったとしても、俺は猫ではない!
猫ではない……はずだよなぁ。
ちょっと自信がなくなってきたので、あの日の事を思い出してみる。
それは遡ること一月と何日か前。
☆
「知らない空だ」
目を覚ますと俺は草原に仰向けに倒れていた。
辺りは薄暗く、空には月が二つ浮かんでる。
(どう見ても二つだよなぁ。公転周期とかどうなってるのかぁ)と考えちゃうのは理系の性か、それとも現実逃避か。
とりあえず、とても判りやすくここが地球じゃないことを教えて貰った気分だ。
「やっぱ、異世界かなぁ」
クールジャパンが漫画なりアニメなりで異世界モノを盛沢山排出したお陰で、ライトなオタク層の俺でも異世界転生という言葉は馴染みが深い。あ、この場合は異世界転移か。
どちらにしろ、異世界程度で取乱したりはしない。
しかし、俺、トラックに轢かれたりしましたっけか?
目を瞑って記憶を掘り起こしてみる。
……えっと確か、昨日は、友達の紹介で知り合った女の子とご飯食べに行って、いい雰囲気になったから告白をしたのに、あっさり振られたんだっけ?で、居酒屋を3件はしごした後、真冬の川で泳いだような?
……あれ?この記憶必要?思い出して大丈夫なやつ?
もしかして、轢死じゃなくて、凍死?もしくは溺死?
てことは、女神様からのチートも無い感じ?
てゆーか、これ、異世界とかじゃなくてもしかして普通にあの世とか?
川のせせらぎも聞こえてこなきゃ、積むような石もないけれど。
ん、まぁ、あの世も一つの異世界か?
とりあえず寝転んでても何も進展しなさそうだし、考察終了。
よっと身体を起し、自分の状態と所持品を確認。
少しダメージの入ったデニムに、世界的なミュージシャンをプリントしたロンT、そしてフライトジャケット。靴は本皮のブーツ。ちょっと背中が汗でしっとりしているが、全体的にぬれた感じはしない。
アクセサリーは特につけてなく、ポケットにはガムが一つ。
あれ?スマホと財布は何処にも見当たらない。
財布はともかく、スマホはショックだわ。売ったら金になったかもしんないのに。
ぬあー。
……ま、無いものは無いんだし、凹んでても仕方ないから、適当に歩いてみますか。
月明かりの下、何も無い草原を歩く。
少し離れた右手には森が広がっているが、森にはゴブリンとか居たりするんだろ?異世界的に。
少し歩いてみた感じ、普通に疲れるし、肉体的にもスキル的にもチートが無い今の状態で近づくのはちと無謀な気がする。
君子危うきに近寄らずっと。
時々足をとられながら歩く事30分(時計が無いけど感覚的にそんなもん)、小高い丘を越えると
「おぉ!」
思わず声が漏れた。
視線の先には、塀に囲まれた街っぽいのが一つ。
街はほぼ正方形で、俺が歩いてきた草原を南とするなら、東側に森が広がり、北と西に道が二本伸びている。
踏み固められてなくて歩きにくいと思ったら、街道から外れた草原だったらしい。
喜び勇んで走り出す。
足をとられて転ぶって言う典型的なミスをおかしつつ、30分かけて何とか塀に辿りついた。
近くに見えて、思ったより遠かったな。
塀を見ると、石が規則正しくで積まれおり、石の加工技術の高さが伺える。
日本の城と比較して考えると、少なくとも江戸時代よりは文明が進んでいるんじゃないだろうか。
直線距離で向かってきたので、街道からは遠く、恐らくあるであろう門からも遠い。
「ここからは慎重に行動しないとね。」
俺は塀に手を突ついて、歩き出した。
街が見えてからここまでで考えていたのは、お金と、服装と、転移者の3つ。
定石どおりであれば、街の中に入るにはお金が必要だ。
今の俺の格好も一般的ではないだろうし、黒い髪と黒い瞳が珍しいのもありがち。
過去に転移者が居れば、この世界でも日本街みたいなのが出来ており、そこ出身と思われる可能性もあるが、ここは悪い方に考えておいたほうがいいだろう。
それに、転移者は拘束され身体の自由と知識を奪われるという世界もある。
この世界での転移者の扱いが判らない以上、俺が転移者である事は隠したほうが無難だろう。
というわけで、まずは影から門の様子を伺おうという魂胆だ。
草原側の塀の角から街道側を覗くと、予想通り、門があるようだ。
だが、ここからでは門のところに何かがいるということしか判らない。
気配探知とかそいうスキルが無いことを期待しつつ、膝上まで伸びた草の中を匍匐前進で進む。
運動不足の身体が悲鳴を上げるが、ここで頑張らなくていつ頑張るの?今やるしかないでしょう!
自分を励ましつつ、じりじりと門に近づく。残り20m程、そろそろ様子を伺うかと思ったその時、
「△っじょ&%&$#+いls!」
突然の怒鳴り声に身体がビクッと固まる。
もしや見つかったのか?
恐る恐る草の陰から門の様子を伺うと、
「△っじょ&%&$#+いls!」
マントに身を包んだ男が、門番と思われる男にくってかかっているようだ。
良かった。俺が見つかったわけじゃなかったか。
でも、想定外に悪い事実が判明してしまった。
マントの男と門番の言い争う様子を伺っているのだが、何も理解できない。
そう、何を言っているかわからないんだ。
どうやら、定番の異世界言語とかいうスキルは俺には備わってないようだ。
これはヤバイな。情報収集どころじゃないぞ。
ぬぬぬ。どーする俺!
「痛っ」
これからの未来に立ち込めた暗雲。どうにかそれを晴らせないかと考察を重ねていた俺を襲ったのは、ふくらはぎの痛みだった。
思わず出た声に、慌てて門のほうを伺ったが、マントの男と門番は言い争いに夢中でこちらに気付いていないようだ。
ほっとしつつ、ズキズキ痛む右ふくらはぎに視線を送る。そこには、デニムから露になったふくらはぎに牙をつきたてる一匹の猫がいた。
慌てて横に転がって体勢を変えると、猫は俺を馬鹿にするようにひと鳴きして、草原の方へとかけていった。
あー、もう、何だあの猫!こっちは必死で悩んでんのに!ん?ていうか、猫?猫だったよな今の、この世界にも普通に猫っているんだな。
猫に対する怒りと、先の見通せない問題への諦観の念、そして少しの安堵。
それらが混ざり合った瞬間、強制終了したパソコンの如く俺の意識はプツリと切れて、
目を覚ますと体が縮んでしまっていた!




