テーマ×テーマ小説 (主人公:フラれた直後ベロベロの美女×現場:夜景がキレイな公園)
こんにちは、葵枝燕です。
この作品は、我が姉の唐突な思いつきから書き始めた作品です。
詳しくは、裏話も交えつつ、後書きにて語りたいと思います。
それでは、どうぞご覧ください!
美しい景色が拡がっている。白色だったり、黄色だったり、赤色だったり、青色だったり――電気代がどうとか考えなければ、夜景というものは美しいと思う。だからこそ、人々は人工的なこの景色を見て、キラキラと表情を輝かせるんだろう。それは、夜景が美しいと評判のデートスポットであるこの公園も、例外ではない。ベンチに座った私の前を通り過ぎて行く人々は、皆幸せそうだ。
だがしかし、だ。それを美しいと思うには、今の私は不機嫌すぎた。
「やってられないよ、全くもう」
安い缶ビールを一息に飲み干して、ため息混じりに吐き出してみる。そんな私は、他人からは一体どんなふうに見えているのか――よく考えずともわかることなのが、さらに私を不機嫌にさせる。
思い出すのは、一時間ほど前のこと。幸福の絶頂から、一気に不幸のどん底に落とされた、あの瞬間のことだった。
「ルイカ」
彼が、いつものように私の名を呼ぶ。私は、彼が私の名前を呼ぶのが好きだった。それだけで、いつだって舞い上がってしまうのだ。
「なぁに?」
付き合い始めて、七年の歳月が過ぎていた。ここ数ヶ月は、お互いに逢う暇さえなくて、ようやく都合が合ったのが今日だった。だからこそ、私は余計に浮かれていたのかもしれない。
彼の表情に、気付けないくらいに。
「別れてほしいんだ」
ワカレテホシインダ――その音が、震えながらどこかへ落ちていくのを、私は受け止めることができなかった。
「え……?」
「僕と、別れてほしいんだ」
二度言われてなお、私はその言葉を受け止めることができなかった。いや、受け止めることを拒絶していたのかもしれない。受け容れることが、どうしてもできなかったのだ。
「何で? ねぇ、別れるって本気? 私の何が厭なワケ? 思い直してよ」
整理しきれないまま吐き出した、その言葉の羅列が、私を自己嫌悪の海に突き落とす。
だって、縋り付くなんてみっともないもの。聞き分けの悪い子どもみたいで、自分で自分が厭になる。
それでも、理由が知りたかった。彼がそう決めた、確固とした理由を。
彼は、視線を幾度か彷徨わせた後、真っ直ぐに私を見つめた。その口元がゆっくりと動き出すのを、私はただ祈るように見つめるしかなかった。
あれから一時間ほど経つのに、あの瞬間は鮮明に蘇ってくる。まるで、今もまだ目の前で起こっているかのように。その度に、私を深い穴へと落とし込んでいく。
目の前に拡がる明るい景色を、憎たらしいと思った。
「不釣り合いだから? 僕にルイカは似合わない? 笑わせんじゃないわよ、そんなこと――……」
彼は、私に対してずっと引け目を感じていたのだと、言った。それでずっと苦しんできたのだと、言った。
だが、それが何だというのだ。
彼が私に対して引け目を感じていたように、私だって彼に対してそれを感じていた。外見しか取り柄のない私よりも、彼は充分に魅力ある人だった。私にとって、彼はそういう人だった。
中身は既にないとわかっていて、缶ビールに口を付ける。こんなことなら、三本くらい買うんだったと、微かな後悔が芽生え始める。酒に弱いことがわかっているから、一本だけしか買わなかったのだ。
「あー、もう!」
叫んで、立ち上がって、歩き始める。道行く人々が、驚いたように私を見るのがわかるが、全く気にならなかった。転落防止用の柵に手を付き、息を吸い込んだ。キラキラと美しい眼下の景色が眩しい。
「ミヒロのバカヤローっ! 私と別れたこと、後悔させてやるんだからーっ!」
酒の力を借りでもしなければ、そんなことはとても言えない。
だって、別れた今でも、彼のことが好きなのだ、私は。未練タラタラだと、わかっていても。
憎たらしいほどに眩しく輝く光が、それでも私には美しいと思えた。
ただ一つ、隣に彼がいないだけ。それだけが、物足りない。それだけが、寂しい。
そんな思いを振り切るように、私は叫ぶ。
「絶対絶対! 幸せになって、見返してやるんだからーっ!!」
『テーマ×テーマ小説 (主人公:フラれた直後ベロベロの美女×現場:夜景がキレイな公園)』のご高覧、ありがとうございます。
この小説は、前書きでも述べたとおり、私の姉の唐突な思いつきで書くことになった作品です。その思いつきというのが、「主人公と現場のテーマを五つずつ出し合って、それぞれから一つずつ引いて、それで何か書こうぜ!」と、いうものです。何ともまあ、どこでどうして考えついたのか、って感じですが、参加する私も私だとは思います。
そして、今回のテーマが「フラれた直後ベロベロの美女×夜景がキレイな公園」でした。主人公テーマは姉の考案で、現場テーマは私の考案です。
一時はどうなることかと思いましたが、こうして無事に一つの話を作り上げることができました。どうも、ありきたりなストーリーになってしまったところが、個人的には反省ポイントです。
ちなみに、主人公のルイカさん、漢字にするとしたら“涙花”です。“涙”を人名に使うのって少し抵抗があったので、カタカナにしました。でも、“涙”、人名に使える漢字らしいです。個人的には、漢字も響きもかわいい名前だと思っています。ただ……今ハマってるゲームの影響をかなり受けた名前だなとも思います。
実は、第二回のテーマ自体は決まっているので、書き上げたら投稿しようと思っています。
この度は、拙作のご高覧、誠にありがとうございました!