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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第一章 運のないパパ。
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濡羽色のポーチ。

 更新ですっ


 今回は少し変則的で、パパ~コトちゃん~ちょっとだけママ~コトちゃんとなります。


 わかりづらいかもしれませんが、それぞれの心情をお感じいただけると嬉しいです♩

◇◇◇


 後で詳しく話そうと言って、いったんコトとのやり取りを終わらす。ふう。

 

 しっかしなあ。びっくりしたってのはあるが、それよりもなんて言うか、しっくりくるのは……納得かなあ、うん。納得。ああ、やっぱりそうだったんだなあ。って。


 コトは、俺が布に施した作用、つまり普通の人には布自体が見えにくく、その中に隠してあるものが認識されにくいようにしたのを見破ったんだ。いくら俺の中の『力』が制限されていても(これには、事情があるんだ。今はちょっと……)、そうやすやすと看破されるはずがない。そうでなきゃ、咲耶にとっくにばれている。


 これはつまり、コトにもなんらかの『力』が備わっていると考えるべきだ。俺とは違う。押し付けられたものと、授かったものものの違いは大きい。


 でも、なにかコトに危険なことが起こったり、災いが降りかかったりするのは避けないといけない。それだけは絶対にだ。

 なんとか上手く会話を回避するか、それが無理ならどうにかして導くことが出来たら。


 うう、頭が痛くなってきた。



♪♪♪



 夕ご飯の支度をして、みんなで食卓についた。

 今日のメニューは、春キャベツの入ったポトフと、たっぷり野菜と豚肉の蒸し蒸し焼き。じゅる♪


 ママは、大量に作るお料理が得意だ。多く作って、次の日も食べられるようにして節約にもなるし、ご近所さんにもおすそ分けなんかしてるんだ。とおっても評判で、お店開いたら? なんて言われる。あ、これってもしかしたらもしかするかも? むふふん!


 パパを見ると、心なしか悩んでいる様子。やっぱりさっきのことが原因だよね。


 普通に考えたらとんでもなくびいっくり! なことなのに、私がしごく冷静でいたのと、隠しておいた場所が見つかっちゃったこと。


 だいぶ前に、パパから占い師をやってたってちらっと聞いたときは、正直引いた。

 だって自分の身近に、はいはあい!私占い師やってまあす! って人いる? あんまりないシチュエーションだよ。


 そのときはなんてお仕事のバリエーション豊富なの? って思ったけど、普段からあんだけいろんな種類の本を読んでいるパパだ。占い師になる方法や占い方、もしかしたら簡単な魔法や呪文なんかも知っていて当然。

  不思議とそれがおかしなことには思えなかったんだ。うちのパパならありえるねえって、自然と納得できる。変かなあ、私って?


 考え事をしながら食事をするって、作ってくれた人に失礼だよね。ママごめんなさい。

 でも、これも私たち家族の危機を乗り切るためなんだからね。許してね。



♡♡♡



 ん~ん? 二人ともどうしたのかしら。いつもならもっとにこにこ、私の作ったものを美味しそうにぱくぱくしてくれるのに、なんだかとおっても静かなの。

 あ! ポトフがあんまりにも美味しすぎて感動でひたひたしてるのかも。そういえば、蒸し蒸し焼きが減ってないな。これはもしかして、私に美味しいポトフの感謝で、お礼にいっぱい食べてねってことなのかしら。じゅる♪



♪♪♪



 ママが、ふるん? って顔してるよ。

 

 私は蒸し蒸し焼きを、ママのお皿によそってあげた。



 夕ご飯の片づけが終わり、お風呂は私、ママ、パパの順番。


 お風呂上りには髪の毛をタオルで包むんだけど、いろんなやり方があるみたいだね。私はあんまり長くないから、普通に後ろから真ん中に向けて上げて巻くだけ。

 大親友のよっちゃんは、髪の毛ふわんふわんだからいろいろ大変みたい。タオルの短いほうを三つ折にしてから、両端をくるくるって三回袖を捲くるようにして広げて被る、羊巻きっていうのをやってみたらすごおく可愛いんだけど、上にずってきちゃったんだって。長めのタオルだと、たれ気味になってぷりちぃ~かも。


 本部屋に移る前に、ドライヤーをかけていく。

 黒い髪、嫌いじゃないけどありきたりかなあって思うときがある。ヨーロッパとかの人には人気あるんだっけ?

 日本人の髪は特に太く本数が少ないから、光の加減でつやつやに見えるからなんだよね。

 

 わたしはどうなんだろ。自分じゃよくわかんないや。


 本部屋でまったりしていたら、パパがやってきた。短かく刈り上げた髪、私とおんなじ切れ長の目に一重まぶた。私が似たんだね。いい意味で日本人らしいといえばらしい。


「待たせたな、ごめんごめん」


「大丈夫だよ。あ、飲み物もってきてないや、なにがいい?」


 私は立ち上がりながらパパに尋ねた。


「じゃあ麦茶がいいな、ありがとな」


 台所に入り、冷蔵庫を開ける。麦茶と、ん~牛乳にしようっと。コーヒーは時間かかるし、あんまり美味しくいれられる自信ないし。


 本部屋に戻ると、まあるいローテーブルの上になにか袋?みたいな物があるのが見えた。

 飲み物をその袋の前にとんっと置いて、ソファーに座る。


 横に座るパパの視線が、さっきの袋を指している。


「綺麗な袋だね。あ、ポーチかあ。黒じゃあないよね……」


「っ! 分かるか、やっぱり。ああこのポーチの色は濡羽色ぬればいろっていって、黒いけど紫にも緑にも見えるんだよ」


 そうパパは言って、袋を手に取る。


 ん? なにか聞こえたような。気のせいかな。


「コト。仕事のこと、心配かけてごめんな。パートの人たちはハロワの葉山さんにお願いしてあるし、うちの方は父さんがなんとかする。だから安心して……」


 パパのしゃべる声が、まるでフィルター越しのようにくぐもって聞こえる。その代わりに聞こえるというか、強く意識されるものがパパの手の内にあった。


 私は目をすがめて、濡羽色のポーチを凝視した。


『なにみてるのよ じろじろと いまいいとこなんだから ほっといてくれる』


 ほえあっ? ポーチにツンされたよ、私!


「ぱ、パパ! あのね、あのね、ポーチが私にツンしたよツン!」


 なんのこっちゃ?って小首を傾げて、パパが私の方に意識を向けたとたん、


『じゃましないでよ ひさしぶりにさわってもらって きにかけてもらえて しあわせだったのに』


「ご、ごめんなさいっ! そうとは知らずにお邪魔しました、どうぞ、ごゆるりと!」


 ツンじゃなかたよ、さびしんぼさんだったよ! 悪いことしちゃった。しょぼ~ん。


「コト? どうしたんだ、急に変なこと言い出し」


「パパは黙ってポーチさんをなでなでするっ! 優しく愛情もってほら、真剣に!」


 気圧されたのか、言われたとおりにポーチさんをなで回すパパ。当のポーチさんは、とおっても嬉しそうな色合いに変化してました。


 ツンデレさんのポーチ……。

 お読みいただき、感謝です!


 次話から物語が動いていくはずです。


 コトちゃんパパさん、お願いだから暴走したり、突然いなくなったりしないでね?

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