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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第二部 第二章 黒いマント。
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防具屋さん?

 ウラヌールの町の東側。よっちゃんがコトちゃんとお揃いのものが欲しいそうです。


 冒頭の記号ですが、よっちゃんも♪ です。わかりづらいかな……、でもコトちゃんとの繋がりがあるからご了承下さい。

♪♪♪


「さあ次はどこに行こうか、なにかご要望は?」


 明るい口調でファスタ様が仰ったので、私たちは顔を見合わせて少し話し合うことにしたんだけど、みんなバラバラの意見でまとまらなくって。


「はいはいっ! 私、食べ物屋さんに行きたいな、ヤクンドさんのとこ以外まだよく知らないから!」


 コトちゃんは食べ物屋さんに行きたいみたい。コトちゃんらしくて微笑ましいな。


「私はお土産を買いたいわね、せっかく異国に来たんだものね」


 うちのママは旅行ではいつも、その土地ならではの物を探すのが大好き。私もだけど、今は違う気分。


「ヨシアさん。あなたはどう? 東側は他の地方領と街道で結ばれているから、装飾品や小間物に衣服なども豊富よ。今は時節柄往来が多くはないから、棚揃えが少々心許ない気もするけど」


 私の目を見て、丁寧に説明してくれるこのお姉様は、コトちゃんたちをいつも見守ってくれてるマイヤさん。背が高くて、日に焼けた健康的なお肌。髪は金髪なんだけど、青みがかっていてとても綺麗。小さなお顔に大きくて強い眼差しの瞳が印象的な、行動派美人さん♪


 コトちゃんの周りには、マイヤさんのように助けてくれる人がいっぱいいてくれる。親友の私も安心だけど、今回みたいなことが当たり前のように起きているんだったら、とっても心配になってしまう。ここは日本とは大きく違うんだなあ。改めてそう思う。


 コトちゃんはそれでもここで頑張ってくんだね。顔や行動を見てると判っちゃうんだ。だってコトちゃん、すごおくいい表情になったし、大人っぽく? なったもんね。


「はい、私は……シトリンを首から下げる、こういったチェーンみたいなものを探したいんです。コトちゃんにもらったこのシトリンを、お揃いのチェーンで肌身離さず持ってたいんです」


 そう私が言うと、マイヤさんが優しく目を細めながら言ってくれる。


「チェーンって、その鎖のことね……そう、それは良いことだわ。繋がりをより強くしてくれるし、音石の『力』も安定するようになるかもしれないから」


 ファスタ様にマイヤさんが案内を乞うと、ファスタ様は嬉しそうに私たちを一件のお店に案内してくださった。


 そのお店は東側の門(すごおく綺麗な装飾が施されているの!)の近く、たくさんの小さなお店が軒を連ねている一角にあったの。


 お店の入り口にはなにやら看板みたいのが掛かっていて、なんだろう、鎧? みたいな絵が描かれていたの。どう見てもその絵は、アクセサリー屋さんのには見えないんだけど……


 お店の入り口の扉を押して中に入ると、左右に並んでいる人型に着せられた鎧……じゃなくって、え~となんて言うんだっけ?


「いっらしゃいませっ! ってファスタ様? こないだ来られたばかりなのに、またのお越しをありがとうございます! ってどうされたんですか、こんなに女性を引き連れて!?」


 明るい男の人の声がしてそちらに目をやると、まだ若そうな、そうたぶんファスタ様と同い年くらい(ファスタ様は私たちより、三つ年上だって聞いちゃったんだ♪)の人で、ファスタ様が細い綺麗な銀髪に対して、この店員さんは明るい赤茶色の髪色をしていた。


「レッセンドリ、いつも言ってるだろ? 僕と君の間では呼び捨てで良いんだって。親方はお出かけなのかな?」


 レッセンドリさん? は嬉しそうな顔をファスタ様に向けて、


「そう言ってくれるけどさ、やっぱり学院の中や町の外とは違うんだから仕方ないよ。あ、親父は今寄り合いに行ってて当分帰ってこないかもなあ」


 親しげに話し始めるレッセンドリさん。お二人は同級生さんなんだあ、どちらに通ってるんだろう?


「あのう、ファスタ様? 学校に通ってらっしゃるんですか?」


「え? うん、そうですよ。レッセンドリはぼくの学友で、よく町の外で一緒に魔物狩りをしたり薬草採集に付き合ってくれるんです」


 そう言われたレッセンドリさんは、ぶんぶん首を振りながら否定されたの。


「いや違うんですよ、お嬢さんっ。僕は学院生って訳じゃなくって、たまに行われる公開授業に参加させてもらってるだけなんです。ファスタ様にはとても良くしてもらっていて、その恩返しっていうか……」


 そんな様子にコトちゃんがくすくすって笑った後、


「つまり、ファスタくんとレッセンドリさんは大の仲良しなんですよね? 見ててわかりますよお~♪」


 って言ったので、ファスタ様がそうそうと頷いた。


「そうだよ、それでいいじゃないか! 僕とお前の仲だろ、なあ?」


 あ、今ファスタ様が尻尾振ってるように見えたっ! コトちゃんの言ってた通り、ファスタ様ってワンちゃんっぽいのね。年上の方なのに、なんか可愛い。


「う、うんまあ、そうだね。ありがとう、そちらのお嬢さん……って、もしかしてさっきリンゴ屋の前で『力』を使われていた力持ち様で? ええ~すごいなあ、本物の力持ちの人に会えるなんて!」


 なんだか急に目がキラキラしだしたよ? その目の感じ、どっかで見たことあるの。どこでだっけ?


「お願いです、よかったらなにかお印をいただけませんか? 力持ちの人のお印があるのとないのとじゃ、お店の格が全く違うんですよ! なんでもいいのでお願いします!」


 コトちゃんがびっくりして、若干引き気味になってる。これって、もしかしてアイドルとファンの感じじゃない? そうだ、サインをねだってるファンそのものみたいだ!


「え~っと、その、私そんなたいしたもんじゃないですよ? 力持ちって言っても、まだなんにもわかってなくて……」


「いやいやなにを言ってるんですか、すごかったですよ店のリンゴがみんな輝きだして、僕も買って食べましたけど美味しいのなんのって! お願いします、ほら、ファスタお前からも頼んでくれよ!」


 あれあれ? タメ語になってるし。そんなレッセンドリさんのお願いにファスタ様は苦笑いしながら、


「コトちゃん、悪いんだけどお願い聞いてあげられるかな? リンゴ屋さんの後でまただから疲れてると思うけど、そのぶん後で勉強させるからさ?」


 コトちゃんはうんうんしながら考えていたけど、顔を上げた時にはもうしっかりとした表情に変わっていた。こういうところが大人っぽく感じさせるんだね。


「うん、わかった! やってみるね。じゃあ、どうやるかは置いといて、なににその、お印? って付けてほしいですか?」


 レッセンドリさんはとっても嬉しそうに店内を見回して、入口近くに飾ってあった鎖の鎧? みたいなのを指差して、


「これにお願いできるかな? うちの店の看板商品なんだ。鎖帷子って言って、とっても軽くて丈夫なんだよ!」


 とっても自慢げに話すのに、ファスタ様がこう応える。


「レッセンドリの親父さんは防具作りの職人さんでね。とても腕が良いんだけど、あんまり商売っ気がないんだ」


 そうファスタ様が言った矢先、入り口の方から大人の男の人の声が聞こえた。


「商売っ気がなくて悪かったですな、ファスタ様?」


 戸口には、レッセンドリさんよりも濃い、燃えるような赤い髪をした筋肉もりもりの男の人が立っていた。


 その男の人は、にかあっ! っておっきな口を開けて笑っていた。

 お読みいただきまして、誠にありがとうございます!


 話途中ですが、いったん区切りをつけます。次話は、おそらくそんなに間を置かないで執筆投稿できると思います。

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