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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第二部 第一章 町の実状。
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町の南側。

 あれ、もう日にち変わってた。。


 今回もコトちゃん目線でよろしくです^^

♪♪♪


 けほけほしているファスタくんを先頭に、領主様のお屋敷を出る。


 お屋敷は尖塔の南側、南大路から領府の南門を抜けたひろ~い中庭にある。中庭って言い方じゃあ伝わりにくいよね、だって真ん中には首をう~んと上に向けないとてっぺんも見えない塔があって、その周りにもいろんな建物が建ってるの。その中の南側が領主様のお屋敷ね。他の建物は、たぶんなんかの物置……倉庫だったり、やっぱりお役所だったりするのかな。


 小さいけど森があったり、池があったり。周りをぐるって領府の建物が囲んでいるから、とても静か。


 でも、ゾーンや『闇の使い手』はどうやって中庭に入り込んだんだろう。ここに来る時に、領府の受付でチェックされてからじゃないと入れないのに。まあ、影みたいにゆらゆらしてたから、気づかれないで入り込むことが出来たのかも。あ~やだやだ。


 ファスタくんは、私たちの大事な荷車のある北側の建物のほうに向かう。今日はこれから、お手紙を運んでもらうために『船運び』屋さんに行って、それから宿屋さんを見に行くことになってるんだ。『船運び』屋さんは、ほんとは私たちがこっちの世界に来る時に着く場所だった。それだけに思うところがない訳じゃない。


 でもね。そのおかげでウホイさんたちウホッホ族のみんなとお友達になれた。それに、穴掘りグマのみんな、フィルフィリちゃんっていう妹みたいな可愛いクマさんとも仲良くなれた。そういった感謝の気持ちの方が大きいかもしれないね。


 荷車も、だいぶ軽くなったなあ。


 思いがけない旅の始まりに、『船運び』屋の廃墟に残された物を積み込んで私たちは荷車を引いて歩いた。ママの体調が良くない時には、荷車に乗っかってもらって休ませたりもした。

 途中知り合ったウホイさんたちとパパは、ウサギや鹿なんかを狩ってお肉を荷車に積んで、旅の大事な食料にしてきたんだ。一角ウサギっていう、美味しくて栄養のあるお肉もみんな、ウラヌールに着いてから売ってお金に換えた。

 もう食べ物に苦労しないで済むのは嬉しいけど、私たちが持ってきた物だけになってスカスカの荷車は、なんていうか……物悲しい? そんな感じに思える。


 私がそんな気持ちで荷車をなでなでしていると、パパが肩をぽんってした。


「コトハ、この荷車はな、これからも活躍してくれるんだぞお! だって考えてみな、宿屋をやってくにはいろんなものを仕入れなきゃいけないんだ。こいつにはこれからバリバリ働いてもらうからな」


 そうだよ、なんだかここに来るまでがいろいろありすぎて、すっかり忘れて……た訳じゃないけど宿屋さんはこれからなんだからね! 一緒に頑張ってこうね♪



 ゴロゴロ荷車を引っ張りながら、パパがファスタくんの後を付いていく。向かう先は、今まで行ったことのない南側。受付をして、北側よりもず~っと立派な門扉を通り抜けると、北側とおんなじような碁盤目の町並みなんだけど、なんだか様子が違う?


 がやがやと通りを行く人が多いよ? 今までこっちに来てから、こんなに多くの人にお目にかかることがなかったからなんだか腰が引けちゃう。ちょっと怖い。東京の人ごみを少し思い出す。

 人種は……ほとんどがおんなじ人間さんみたい。中に、ちらほらと『船運び』屋さんにいたファルノさんやパルノさんみたいなわんちゃん種? の人たちや、にゃんちゃん種? さんたちも。

 よくファンタジー小説に出てくるような、長いお耳のエルフやひげもじゃのドワーフなんかは見る限りいないようだね。なんだかつまんないな。たまたま見かけないだけだといいな。


 南の大路を少し歩くと、北側と違って大きな建物が多いことに気がついたの。


「ねえファスタくん、この通りって大きな建物がいっぱいあるけどなんでなの?」


「うん、それはね、南の王都の方から人や物資が集まるからなんだよ。王都まで途中の町や市を街道が結んでいてね、うちの町がその終結地点なんだ」


 ふうん、それでこっち側は栄えてるってことなんだね。なにもない北側にはあんまり魅力を感じないってことになる。私はあんまりいいことに思えないけど。ふん。


「そう言えば、いまさらなんだけど私たちの宿屋さんってどこにあるの?」


 今まであまりにもいろんなことがありすぎて、肝心なことを確認してなかった。パパは知ってたのかな? ……きょとん? ってしてるよ。おいおいだね、ふう。


「え、それはご家族の皆さんがご存知なんじゃ……ぼくはてっきりそうだと思ってたんだけど」


 パパを見る。


 首をぶんぶん振ってる。


「じゃあ、商工会ギルドみたいなの知ってる?」


「うん、それなら『船運び』屋からそんなに遠くないよ。そうか、ギルドで確認すればすぐ判るね! さすがコトちゃんだ、あったま良いね、可愛いだけじゃなくてすごいなあ♡」


 はいはい。わんちゃん族? よりもよっぽど犬っぽいファスタくんを急かして、『船運び』屋さんに案内をさせる。


 うわあ~、とてもあの廃墟とおんなじ目的のお店じゃないみたいだね!


 ウラヌールの『船運び』屋さんは、ちょっとしたスーパー並みの大きさがあった。建物自体は平屋建てだけど、東京のや廃墟のとおんなじ祭壇? みたいな石の舞台が中央の大部屋にあって、その手前の部屋が入管センターみたいになっていた。そこには多くのわんちゃん族――後で訊いたら犬人いぬびとって言うんだって――の人が働いていて、とっても愛らしい。


 他の部屋や建物の外側には、商品棚やカウンターにお店があった。日本で言うところの、え~とテナントだっけ。そんな感じ。


 建物の敷地内に荷車を横付けして、中の受付に行くとやっぱり犬人の可愛いお顔がこっちを見てた。この受付の人は、プードルみたい。白いもふっとした毛で、そんなに大きくないからカウンターの椅子にちょこんって座ってるのを見ると、なんだか面白い。


 私はそのプードルさんに近づいていって、私宛てのお手紙がないか訊いた。


「はあい、コトハ・アマクニさん宛てですねえ~。あ、あったあったあです。一ヶ月以上前のと、つい最近のとですねえ~」


 渡してもらったのは、可愛い春らしい封筒とけっこうぶあつい普通の封筒の二通だった。裏には、よっちゃんの名前が書いてあった。


 受け取った封筒を愛おしくてたまらない私が胸にぎゅってしていると、受付のプードルさんがこう言った。


「今回はあ、とっても大変なめに遭われたのを上が考慮してえ、料金は無料でいいそうですよお」


 やた! ラッキーだったね、ほくほくしながら私からよっちゃん宛ての手紙を、受付さんに渡して送ってもらうように話をする。今回はこっちもただでいいんだって。良かったあ。


 これで私がいっちばん気にしてたことが解消された。ごめんね、よっちゃん。すんごおく心配してただろうなあ。本当は会ってきちんとお話したいけど、さすがにそれは無理だからね……とりあえずはお手紙の交換だけでも出来れば一安心。


 胸にしっかりとよっちゃんからのお手紙を抱きしめながら、商工会ギルドに向かう。ギルドまでは五分とかからないそうだから近いね。


 さて、私たちの宿屋さんはどこにあるのかなあ。賑やかなこの南側なら、すぐにでも営業出来そうだけど、北側だと……まあ今悩んでもしょうがないよね。


 でも大丈夫、私たちならどんなんだって頑張れる気がするんだ。うん!

 いつもありがとうございます!


 やっとお手紙を受け取ったコトちゃんでした。


 次回は、商工会ギルドでのお話です。


 

 どうかこの作品にあったかい応援をいただきたいんです。


 なんでもいいです。ブクマでも評価低くても、けちょんけちょんに言われる感想だって。どうか繋がりがほしい作者に愛の手を\(^o^)/♪

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