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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第二部 第一章 町の実状。
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宿屋の中で。

 まだシリアスパートが続きます。


 フミアキさんよろしく。

◇◇◇


 ファスタから詳しく話を聞くために、俺たちはラウンジスペースに移動して、軽く埃を払ったりして集まった。


 さっきの話しっぷりじゃ、俺たち家族だけの問題じゃなくなってきている感じがした。ようやっと町に着いてこれからって時に、どこまでついていないんだろう。つくづく自分の運のなさを恨む。



 ラウンジは六角形の形になっていて、少し掘り下げて低くなっている。壁沿いにソファーが置かれ、贅沢なことに周囲をガラス張りにして、林から覗く光が入ってくるようにしている。

 中央にはでっかい円形の木のテーブル。入って左手に、大きめの暖炉があった。

 右手には、洒落たバーカウンターまで完備されている。


 はっきりしときゃなきゃいけないことが多すぎる。


「ファスタ。まず訊きたいんだが、本当にこの宿屋が俺たち家族が住んで仕事をする場所で間違いないんだな?」


「……」


「どうなんだ? 領府では、転移する人間のことはすべて把握しているわけじゃないのか?」


「すみません、実はアマクニさん一家がやってくるのは知っていましたが、詳細に関しては商工ギルドからあがってきていなかったのです」


 ファスタが苦渋の表情で答える。


「それはあれか、フォーヘンド様がお倒れになっていたことと関係があるのか?」


「っ! ……そうです。父上の病状が優れず、その間地方行政が滞るのを恐れた王都から、地方監督官、つまり代官が送られてきました。今でもウラヌールの実政は、代官が居座っている商工ギルドで行っているんです」


 そうか、それで商工ギルドの対応が良くないと感じたんだ。ギルド長が代官となんらかの関係があるのは、同じ建物の中に代理の行政府? を置いてるところからして明白だしな。


「その代官との関係はあんまり良くないってことだな。情報のやり取りも上手くいかないってことか……」


「はい。それどころか代官は、王都から派遣された監督官という権限を悪用して、町の運営にあれこれ指図を出すよいになっているんです。今では商工ギルドもその片棒を担ぐようになり、徴税官を抱き込んで私服を肥やしているとの声もあがってきているんです」


 これはまずい時期に来ちゃったかなあと改めて思ったが、こうなったら腹をくくるしかないか?


「今の時点で、領府側についているのは?」


「あまり多くはありません。町の人々は父上の善政を知っていますから味方してくれると思いますが、領府内もほとんどが代官派です……しかし、地方巡察府と『船運び』の部署は独立色が色濃いので、我々の味方をしてくれるはずです!」


 う~ん、ほとんど手詰まりって感じじゃないか。お膝元からして信用ならない状況。宿屋を始めるどころじゃなくなってるなあ、これは。


「さっき言ってた、この宿屋をやっていた家族が死んでいたってのは?」


「これも父上が倒れられてからのことなのではっきりとはしないんですが……どうやら徴税の関係で経営が思わしくなくなってしまい一家で、その……」


 コトハが口に手を当てて、切れ長の目を大きく見開いている。サクヤもふるふるしている。


「その代官がぐるになって不正を働いてるのがはっきりしているのなら、早いとこその職を外してしまったらどうだろう? それが難しそうなら、中央に届け出て決着をつけてもらうとか」


 ファスタは少し押し黙ってから、重い口を開く。


「それはぼくにはなんとも……。父上がこのまま順調に回復されれば、代官の職は解かれ臨時の体制はなくなるとは思うんですが、確証が持てません。妨害される危険性もあるので、届け出るといっても容易ではないと思います」


 しかし、なんで領主の病気中に送られてくる代官が、そんな暴利をむさぼることになるんだ? あのゾーンといい、今度のことといい、日本にはない不安要素が多い。

 だからと言って、もう後戻りは出来ない。やれるだけのことはやらないとな。


「サクヤ、コトハ。この宿屋、俺は気に入ったんだけど二人はどうだ?」


 少しずるい訊き方になるけど、これからも一緒に暮らして、共に頑張っていかなきゃならない。だからこそ、二人の気持ちを確認しておかなきゃならない。


「フミアキさん、私はあなたについていくだけよ? これまでも、これからもね♡」


 お、おう。照れるなあ、なんか。


「私もおんなじだよ。この宿屋さんはすんごおく優しくて、あったかあい感じでいっぱいだから好き。理由はまだわからないけど、不幸にあわれたご家族のためにも、私たちが盛り立てていかないとだめだと思うの。」


 またコトハはなんて……、よし腹は決まった。そうとなれば、行動あるのみ!

 俺たち家族に出来ることをしていこう。


「とりあえずやれることをやっていこう。俺はタロットカードでゼファーじいさんに確認をする。コトハは、この宿屋でなにか感じられるか試してくれ。そうだな……ファスタ、アメフラシさんとコトハに付いていってくれ。サクヤは軽く食事を作ってくれないか? マイヤさんと一緒がいいだろう」


 みんなに確認をすると、賛同を得られたのでそれぞれに別れることに。


 サクヤとマイヤさんは、食道の台所が使えるか見に行った。コトハとファスタ、アメフラシさんはどうやら二階に上がってみるようだ。


 俺はこのラウンジで、ポーチに手をかけカードを取り出した。

 いつもお読みいただき、ありがとうございます。


 次回は、三つの場所ごとに違う展開を。


 

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