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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第二部 第二章 黒いマント。
81/104

防具屋さん。だけど?

 防具屋さんの続きです。


 そのままよっちゃんにお願いしました。

♪♪♪


 にかあっ! って笑ってファスタ様にず~んって顔を寄せる男の人。


 とっても大柄のひげもじゃさんで、燃えるような赤い髪の人がファスタ様にすごんでる?


「商売っ気ないとはまた随分な言われようですなあ! これでも領府御用達の防具屋ですぞ、まあ一見客はほぼ皆無ですがなっ!」


 がっははと豪快に笑って、ファスタ様の肩をバンバン叩いているのをレッセンドリさんが慌てて止めている。


「ちょっと親父! 止めろって、ファスタが地面に埋まっちまうって!」


叩かれてるうちに足がお店の地面、土にめり込んでいってる!? 私はわたわたと心配に慌てちゃったんだけど、当のファスタ様は平然としたお顔で、


「親方、判ってるから僕を人柱にするのは止めてもらえないかい?」


 そう仰って親方? レッセンドリさんのお父さんと目を合わせて苦笑いをされた。


 どうしてファスタ様のすることって、いちいち様になってるんだろう? けしてキザとかそういうんじゃなくて、なんていうのか……されていることはあまりカッコよくはないんだけど、コトちゃんを探してる時に悪者から私に目がいかないようにしてくれた時にも、おんなじように感じたの。


 カッコイイなあ。


「ははっ、領主様のご子息を人柱にですと! それも店の格上げになりますかな? 冗談ですよ、冗談!」


 とんでもない冗談を言う親方さんに、ファスタ様だけではなく私たちみんなが苦笑いしてしまったのは言うまでもないよね。もうすごい心配しちゃったよお。


 ズボッとファスタ様をごぼう抜きし(っ!)、いい笑顔で私たちの方をまんべんなく見やる親方さん。


「これはこれは……いずれも劣らず、緑鉱貨に等しい稀に見るお美しさだ! してファスタ様、跡を継がれた際にお子をお産みになられる方はどなたで?」


 な、なんて冗談を言ってるの、親方さんっ? マイヤさんやコトちゃんはわかるけど、私なんか普通の女の子ですよ! あ、ママごめんね?


「またそういうことを言うんだからなあ、親方は。そんなじゃないですよ、今日はお願いがあって来たんですよ」


 上手く? 切り抜けたファスタ様のお言葉に、親方さんがおやっ? って顔をした。


「お綺麗なお嬢さん方を連れて、こんなむさ苦しい防具屋にお願いとは。なんでしょう、先程のお印の話もありますからな、内容によっては腕を振るいますぞ!」


 そうなんだよね、どうして防具屋さんに私たちを連れてきたのかずっと不思議だったの。


「うん、そのことなんだけどね。親方、この鎖をもっと小さくして、ヨシアさんのかけているような首飾りを作れないだろうか?」


 そう言ってファスタ様が、私の方に近づくと胸元を手で指し示したの。みんなの視線が私の胸の方に集まって……ってはずい! とってもはずいです、ファスタ様っ!


 私は後ろを向いて、シトリンのペンダントを胸元から取り出してファスタ様に手渡した。


 手渡してから、気づいた。まずいまずい、つい今まで直に胸元に吊るしていたペンダントよ? それってそれって、かなりまずいんじゃないの? 胸のぬくもりであったかかったらどうしよう? よけいにはずいことになってる!?


 私がふるふるしていると、ママとマイヤさんが慰めるように寄ってきてくれて。少しだけはずいのが薄れた頃、親方さんの驚いた声が響いたの。


「うおおっ、これはまた細かい細工がされている上品ですな! どうやって輪を繋げている? これだけ細く小さな輪だとロウ付けではないし……」


 おっきな手なのに、とっても丁寧にチェーン部分を調べているのがなんだかミスマッチで、くすってしちゃった。すみません、親方さん。


「この親方はね、この風体だけどとても器用でね。父や騎士隊の要望に応じて装飾物も作ってくれるんだよ。だからもしかしたら、ヨシアさんの注文にも応じてくれるんじゃないかと思ってね。どうかな親方、同じようなものをすぐこしらえられるだろうか?」


「すぐにですと? むむむ。一両日はいただかないと……いや明日の夕方、五の鐘以降であればなんとかやってみせましょうぞ!」


 そう言って、厚い胸板をぼんって叩いて私を見ながら、バチンってウィンクしてくれたの! あはは親方さんったら♪


「さあてそれではお印をいただけますかな! うちのがこの鎖帷子にとお願いしていたが、それでいいだろうか?」


 コトちゃんに親方さんが腰をかがめて尋ねたら、コトちゃんはとっても深みのある笑みで返したの。真剣な表情で、なんだか魔法の力がコトちゃんの身体からあふれ出すような……あ、でも前みたいに空気に色が付いちゃったり、♪ が作られたりはしなかった。


「はいっ、精一杯頑張ります!」


 そう言ってコトちゃんは、人型の木枠に掛かってる鎖帷子に向かって静かに息を吐いてから、言葉を連ねた。さっきのリンゴ屋さんの時と違って、強い感情が私の持つシトリンにも流れ込んでくるのが解ったの。とっても強い意思? みたいな言葉。歌うのと違う、言葉を直接飾られた鎖帷子に刻みつけるような。



さあしゅっぱつだ


ゆくさきにあるきけん


こころにかげるふあん


あいするもののため


いえでまつこのため


てきにかつちからはいらない


いのちまもるちからをここに



 目の間の鎖帷子にコトちゃんの声が乗っかり、銀色の鈍い光を放っていたチェーンが淡い黄色に光りだした!


 その光は、鎖帷子と人型を淡く照らし出していてそこだけ、安心だよ~、安全だよ~って雰囲気が漂っている気がするの。ううん、間違いなくそう思える。


「こ、これは期待以上の代物に変わりましたな! これならうちの防具にお客が殺到すること請け合いだっ!」


 感謝しきりの親方さんに、抱きかかえ上げられてくるくる回っているコトちゃん。お疲れ様でした♪



 コトちゃんの働きにいたく感動した親方さんが、私たちのペンダントのチェーン作成代はただでいいって言ってくれた。良いのかなあ、ほんとに。コトちゃんは頑張ったけど、私はなんにもしてないのになあ。


「よっちゃん、よっちゃんがいてくれたから上手くいったんだよ? 見守ってくれる人の気持ちがあって、初めて強い心を持てるって思えたから」


 そう言ってことちゃんが、私に抱きついてきた。コトちゃん、少し背伸びたね。


 コトちゃんからは石けんの良い匂いがして、濡れ羽色だっけ、綺麗な光沢の髪が輝いて光を放った気がした。

 もう少し早い時間に投稿するところ、この時間になってしまいました。


 いつもお読みいただいている方、ありがとうございます。


 初めて読んだ方……でいきなり最新話はないですね、チラ見の方もありがとうございます。


 この後は、もう少し東側を案内してもらってから宿屋によっちゃんたちをお連れすることになります。


 ではでは次回にまた。

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