朝食の仕込み。
フミアキがお客さんからお話を聞いている時、コトちゃんはママ、サクヤと明日の朝食の仕込みをしていました。
♪♪♪
「ママただいまあ! セントアちゃんから聞いたよ、満室になったんだって?」
「そうなのよお、ソダンさんには感謝感謝ね♪ でも、明日の朝食をどうしようか悩みどころね」
私とパパは、ソダンさんから聞いていた筋張ってないお肉料理の話をママにしてあったんだけど、ママはまだどういった料理が良いのか決めかねてるみたい。
「ベーコンサラダにスープ、パンじゃあありきたりだし、馬刺し……って馬肉がないわね。う~んどうしようかしら?」
どうもこっちの人たちって、お肉は焼くか煮るか塊で食べることが多いみたい。ソダンさんはなんでかその中の、普通にお肉をやいただけの筋張ったのがダメっぽいんだって。そうなると後はミンチにする……ってもしかしたら?
「ねえママ? ハンバーグなんてどうかな、こっちの人たち食べたことあんまりないかも。もしかしたら気に入ってもらえるかもよ?」
「ハンバーグねえ、ハンバーグ……うん、お肉はウサギと鹿のがあったから、合わせ肉でいくとちょうどいいかもしれないわね。ウサギのお肉に一角ウサギも混ぜれば粘り気も出るし」
思わずあたりを見回しちゃったのは、クゥが聞いていないか心配になったから。やっぱりどうも家族になったクゥとおんなじ生き物を、クゥの目の前で調理するのは忍びない気がしたんだ。
幸いって言っていいのか、クゥはパパの方に付いていってるみたい。ふう。
ママが厨房脇の倉庫から、お肉を出そうとしてたから私がやるよって言って中に入る。だってママのお腹が、見るからにパンパンになってて、とっても大変そうなんだもん。そう言えばお腹の赤ちゃん、いつ産まれるんだろう?
「ねえママ? お腹の赤ちゃん、いつごろ産まれるのかって分かったりする?」
「え、赤ちゃん? う~んそうねえ、こっちに来てからお医者さんにかかってないからどうなのかしら。でももうすぐ三十七週に入る頃だと思うから、いつ生まれてもいいように準備しとかないといけなくなるわね」
そうかあ、こっちに来て北の山脈向こうから旅をしてからもう三ヶ月は過ぎてるし(日本とこっちも、そんなに時間の長さ違わないみたいだから良いよね)、いつでもおかしくないんだ。不思議、ついこないだまでパパなんてぜんぜん気づきもしなかったのが、もうそんなにしないで私にも弟か妹が出来るんだ。これって凄いことだよね! うんうん。
いけないいけない、今はそのことで浮かれてる場合じゃなかったね。私はママに負担がかからないようにお肉を倉庫から調理台の方に運び出した。その間にママが他の食材や、調味料を用意していく。
「さあ、それじゃあいっちょいってみましょうかね♪」
出た、ママお得意の歌いながら踊りながらのお料理の始まり始まり!
♪ 美味しいハンバーグを作ろう!
ハンバーグ、ハンバーグ! 美味しいハンバーグを作りましょう、まずは玉ねぎにんじんみじん切り。人数いっぱい、ボウルにいっぱいみじん切り♪
パン粉とミルクをコネコネ、ってあらどうしましょ? そうね、堅焼きパンを粉々に。ちぎってちぎって袋に入れて、木の棒で叩いて細かくしましょ。白パンのふんわりも、一緒にちぎっておきましょう。ミルクは牛さんいないからヤギさんの。濃厚ミルクを用意して。
お肉は合挽き、鹿肉さんとウサギさん。手動の小さなミンサーだけど、あって便利なチートの道具! ぐるぐる、ぐるぐるハンドル回し。一角さんのもぐ~るぐる。出来たミンチをボウルに入れて、一心不乱にこねるべしっ! 粘り気出るまでこねるべしっ! てらてらぎっとり粘ったら、タマゴを入れてこねるべしっ!
パン粉とミルクのシャバシャバを、ボウルに入れてこ~ねこね。玉ねぎにんじん入れて、こ~ねこね! ゆるくなければもすこしミルク。ゆるくていいのよ、大丈夫。
出来たハンバーグだねはとっといて、しっかり寝かしておきましょう。試しに少し取り分けて、夕飯分だけ焼いちゃおう!
キュオちゃん火力があるから、ここはキュイちゃんの出番よお♪
竈の下にキュイちゃんスタンバイ! フライパンに、ハンバーグだねを入れて等分に。形を整え蓋をして。さあキュイちゃん、ボッと優しくお願いね。弱火でじっくり五、六分。焦げ目がついたら裏返し。おなじくじっくりジュウジュウしたら、作っておいたお水にケチャップ、ソースダレ、まぜまぜかけて煮詰まらせよう! 水分飛んだらさあ完成。
ふわふわジュウシィ~ハンバーグの出来上がり~♪
すごいすごい! とっても楽しそうにママが作るのを、私はほとんど見てるしかなかった。ハンバーグを焼いてる時に見ながら、裏返すのは私がしたんだ。もっとお手伝いしたいけど、こんなに気持ちよさそうに動くママの邪魔にしかならないと思うと、ごめんねママ。私まだまだだね。
「ふう。どう、今の見てた? 私が動けなくなったら、コトちゃん、あなたが頑張るのよ。出来そうかなあ~?」
そうだ、ママがお産で動けなくなった時には、私がやらなきゃいけないんだ。どうしよう、私に出来るのかな。とおっても心配。それでもやんなきゃいけない、私たち家族のお仕事だもんね!
「うん、最初はママみたいに上手くいかないと思うけど、私頑張るよ!」
そういう私をママは、優しく頭をなでようとして……やめてもらった。だって、ママのお手々ギットギトなんだもん~!
こうやって出来上がったハンバーグを、ラウンジでお客さんとお話しているパパに持っていってあげた。お客さんには、ママがお酒のお供にってアメフラシの酢の物とかを用意して先に持っていってあげてたんだけど、ハンバーグを見てお客さんの目の色ががらっとぐわっと! 変わったのが分かったの。特にソダンさんが、口をぽか~んって開けて、物欲しそうにパパが口に運ぶのを見てたのがすんごく面白かったあ。これは絶対、朝のお食事でソダンさんの胃袋、つかんじゃうかもね。
みなさんにもぜひリピーターさんになってもらって、今日みたいにまたお客さんを紹介してもらうんだから。あはは、パパがハンバーグ、取られないようガードしながら食べてるよ♪
お読みいただき、ありがとうございます♪
今日は、なろうの作家仲間さんからサイト内では二本めになるレビューをいただきました! よろしかったら、上のタブからご覧ください♪




