第13話 過去に蒔いた種
5月も末になると、曇りや雨の日が急に増える。それまで毎日見えていた景色から、急に色が奪われていく様に感じる。夏子は、決して梅雨が嫌いな訳ではないけれど、色の無い景色が何日も続くと、そこに変化を起こしたくてうずうずしてしまうのだ。毎日お粥ばかり食べていたら、時には歯ごたえのある物や辛い物を混ぜたくなる、そんな心境に近いかもしれない。
「おじゃましま~す」
慎二が初めて夏子の部屋に上がる。嬉しそうにキョロキョロ見回す慎二。
「結構さっぱりしてんだね」
「うん」
「ここ住んで何年だっけ?」
「・・・5年」
「の割に、荷物増えないね」
ドキッと一瞬 夏子に緊張が走る。しかしその後、慎二がすぐに笑って言った。
「性格もさっぱりしてるから、部屋もさっぱりしてる」
「かな?」
借りてきたDVDを、ベッドにうつ伏せに寝転がりながら観る。急に慎二が一時停止ボタンを押した。
「何?急に」
「ねぇ、さっき買ったアイス食べよ」
夏子が冷凍庫から持って来ると、再び映像が動き出す。最初の一口をまず慎二が食べると、もう一口をスプーンですくって言った。
「美味しい!ほら、食べてみ」
あ~んと夏子の口に運ばれたアイスが溶けて、すぐに幸せ色に頬を緩めた。
「俺にも、あ~ん」
甘えてくる慎二も、夏子には愛おしい。しかし、そうデレデレはしない。
「もう、今何言ったか聞こえなかったぁ~」
DVDを少し巻き戻す夏子だ。
アイスも食べ終わり、いよいよ映画もクライマックスに近付いた頃、再び慎二がDVDを一時停止した。
「何?」
「ねぇ、コーラおかわり持って来て」
「もう!さっき私持って来たんだから、今度は慎ちゃん行ってきて」
「じゃあ、じゃんけんね」
あいこが何回も続く白熱の戦いとなり、結局それを制したのは慎二だった。ガッツポーズをしてみせる慎二に対して、悔しそうな夏子だ。渋々起き上がって冷蔵庫に向かう。グラスに氷とコーラを足して戻ってきた夏子に、慎二がありがとうのキスをした。そして再び 二人は肩をくっつけて映画の続きを観た。
本編が終わりエンドロールが流れ出すと、慎二が仰向けに寝転がった。
「来年、ここ更新でしょ?」
「うん」
天井を見ながら話す慎二の肩にちょこんと頭を乗せて、夏子が答えた。すると慎二が言った。
「来年、一緒に住もう」
村瀬と長い事付き合ってきたけれど、こういう台詞はもちろん言われた事がない。自分だけを見ていてくれる人がいる。自分との将来を語ってくれる人がいる。そう思っただけで、夏子の心からじめじめとした梅雨の湿気が飛んでいく様だった。
朝、二人が一緒に出勤して車から降りると、そこへ珍しく村瀬も車で入って来る。
「おはようございます」
慎二が挨拶をすると、村瀬が夏子の顔を見た。
「お二人さん、ご一緒ですか」
即座に準備していた言い訳を言おうと夏子が口を開くと、慎二が先にフライングする。
「へへへ。内緒ですよ」
思わず耳を疑う夏子だ。村瀬は当然二人の顔を交互に見て、
「ふ~ん」
とだけ言った。夏子は思わず慎二に言った。
「そういう冗談、店長には通用しないから」
こんなごまかし、意味があるかは分からない。村瀬は意外に嗅覚がいい。別に二股をかけている訳ではないのだから、後ろめたい事はない筈なのに、同じ職場に しかもこんな狭い環境の中に、新旧の彼氏がいるのは やはり気まずい。
その日仕事を終えると、由真が久々にデスクでゆっくりしている。いつも定時と同時に帰っていくのに珍しい。
「慎ちゃん、ご飯食べて帰んない?」
「今日は急いでないんすか?」
「まぁね~」
そして由真は、夏子の方にも顔を向けた。
「夏子は?行ける?」
前に三人で行った焼き肉屋のテーブルに落ち着き、今日もビール片手に 由真は頬杖をついてじーっと夏子と慎二を眺めている。そして今日も肉をせっせと焼いているのは慎二だ。意外と鋭い由真にそわそわする夏子が、今日もノンアルコールのビールに口をつける。
直球の質問が、焼き上がったタンの上に飛んだ。
「二人、付き合ってんの?」
思わず慎二と夏子が目を合わす。その様子を見て、由真がニヤッとした。
「何?私にまで嘘つこうとしてんの?」
慎二は夏子の出方を待つ間、焼き上がったタンを網から取り皿に上げた。そんな慎二に、由真は的を絞る。
「慎ちゃん。随分立派になったじゃないの~。私の目ごまかせるとでも思った?」
そう言って、由真はタンを箸でつまんで 慎二の目の前でひらひらさせた。黙々と食べる間、夏子も慎二も どちらもはっきりとした答えを言わない。すると由真は網の上で新しく焼けたロースにも手を出して、今度は夏子の目をじっと見て言った。
「夏子も、随分水臭いじゃないの~」
そう言われ、夏子は箸を置いて両手を膝の上に揃えた。
「ごめん」
その言葉を聞いて、慎二もトングを置いて、両手を膝の上に揃えた。
「いつから?」
由真は片肘をついて、まるで取り締まり室の様だ。
「・・・最近」
夏子が言うと、由真は渋々納得した顔になる。
「でもね!」
そこで夏子が忠告を忘れない。
「誰にも言ってないの。だから・・・お願い!」
夏子が由真に手を合わせる。
「誰も?!」
「うん」
そう言ってから、夏子がはっと思い出す。
「今朝慎ちゃんが、店長に冗談交じりで言っちゃったけど」
夏子がじろっと慎二を睨む。
「ほんと、ああいうの。洒落になんないから」
慎二がごめんと言わないから、微妙に不穏な空気が流れる。その場を取り持つ様に、由真が肉を網に乗せて焼いて、出来た順にせっせと配る。
「ほらほら、食べよう。焼きたて、焼きたて」
その数日後、夏子がツアーの同行で不在だ。昼食に由真が慎二を誘う。
「慎ちゃん、お昼行こう」
ショップから出た途端、由真が慎二をからかった。
「今日は夏子が居ないから、寂しいでしょ?」
ははははと笑って、それを否定しない素直な慎二だ。それをまたからかう様に、由真が肘でど突く。
「何よ~、少し位否定しなさいよ~」
再び明るくはははと笑ってから、慎二が言った。
「なんでなっちゃん、会社で内緒にして欲しいんだと思います?」
「そりゃ、色々からかわれたり、いちいち面倒だからじゃない?仕事は仕事の顔があるしね」
「そういうもんすかねぇ・・・」
腑に落ちない慎二の顔に、由真が聞いた。
「慎ちゃんは、皆に公表したいの?」
「公表したい訳じゃないっすけど・・・」
「俺の事本当に好きなら、皆に堂々と言ってよ!みたいな?」
「別にそういうんでも・・・」
慎二が首を傾げながら、そう答える。
「じゃ、何?」
由真が慎二の顔を覗き込むように見るから、慎二はちょっと小声で聞いた。
「店長って・・・なっちゃんの元彼っすか?」
「え~?!」
もともと大きな瞳を更に見開いて、今にも目玉が落ちてきそうな勢いの由真だ。
「何?その話」
「なっちゃんから、何か聞いてませんか?」
「店長と?!」
由真が記憶を辿る様に、まん丸の目を上にギョロッと向けた。
「まさか~!そんなの、聞いた事ないわ」
「そうっすかぁ・・・」
慎二の声に元気がなくなったのに気が付いて、由真がまた質問した。
「何か、引っ掛かってるの?」
「引っ掛かってるっつうか・・・」
首を傾げる慎二。
「店長、やけになっちゃんの事に詳しいし・・・」
まだ続くだろうと 由真がじっと慎二の言葉を待っていたが、その後に訪れたのは無言の空気だけだった。すかさず由真がツッコミを入れる。
「ってか、それだけ?」
「なっちゃんも、絶対に会社では内緒でって頑なだし」
そこまで聞いて、由真が慎二の肩をなだめる様にポンポンと叩いた。
「慎ちゃんも、可愛い所あるね~。何にでもやきもち焼いちゃうんだね~」
まるで幼い子供を扱う様な言い方に、慎二が腐った顔をする。少しからかい過ぎた事を反省した由真が、頬を引き締めた。
「それにしたって、店長妻子持ちだしねぇ」
「前に、『私は男運が悪い』みたいな事言ってたし・・・」
「もし元カノが職場に居たら、さすがに子供生まれた話とか、あんなに大っぴらにしなくない?」
「でも、店長 そういう話する様になったの、最近っすよね?それまでは、一切言わなかったし」
「・・・まぁ確かに、私達も店長が既婚者だって忘れてたしね」
慎二の口からは、疑問が次々溢れてくる。
「出産祝い準備する役だって、相当嫌がってたし」
「・・・・・・」
「お祝い事、あんなに拒否しなくないっすか?普通」
「でも あれはさ、子供服とかグッズとか、経験者が周りに居ないから分からないって言ってたじゃない。だから、経験者の霧島さんになったんだしさぁ」
「ま、実際はそうっすけど」
納得しない慎二に、由真が少し声を張った。
「夏子に直接聞いたら?」
「聞いたけど・・・」
「何て言ってた?」
「・・・聞いたっていうか、俺が疑う様な言い方したから、『そういうの窮屈で嫌だって』不機嫌になっちゃって終わりました」
「う~ん・・・」
由真が唸ると、まとめる様に言った。
「痛くもない腹探られるのって、確かに気分良くないもんね・・・」
「だから俺、もうその話してないっす」
由真が慎二の肩をポンと叩いた。
「慎ちゃんもさ、過去の事なんか気にしないで楽しくやんなよ。店長よりも、何十倍もいい男なんだから」
由真が慎二をそう励ました日から数日後、やはり夏子に確認の質問が飛ぶ。会社でも会っていたのに、帰宅してからわざわざ由真から夏子に電話が行く。
「今、家?一人?」
「うん。どうしたの?電話なんて」
夏子が心配そうな声で聞いた。
「ちょっと、聞きたい事あってさ・・・」
そう前置きを置いてから、単刀直入に由真が言った。
「夏子あんたさ、店長と付き合ってた?」
夏子はすぐに声を出さず、しかし意外に落ち着いた声が由真の耳に戻って来る。
「・・・何?急に」
「ふとね。店長と夏子見てて、なんかあるな~って」
勘の鋭い由真が、もっともらしい言い方でかまをかける。
「何かって、何よ。変な事言わないでよ」
そう言ってから、夏子が「あっ!」と大きな声を上げた。
「慎ちゃんに何か言われたんでしょ?!」
「何?慎ちゃんにも言われたの?」
由真も白を切る。夏子がはぁと溜め息をつくのが、電話越しに由真の耳に届く。
「何、その溜め息」
「・・・別に」
「言っとくけど、慎ちゃんは何も関係ないからね。私の勘が勝手に働いちゃっただけ」
「・・・急に?」
「そりゃあ今までもちょっとずつは感じてたよ。だけど慎ちゃんと付き合ってるって言うから、確認」
夏子は再び大きな溜め息を吐いた。しかし由真はそれに屈しなかった。
「否定はしないんだね」
夏子はベッドにごろんと横になって、まだ慣れない殺風景になった部屋を見回して言った。
「馬鹿馬鹿しいから」
「一言『何もないよ』って言えば終わる話でも?」
夏子は目を瞑って答えた。
「じゃあ言うわよ。何もないよ」
「・・・・・・」
次の日仕事の終わりの定時を迎え、村瀬がショップを出るのをさり気なく追う様に会社を後にする由真。駅までの道に歩き出したところで、周りに知ってる顔がいない事を確かめて、由真が村瀬の背後から声を掛ける。
「お疲れ様です」
振り返って、村瀬が返事を返す。駅までそう遠くない。だから、由真はいきなり直球を投げ込む事にした。
「店長。いきなりで何なんですけど・・・」
村瀬はその後に来る質問など知らず、軽い気持ちで由真に顔を向けている。
「夏子と、付き合ってました?」
「え?」
「本当、いきなりですみません」
村瀬の表情からはまだ何も読み取れない。すると村瀬が顔を変えないまま言った。
「何?急に」
夏子と同じリアクションだ。由真の胸がザワザワっとする。
「店長にはご家族があるから、もし違ってたら凄く失礼な質問だって分かってるんですけど」
村瀬ははははと笑った。そして由真が更なる質問をして来ないから、村瀬が今度は質問返しだ。
「青柳がそう言ったの?」
「いえ・・・」
村瀬が由真の顔を見ながら言った。
「あ~!慎二か?!ねぇ、あの二人、付き合ってんでしょ?」
由真が顔を上げた。
「誰が言ったかはいいとして・・・、結論だけ教えて下さい」
村瀬は余裕の感じで、又はははと笑った。
「プライベートな事だからなぁ」
その言い方が、由真をからかっている様にも見える。だから由真の心に火が付いてしまう。
「店長も夏子も、否定しないんですね」
「青柳も?」
「はい。だから店長が否定しなかったら、もうそうだったんだって確信しちゃいますよ、私」
「う~ん、それはまずいなぁ」
「じゃ、きっぱり否定して下さいよ」
「やっぱ友達としては、不倫疑惑は晴らしたいもんね?」
何を聞いても暖簾に腕押しで、上手く村瀬にかわされてしまう。そこで由真が頭をひねる。
「わかりました。じゃ、最後に一個だけ。これだけはちゃんと答えて下さい」
村瀬は鼻でふふっと笑って、まだ余裕がある。そして由真が質問した。
「今は、もう夏子とは何でもないんですね?」
「・・・まあね」
相変わらず飄々としている村瀬に対して、由真の瞳が鋭くなる。
「今はもうって事は・・・そういう事ですね。わかりました」
「またまたぁ。あんまり変な事言うと、俺青柳に怒られそうだからなぁ」
さすがに村瀬は夏子と長い付き合いだけある。よく分かっている。村瀬がそう言った日から大して経たないうちに、夏子から呼び出しがかかる。今日は慎二がツアーの同行で居ない。
『話があります。いつもの所で待ってます』
そうメッセージを送る。仕事の後、慣れたコンビニの駐車場に停めた車の中で待っていると、今まで通りの合図で村瀬が窓をコンコンと叩いた。
「お疲れ~」
そう言って、今までと何ら変わりなく乗り込んだシートを自分のポジションに変えようとしたところ、夏子が冷たい声を刺した。
「もう自分の女の車じゃないんだから、位置勝手に変えないで」
棘のキツイ言い方に、村瀬は黙って手を止めた。
「俺、また説教受けんの?」
怖い顔をした夏子に先手を打つ村瀬。
「何の事か、分かってるでしょ?」
村瀬は首を傾げた。そのとぼけた顔に夏子がイラッとして、これ見よがしに大きな溜め息をしてみせた。
「よく、しらばっくれられるよね」
「夏子も、よく そうしょっちゅう怒れるよね」
その反撃に夏子の声が張り上がる。
「誰のせいだと思ってんのよ!」
言い終わった時にふと窓ガラスに映った夏子の顔が、想像以上に醜い顔をしていたから、思わず息を呑む。同時に、つい喉元まで出掛かっていた言葉達も、すっと消えて無くなった。
少し夏子が落ち着くのを待つ様に、村瀬が暫く外を眺めてから言った。
「ゴタゴタすんの やめようよ。せっかくの楽しかった思い出も、全部台無しにしたくないじゃない」
確かにそうだ。こんないきり立って相手を責めても、何も生まれてこないのだ。逆に失うだけだ。夏子が大きく息を吸い込むと、少し体の中の毒素が中和された錯覚に陥る。
「そうね・・・」
その時、夏子の携帯が電話の着信を受けて呼び出している。手に取ると、それが慎二からだと分かり躊躇する夏子だ。
「出ていいよ。慎二だろ?」
「・・・いい。後で・・・」
つい語尾を濁す、優柔不断の夏子がいる。
「出てやれよ。ラブコールだろ?」
そんな村瀬の言葉に驚く夏子だ。それを見て、村瀬がはははと笑った。
「分かるよ、夏子が慎二と付き合ってる事くらい」
かなりしつこく呼び出す慎二の着信が、なかなか止まらない。迷っている夏子の背中を、村瀬の一言が押した。
「出ないと、また変な疑い掛けられるよ」
夏子が慎二の着信を受けるが、やはり落ち着かない気持ちだ。しかし慎二は、そんな事を知らない。
「運転中だった?」
「あ・・・うん」
「停めた?車」
「うん」
「今どこ?」
「あ・・・近所のコンビニ」
「今日はまっすぐ帰ってよ」
前に慎二が居ない時に、村瀬とつけ麺を食べに行った事を遠回しに思い出させる発言だ。夏子は後ろめたさをひた隠しにして、返事をする。
「ねぇ、なっちゃん」
「何?」
「俺の事、好き?」
「・・・何よ、急に」
「ねぇ、答えてよ」
「・・・そんな事考えてないで、今は仕事に集中して。命預かる仕事だから」
言いながら夏子は、隣の村瀬の存在が気に掛かる。
「じゃ、帰ったらいっぱい甘えさせてくれる?」
「はい、はい」
「う~ん。でも、一回だけ聞きたい。そしたら俺、明日も頑張れるから。ね、お願い」
その時、隣の村瀬がくしゃみをした。
「あれ?誰か近くにいるの?」
「え?!居ない居ない。・・・っていうか、今コンビニの外からだから」
慌てて夏子はドアを開け、車を下りる。少し外の気配を届ける為だ。こんな行為、せこいと分かっている。
電話を終えた夏子が車に戻ってくるなり、村瀬を睨んだ。
「くしゃみは仕方ないでしょう。あれでも結構我慢したんだけど、限界だった」
本当に悪いと思っているのか疑問だ。そんないつもの態度に夏子が呆れていると、村瀬がニヤニヤした。
「ねぇ、俺の事好き?」
「え?!」
一瞬ドキッとしてしまう夏子だ。
「慎二、あんな事言うんだ?」
思わず言葉を失う夏子。
「この距離だからね。漏れて聞こえてきた」
「・・・・・・」
「で?言ってあげたの?」
「関係ないでしょ」
「帰ってきたら、いっぱい甘えたいってさ」
電話という二人きりの世界だと安心して話した慎二の素顔を村瀬に見せてしまった腹立たしさが、夏子を襲う。
「・・・もう帰って」
「なんだよ。そっちが呼びつけておいて」
「話、もう終わり。だから、帰って」
村瀬が車を降りかけたところで、夏子が運転席から言った。
「私、慎ちゃんと まともな恋愛し直そうって思ってるの。コソコソしない、堂々と外歩ける楽しい恋愛しようって。だから・・・」
「うん。それがいいよ」
まるで他人事みたいな相槌をして、笑顔で村瀬は車を降りて行った。